東京六大学野球秋季リーグ戦 第7週 東大2回戦 2019年10月27日(日) 神宮球場  小林大雅の初勝利の夢を、法大打線が最後の最後で打ち砕いた。初回、東大に先制を許すと、3回にも追加点を許し、主導権を握られる展開となった今日の試合。昨…

東京六大学野球秋季リーグ戦 第7週 東大2回戦
2019年10月27日(日)
神宮球場

 小林大雅の初勝利の夢を、法大打線が最後の最後で打ち砕いた。初回、東大に先制を許すと、3回にも追加点を許し、主導権を握られる展開となった今日の試合。昨日に続き先発のマウンドに上がった小林大を、6回まで捉えきれずにいた。しかし、終盤7回、ルーキー・齊藤大輝(人1)の適時打で1点差に迫ると、8回には主将・福田が今季のチーム第1号となる意地の一発を放ち同点に。9回には再び齊藤大が適時打を放ちとうとう勝ち越しに成功した。厳しい展開となったが逆転で勝利を手にした法大。逆転優勝へと望みをつなげた。

 

戦評

 秋連覇を目指す法大にとって、負ける事が許されない中で迎えた東大との2回戦。法大は先制点を許しながらも鮮やかな逆転劇を見せて勝利し、優勝への望みをつないだ。

 この大事な試合の先発を託されたのは今季の開幕投手である高田孝一(法3)。ここまで3勝を挙げ、この試合まで防御率0.90と好調だ。対する東大の先発は、昨日の第1戦から2試合連続での先発となる左の軟投派・小林大雅。1回表、法大は三者凡退に終わってしまう。するとその裏、初球を1番・辻居新平に捉えられ、二塁打を浴びてしまう。その後、犠打で走者を進められると、失策も絡み、先制点が東大に。その後も得点を挙げられずに迎えた3回裏、2死一、二塁から4番・青山海に2点適時二塁打を浴びて点差が3点差に広がってしまう。ここで高田孝は降板し、2死二塁の場面で内沢航大(キャ4)がマウンドへ。内沢は5番・武隈光希に安打を浴びるも、6番・梅山遼太から三振を奪い、後続を断ってそれ以上の失点を防ぐ。

内沢が冷静に後続を断った

 反撃を見せたい法大は4回表、先頭打者、福田光輝(人4)が左前打を放つ。その後も走者を進め、迎えた2死二塁、6番・羽根龍二(社3)が右中間に適時二塁打を放ち1点を返し、点差を2点差に縮める。このまま点差を縮めていきたい法大だったが、6回裏、5回からマウンドに上がっていた鈴木昭汰(キャ3)が相手先発・小林大に適時打を浴び、再び点差は3点差に広がってしまう。

 このまま終わるわけにはいかない法大は7回表、1死走者なしから7番・相馬優人(営4)が四球を選び出塁すると、8番・船曳海(キャ4)も四球でつなぐ。迎えた2死一、二塁、打席に立つのは1年生ながら1番で起用されている斎藤大輝(人1)。すると2球目、法大は重盗で二、三塁とし、走者を進めることに成功すると、斎藤大は5球目を捉え、これが左中間への適時二塁打に。2人が生還し点差を1点差に縮める。

 追いつきたい法大は7回裏、柏野智也(営3)がマウンドに上がり、相手打線を三者凡退に切って取ると、迎えた8回表、先頭打者の福田が今季チーム第1号となる同点本塁打を放ち、ついに同点に追いつく。主将の一発で勢いに乗りたい法大は8回裏から守護神・三浦銀二(キャ2)がマウンドへ。三浦は安打を許すも無失点に抑え、同点のままついに最終回へと試合は移っていく。

待望のチーム第1号はチームを救う主将の意地の一発に

 そして9回表、先頭打者、宮本隆寛(人3)が左前安打を放つ。勝ち越しの走者を出した法大の打席に立つのは、7回にも打点を挙げた斎藤大。すると斎藤大は2球目を捉え、この日2本目となる適時打を放ち、法大はついに勝ち越しに成功する。その後も4番・伊藤寛士(文4)が適時打を放ち、点差を2点に広げる。9回裏も三浦がマウンドに立ち、東大打線を三者凡退に抑え、6-4で法大が勝利。先制を許しながらも逆転勝利を挙げ、優勝への望みをつないだ。

 優勝へのわずかな可能性のため、負けることが許されなかったこの試合。リーグ戦最終戦でもあるこの試合で法大は、『結束』して勝利をつかんだ。人事は尽くした。後は天命を待つだけだ。

(五嶋健)


