10月27日(日)、ラグビーワールドカップ準決勝2戦目、ウェールズ(世界ランキング3位)と南アフリカ(同4位)の一戦が行われた。会場は前日に準決勝の1戦目、イングランド対ニュージーランドが開催され、イングランドが大連覇中だったニュージーラン…

10月27日(日)、ラグビーワールドカップ準決勝2戦目、ウェールズ(世界ランキング3位)と南アフリカ(同4位)の一戦が行われた。会場は前日に準決勝の1戦目、イングランド対ニュージーランドが開催され、イングランドが大連覇中だったニュージーランドを 19-7で 下した横浜国際総合競技場。観客動員数は67,750人と、連日の大入りとなった。

準々決勝でフランスに20-19とわずか1点差で勝利したウェールズは、キャプテンのLOアラン・ウィン・ジョーンズをはじめ主要メンバーはそのまま固めてきたが、FBリアム・ウィリアムズの負傷に伴い先発FBにリー・ハーフペニ―を投入。逆に、負傷していたCTBジョナサン・デーヴィスが先発復帰した。こうした変更はあったものの、メンバーの総合力の高さは変わらないと見ていいだろう。

今大会でウェールズから去るウォーレン・ガットランドHCは、準決勝に際しこのようにコメントしている。

「接戦になる。南アフリカ対日本の前半もそうだった。おそらく蹴り合いになるだろう。南アフリカは日本戦で30回蹴っていたので、我々は対処しなければならない。世界一きれいな試合にはならない。天候次第だが両チームとも陣地を稼ぐためにプレーするだろう。空中戦になるので対処しなければいけないし、彼らも同様に我々のプレーに対処しなければならない」

そして、勝ち進めば初の決勝を迎えることについて、こう付け加えた。

「ワールドカップで決勝進出を果たせれば、我々のプレー人口を考えればとんでもない快挙だ」

対する南アフリカは、準々決勝で日本代表を3-26で退けて準決勝に進出した。ディフェンスの隙のなさ、フィジカルの圧力を見せつけた。3大会ぶりの決勝進出を目指し、メンバーは負傷したWTBチェスリン・コルビからシブシソ・ンコシに替わった以外はリザーブ含め変更はなかった。

キャプテンのFLシヤ・コリシ以下、PRテンダイ・ムタワリラ、LOエベン・エツベス&ルード・デヤハー、NO8ドウェイン・フェルミューレン、SHファフ・デクラーク、SOハンドレ・ポラード、WTBマカゾレ・マピンピ、FBウィリー・ルルーら、錚々たるメンバーを揃えた。

ラシー・エラスムスHCは、メンバー発表を行った10月24日(木)にウェールズ戦とその先に向けて勝利を宣言した。

「戦い切ってワールドカップを勝ち取りたい。タフな挑戦だと承知しているし、ウェールズもイングランドもニュージーランドも優勝したいと思っている。みんな南アフリカより世界ランキングは上だし、選手もコーチも素晴らしい。だが、我々にも同じようにチャンスがあるし、日本のファンがもっとたくさん応援してくれるよう願っている」  

試合は前半から互いキッキングゲームを仕掛けるが、大きな隙を見せない展開が続く。スコアレスの時間帯が続くと、15分に南アフリカSOポラードがPGを決めて3-0と先制する。追うウェールズも18分にSOビガーがPGを決めて、すぐさま3-3の同点に追いつく。

ウェールズは反則から直後の20分、そして35分にも南アフリカSOポラードにPGを許し9-3と6点差にされるが、前半終了間際の39分に再びSOビガーが2本目のPGを成功させて9-6。わずか3点差で試合を折り返す。

後半、まずは追いつきたいウェールズは6分、SOビガーのPGで9-9の同点とする。ここから再び膠着状態が続くが、後半17分、ついに均衡が破れる。

敵陣へ攻め入った南アフリカはラックからSHデクラーク、SOポラードからCTBダミアン・デアリエンディとパスが渡り、縦に突いたCTBデアリエンディがインゴールへ飛び込んだ。この試合最初のトライを決めて、南アフリカがついに16-9と勝ち越す。

