10月26日(土)、ラグビーワールドカップ2019日本大会も準決勝を迎えた。第1戦のカードは、準々決勝でオーストラリアを40-16で撃破したイングランドと、同じくアイルランドに46-14で完勝したニュージーランドの対戦となった。

世界ランキング2位の「ラグビーの母国」イングランドは2003年大会以来2度目の優勝を、同1位の「ラグビー王国」ニュージーランドは史上初の大会3連覇を、それぞれ目指すためにも負けられない一戦となった。会場の横浜国際総合競技場には今大会最多の68,843人もの大観衆が詰めかけ、世界トップ2の対戦の注目度が極めて高いことを物語っていた。

イングランドは、準々決勝オーストラリア戦でSOに入ったキャプテンのオーウェン・ファレルをインサイドCTBに戻し、SOにはジョージ・フォードを再投入。加えて、CTBマヌ―・トゥイランギが12番から13番に戻った点以外はBK陣は据え置き。PRマコとNO8ビリーのヴニポラ兄弟、LOマロ・イトジェ、FLトム・カリー&サム・アンダーヒルら自慢の先発FW陣も準々決勝から変更なしと万全のメンバーで迎えた。

オーストラリアHCとして大会準優勝、南アフリカのテクニカルアドバイザーとして優勝を経験しているイングランドのエディー・ジョーンズHCは、メンバー発表に際して、

「ニュージーランド戦でひとつ言えることは、終始、いつも機会をうかがっている相手の動きを意識しながらプレーしないといけないということだが、我々はそれに対応できる準備ができている」

と、準備万端であることを強調し、自信を見せた。

ニュージーランドは、準々決勝アイルランド戦のメンバーから大きな変更はなく、リザーブだった本来はLOのスコット・バレットが先発FLに入り、FLサム・ケインがリザーブに回った。それ以外はキャプテンのNO8キアラン・リードを筆頭に、LOブロディ・レタリック&サム・ホワイトロック、SHアーロン・スミス、SOリッチー・モウンガ、そしてFBボーデン・バレットとベストメンバーを揃えた。WTB/FBジョーディー・バレットもリザーブに入り、再びバレット3兄弟が23人の枠の中で揃った。

3連覇を目指す「オールブラックス」ことニュージーランドの指揮官、スティーブ・ハンセンHCは、準決勝を迎えるにあたり、

「ゲームの持つ重み通りの良い試合となるように願おう。世界中のラグビーを愛する人たちや、『ワオ、なんてワンダフルなゲーム』と言ってくれるかもしれない初めてラグビーを見る人たちへの素晴らしいメッセージとなるようなゲームになったらいい」

と、勝負であると同時にラグビーの魅力を伝えるべき試合であると自身の考えを述べた。

前半早々、チャンスを作り出したのは、キックオフしたイングランドだった。2分、フェーズを重ねていき敵陣5mラインまで一気に攻め込むと、ラックサイドを突いたCTBトゥイランギがトライ。CTBファレルのゴールも成功し7-0と先制する。

イングランドはTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で認められなかったトライもあったが、その後もニュージーランドを前に出るディフェンスで相手を抑えつつ、前半40分にSOフォードのPGで3点を追加し10-0で試合を折り返す。ニュージーランドはアタックの過程でノットリリースザボールを誘われるなど、トライの糸口がつかめなかった。

後半もイングランドのペースで試合が進み、10分にSOフォードが再びPGを決めて13-0とリードを広げる。

3連覇に向けてまずはスコアしたいニュージーランドは17分、ようやく反撃に出る。敵陣5mラインで相手ボールラインアウトという場面で、イングランドHOジェイミー・ジョージがミスし、そのボールをニュージーランドFLアーディー・サヴェアがキャッチし、そのままインゴールへダイブ。ようやく初トライを決めて、SOモウンガのゴールも決まり13-7と6点差に詰め寄る。

しかし、フィットネスが落ちてきたニュージーランドは反則を重ねてしまい、イングランドは23分にはSOフォードが再びPGを決めて16-7とすると、29分にも決めて19-7と点差を12点に広げる。