クローズアップ:齊藤大輝

 法大にスーパールーキーが突如現れた。昨日は代打で大学初安打を記録し、今日は大学初の先発出場で5打数3安打3打点。1敗でもすれば優勝の可能性が無くなる大一番で勝ち越し適時三塁打含む、2本の適時打を放った。このチームを救う大活躍で、神宮球場に駆けつけた多くの法大ファンがスーパールーキー、齊藤大輝(人1)に心奪われた。

 今季、東京六大学野球リーグ全体において1年生の活躍が目立つ。現在、首位打者争いをしている下山悠介(慶大)、山田健太(立大)をはじめとして、宮崎仁斗(立大)、増居翔太(慶大) 、蛭間拓哉(早大)、そして齊藤大と高校時代から親交のある中川卓也(早大)など、多くの1年生がリーグ戦で結果を残している。齊藤大は試合後に「(同年代の活躍に対して)本当に良い刺激になっている」とライバル達を称えながらも、『負けたくない』という気持ちを前面に闘志を燃やした。

 リーグ最終戦で憧れの先輩たちに華を添える活躍を見せた齊藤大。来季の目標は二塁手としてレギュラーを獲ること。そしてゆくゆくはライバル達に打ち勝ち、首位打者を獲ることも頭に入っている。来季も黄金世代に割って入った齊藤大から目を離すことができない。

(髙橋尚輝)

監督インタビュー

青木久典 監督

—最終カードを振り返って

勝ち点を何とか取ることができて、今は良かったなという思いです。

—打線が小林大選手に苦戦を強いられました

もう素晴らしいピッチャーですよ。頭が下がります。投球術だったりだとか、気持ちの部分だったりというところを含めて上回っていました。

—小林大選手の連投は予想していたか

ある程度そのような予想はしていました。なので、右打者の齊藤大と羽根というのを起用しました。

—その先発に抜擢した2人がそれぞれ活躍を見せました

うれしいですね。いつも脇役として徹している人間がああやって活躍することはうれしいです。本当に2人とも努力をしているので、結果が出て良かったなと思います。

—追いかける展開で迎えた8回、福田主将の一発で同点に追いつきました

キャプテンさまさまというんでしょうか。さすがキャプテンだなという一発でしたね。

—これで4年生にとって、リーグ戦としては最後の試合となりました

終わってみれば、福田を中心にまとまりがある、良いチームになったと思います。

—宇草選手は途中交代するなど、4年生にとっては最後のリーグ戦で悔しい部分も残ってしまったと思います

4年生を全員を出してあげたいという気持ちがあったんですけど、そういうゲーム展開にはならなかったわけで、チームで戦っているのでやむを得ないという感じです。4年生には申し訳ない気持ちもありますが、まずは勝たないと次がないということで、そういう意味では勝てて本当に良かったと思います。

—プレーオフに向けて

「プレーオフがまだあるんだ」という強い気持ちを皆が持っています。慶応さんにはリーグ戦でやられているので、今度は絶対にやり返すという気持ちでいます。そこにベストな状態で臨めるように、身体と技術の両方をしっかり調整していきたいと思います。

 

選手インタビュー

福田光輝 主将

—今日の試合を振り返って

苦しい試合だったんですけど、何とかものにできてよかったです。

—8回に同点ソロを放ちました

何とか自分のスイングでこっちに流れを持ってこれるようにと思いながら打席に入りました。

—ビハインドの時はチームにどのような声かけをした

「焦らず、1点1点いこう」という話をみんなにしながらやっていました。


宇草孔基 副将

—今日の試合を振り返って

チームが勝って本当に良かったですし、みんなで助け合えたので本当にありがたいです。個人の結果としては不甲斐ないというか、悔しい気持ちでいっぱいです。

—7回に交代してしまった時の心境は

もちろん悔しい気持ちはたくさんありましたけど、そこで不貞腐れてしまっては今までやってきた自分に嘘をつくことになってしまうので、仲間を信じて、本当に打って欲しかったので自分の気持ちを精一杯託しました。

—今日のベンチの雰囲気は

厳しい戦いがずっと続いていたんですけど、チーム全員で試合に勝つんだという気持ちは強かったなと思います。

—今日の勝利で優勝の望みをつなぎましたが、チームの試合後の雰囲気は

今日こういう試合を勝ちきれたことはチームにとって意味があることだと思いますし、プレーオフに向けてできることを積み重ねていこうという話はしてきていました。

—個人的にプレーオフまでにするべきことは

コンディションを整えることはもちろんですし、一つ一つ積み重ねてきたのでそういう意味では気持ちの作り方は変わらずに、ブレずに目の前のことを積み重ねていきたいです。そうすれば良い結果がついてくると信じて、集中してがんばっていきたいと思います。