しかし欧州王者ウェールズも食い下がる。後半25分、敵陣ゴール前の相手ペナルティでスクラムを選択すると、左に大きく展開。大外でCTBジョナサン・デーヴィスのラストパスを受けたWTBジョシュ・アダムスがトライ。今大会トライランキング単独首位に立つ自身6トライ目で、16-16の同点に追いつく。

だが、延長戦の可能性が見えてきた後半36分、南アフリカはモールで圧力をかけ、ウェールズがたまらずコラプシング。このペナルティで南アフリカはPGを選択し、SOポラードがしっかり決めて19-16。これが決勝点となり、南アフリカが3大会ぶりの決勝進出を決めた。

南アフリカのエラスムスHCは試合後、心情を正直に明かした。

「最後まで不安でした。直近の4試合に負けていたのでまた繰り返すかもしれないと。ウェールズをリスペクトします。素晴らしいコーチがいて、選手たちも最後の数分間、もう一度巻き返して来そうになりましたし、ほんの少しだけ私たちに運がありました。ウェールズのような素晴らしいチームに勝ったからこそ、自分の選手たちをなお誇りに思います」

また、決勝については、

「決勝に進めたことで幾らかのリスペクトを得たとは思いますが、まだ道半ばです。ワールドカップ(優勝杯)が欲しいのです。非常に素晴らしいイングランドと戦いますが、きっと最後までわからない試合になると思います」

と勝利への意欲を見せた。

キャプテンのFLコリシは、

「テストマッチで本当に楽しみにしていることのすべてです。私たちにはエネルギーがあると思っていて、ウェールズもラインアウト、スクラムを取りましたが、私たちが最も得意なことにこだわり、最後の数分間、すべての選手を投入して、大きな違いを生み出しました。私たちは彼らが何をしたいのか正確にわかっていて彼らは実際にそうしました」

とチームの強みと相手の分析がかみ合ったことが勝因に挙げた。

惜しくも初の決勝進出はならず、この大会をもってウェールズの指揮官を退くガットランドHCは、

「タフなフィジカル戦でした。南アフリカは決勝に進むに値する素晴らしいチームでした。彼らは常に体を張って、素晴らしい守りでした。完敗です」

と、スコアは惜敗ながら潔く完敗を認めた。11月1日(金)の3位決定戦はニュージーランドと対戦する。

11月2日(土)の決勝はイングランド対南アフリカというカードとなった。2007年大会以来の組み合わせがどのような試合になるのか、世界中、日本中のスポーツファン、ラグビーファンが今や遅しと楽しみにしているはずだ。

◆南アSOポラード、14得点&貴重なトライアシストでこの一戦の最優秀選手に!

プレースキッカーとして1ゴール4PGの14得点を決めたうえ、SOとして唯一のトライを演出するラストパスを放ち勝利に大きく貢献した南アフリカSOハンドレ・ポラードがプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

終盤は優位に試合を運んだに見えたが、SOポラードは苦しかった胸中を語った。

「私たちは終始楽ではなかった。ウェールズは自分たちのプレースタイルで、それを守り続け、しかもうまく行きました。私たちはそうなることを知っていたが、てこずりました。今夜の(南アフリカの)FWは素晴らしかったです。勢いがついてペナルティをとりました。タイトなマッチでは、それが重要です。努力をもう一度すれば、決勝戦で何が起こるか分かりません」

自慢のFWを称えつつ、SOポラードはこのように締めくくった。

「このチームはとても特別なグループです。私たちはこの2年間で大きく前進しました。コーチングスタッフを変更しました。多くの新しい選手が入ってきましたが、素晴らしい選手たちでした。20週間の準備期間を経て、いよいよワールドカップの決勝戦です。とてもエキサイティングです」

決勝を待ちきれない世界的司令塔が最高のパフォーマンスでウェブ・エリス・カップを手繰り寄せることができるか。引き続き、南アフリカの司令塔の出色のプレーに注目だ。