ニュージーランドは最後まで決定的なチャンスを作ることができず、攻守ともに光ったイングランドがそのまま19-7で勝利してノーサイドを迎えた。

イングランドが3大会ぶりの決勝進出を果たし、4大会ぶり2度目の優勝に王手をかけた。3連覇の夢が潰えたニュージーランドは11月1日(金)の3位決定戦に回り、ウェールズ対南アフリカの敗者と対戦する。

この一戦に懸けてきたイングランドのエディー・ジョーンズHCは、相手を称えつつ勝因について語った。

「今日素晴らしいチームと戦うことができました。(ニュージーランドの)ハンセンは偉大なコーチで、リードは偉大なキャプテンです。

時間とスペースをプラン通り使わないと、また集中を切らしてしまうと勝てない相手です。つまり少しのミスが致命的になるわけで、幸運にもそれが少なかったことが結果につながりました。

ワールドカップでは常にディフェンスが大切です。私たちの最大のアタックがディフェンスなのです。私たちはディフェンスからアタックのチャンスを作ります。しかし、ニュージーランドはやはり連覇をした素晴らしいチームでした。

選手たちの働きに興奮しています。もう一週間ハードワークしたいと思います」

キャプテンのCTBファレルはFWの活躍を称えた。

「オールブラックスとの準決勝以上にビッグゲームはないでしょう。しっかりと準備して、良いスタートが切れました。このようなビッグマッチではフィジカルになるのは予想されたので、出足を良くしたいと考えていました。

私たちのFWは強くて大きいだけでなく、ボールも上手く扱えます。今夜は非常に上手くスペースを使ってプレーできました。

決勝に行けて最高です。今日はこの勝利の喜びに浸って、また準備します」

敗れたニュージーランドのスティーブ・ハンセンHCはこう話した。

「まずはイングランドにおめでとうと言いたい。今日は勝つに値する非常に素晴らしいプレーでした。国のために本当に頑張った選手たちを誇りに思います。今日はイングランドの方がより良かっただけで、選手もファンも顔を上げて国へ帰ってほしいと思います。

選手たちは最後まで全力で戦いました。そして、日本大会は本当に本当に素晴らしいトーナメントでした」

またキャプテンNO8リードは、やはり戸惑いを隠さなかった。

「なんと言葉にして良いのか、上手く言えませんが、ともかくもイングランドが素晴らしかった。彼らの出足が特によくて、私たちはそこから巻き返すことができませんでした。ちょっと今考えられませんが、何が原因か、もっと良くできたか検証するでしょう」

2度目の優勝に王手をかけたイングランドは、10月27日(日)に行われる準決勝2戦目、ウェールズ対南アフリカの勝者と11月2日(土)の決勝で対戦する。史上初の欧州対決となるのか、2007年大会決勝のカードの再現となるのか、引き続き注目してほしい。

◆イングランドLOマロ・イトジェ、ビッグマッチの最優秀選手に!

ワールドカップ初出場のLOマロ・イトジェが大会屈指のビッグマッチでプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。ラインアウトはもちろんブレイクダウンでも堅実に働き、80分間フル出場してチームにモメンタム(勢い)を与え続けた。

試合後、LOイトジェはこのように語った。

「これこそまさにテストマッチです。オールブラックスは世界一のチームと呼ばれるにふさわしいフェアプレーのチームでした。80分間戦い抜けたこと、チームメイトとコーチに感謝します。私たちにとって素晴らしい日になりました。

ラインアウトは常に激しいバトルとなりました。ニュージーランドのラインアウトは長い間世界一と言われてきましたが、チームメイトと、コーチ、特に(日本代表も指導したスティーヴ・)ボーズウィックのおかげで良い仕事ができました。

1試合1試合、毎週毎週積み重ねてきました。目標に近づきましたが、まだ成し遂げてはいません」

目指すは優勝。イトジェをはじめ、選手たちがニュージーランドに勝利しても過度に喜びを見せなかった理由を代弁していた。