 

伊藤寛士 捕手

—今日の試合を振り返って

最初の入りからこっちがかわしに行こうとしすぎて、投球ができていなかったというのが点を取られた1番の要因かなと思います。

—小林大雅投手の連投は予想していた

そうですね。おそらく投げてくるだろうと思ってました。

—今日の投手陣について

やっぱり、独特な雰囲気があったなかで投げづらそうにしているのがあったんですけれど、かわしにいってしまうことがあったので、そこを僕が引っ張りきれなかったなと思います。

—福田選手が本塁打を放ち、迎えた第4打席でした

同点でノーアウトだったので、とにかく塁に出ればもう1点取れるチャンスがあるなと思ったので、塁に出ることを考えて打席に入りました

—必死の好走塁で三塁打としました

好走塁というかホームまで行けた当たりだったと思うんですけれど、しょうがないかなと思います(笑)。

—9回にも適時打を放ちました

もう1点あれば余裕を持っていけるかなと思っていて、なんとか追い込まれていたので、(バットを)短く持ってコンパクトに行こうと思いました。

—早慶戦次第ですが、優勝の可能性を残しています

僕たちは優勝決定戦があることを信じて、来週1週間準備するだけなので、とにかくそれに照準を合わせてやっていきたいと思います。

 

羽根龍二 内野手

—今日の試合を振り返って

東大の勢いに序盤負けていて、小林大投手を攻略出来ずに劣勢な場面が続いたんですけど、粘り強い戦いができたのかなと思います。

—今日のコンディションは

ずっと監督と一緒にバッティング指導をしてもらって、それで調子がどんどん上がっていったので今日は打てる気しかしなかったです。

—今季初スタメンとなりましたが試合前の意気込みは

急にスタメンが決まったんですけど、特にびっくりすることも、緊張することもなくいつも通り入れたので、結果が出たのかなと思います。

—いつスタメンということを伝えられたか

試合前のアップしてる時ですね

—守備の時に声を出していたがどんな声掛けをしていたか

ピッチャーがノーツーやノースリーだった時に「気持ちで負けるなよ」や、「どんどん攻めていけよ」だったり、守備のフォーメーションの声掛けをしたりしていました。

—本日の勝利で優勝の望みをつなぎましたが優勝決定戦までにするべきことは

早慶戦の結果次第ではあるんですけど、僕達はプレーオフがあることを信じて、この一週間もう一度力を付けられるように練習していきたいと思います。

 

齊藤大輝 内野手

—今日も笑顔が光ってましたね

そうですね(笑)。ちょっと意識しました。

—今日の試合を振り返って

朝スタメンが発表されて、(相手先発が)昨日も良い形で打てた小林投手だったので、良いイメージで打席に入れたので良かったです。

—今日は初の先発出場でした

後ろに良いバッターが続くので、つはげようという意識で(打席に)入りました。

—今日良かった点は

8回に同点に追いついて、ノーアウト3塁で周りから「お前が決めちゃえ」というような雰囲気があり、自分もそれでやってやろうという気持ちになりました9回に回ってきて、次のバッターがピッチャーだったこともあって、バントは考えづらいと思い、逆方向を狙えたところは良かった点です。同じ部屋の福田さんもホームランを打った後だったので、福田さんまでチャンスをつなごうという気持ちで入りました。

—今季リーグ全体で1年生の活躍が目立ちます

彼らが活躍しているので、自分は出るところからなのですが、一つのチャンスをものにしようと思えて、本当に良い刺激になっています。

—来季の目標は

いつも自分はセカンドで出ているので、セカンドとしてレギュラーをとりたいです。

—4年生へ

先輩方の姿が自分にも刺激を受けた部分も多くあるので、自分も上級生になってからも見習っていきたいと思っています。本当に良い刺激貰えたので、まずはお疲れ様でしたと言いたいです。


フォトギャラリー

先発起用に応え、適時打を放った羽根は塁上でガッツポーズ
3安打3打点の活躍でチームを救ったルーキーの齊藤大
1イニングをテンポよく抑えた柏野
宇草(右)は無念の途中交代となるも、最後まで献身的な姿勢でチームメイトを支えた
意地の一発を放った主将・福田
4番の伊藤は2安打1打点と最終戦で気を吐いた
ヘッドスライディングで勝ち越しのホームに還った宮本
最後は三浦が締め試合終了。早慶戦の結果を待ち、優勝決定戦に備える