東日本選手権が開幕した。リンクに集ったのは、地区ごとに行われたブロック大会を勝ち抜いてきた実力者たち。最後まで順位が読めない熱い戦いが、この3日間で繰り広げられる。早大からも、男女シニアショートプログラム(SP)に永井優香(社3=東京・駒…

 東日本選手権が開幕した。リンクに集ったのは、地区ごとに行われたブロック大会を勝ち抜いてきた実力者たち。最後まで順位が読めない熱い戦いが、この3日間で繰り広げられる。早大からも、男女シニアショートプログラム(SP)に永井優香(社3=東京・駒場学園)と石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)が登場。永井は3位、石塚は5位で、両者あすのフリースケーティング(FS)に進出を決めた。


柔らかく演技する永井

 シニア女子、第2グループでの登場となった永井。少し緊張した面持ちでスタート位置につき、『白夜を行く』の曲に合わせて演技を始めた。はじめのトリプルトーループで転倒があったが、次のトリプルルッツはダブルトーループをつけた連続ジャンプでしっかりと決めた。「そこで(ジャンプを)降りられるようになったのは、自分の中でも小さな進歩」と語る。脚と上半身が綺麗なラインを形作ったフライングキャメルスピンを終えると、洗練された振り付けで滑らかに演じた。最後のジャンプとなるダブルアクセルからの一連の動きは、この日も素晴らしい出来だった。演技の中にジャンプを溶け込ませ、その流れが途切れないまま軽やかなホップへ。そして音楽とともに盛り上がっていくステップへ、と全てがしっとり繋がっていく。呼吸を意識しているという体の動きで観客を魅了し、曲の解釈やスケーティングスキルが見られる演技構成点では、部門内最高得点を獲得した。最後は2つのスピンを優雅に回りきり、演技を締めくくった。終了後、納得のいかない表情が浮かぶ。「自信のなさが出てしまうプログラムになってしまった」と悔しさを口にするも、FSに向け「あしたはあしたで無心で滑りたい」と前向きにコメントした。


表情豊かな石塚の滑り

 続くシニア男子では、2番滑走で石塚玲雄が登場。上を見上げたポーズから、『ロシュフォールの恋人たち』の音楽に合った細かい振り付けでプログラムを開始した。スピード感が目をひくスケーティングは、「東京都の強化合宿が終わってから、すごいなんか(スピードを)出せる感覚というのが掴めて」と自ら特技にあげたものだ。まずは冒頭のダブルアクセルを美しく決める。続くトリプルトーループの連続ジャンプでは、セカンドジャンプで少し回転不足を取られたが、流れ良く確実に着氷した。柔軟性を生かしたスピンで最高レベルの評価をもらうと、トリプルフリップも危なげなく降りた。「全員のお客さんに演技を見せる」と何度も口にしてきた石塚は、この会場の客席配置を「いつもより観客の方が身近にいるような感じがしたので、僕にとってはすごい嬉しくて」と感じたという。上品なステップはもちろん、技と技のつなぎ部分でも、様々な方向に目線を投げながら豊かな表情で観客を楽しませる。最後はスピンで演技をまとめた。全体を通して勢いがあり、良い出来だった今回の滑り。石塚も、フィニッシュポーズで上げた手をキラキラと振って喜びをあらわにした。

 永井が3位、石塚が5位と上位で折り返した早大勢。両者ともに、目標としてきた全日本選手権進出の圏内だ。自身の納得する演技となるよう、あす行われるFSに期待したい。

(記事、写真 犬飼朋花)

結果

▽シニア女子SP


永井優香 3位 51.62点


▽シニア男子SP


石塚玲雄 5位 61.33点


コメント

永井優香(社3=東京・駒場学園)※囲み取材から抜粋

――演技を振り返っていかがですか

自信のなさが出てしまうプログラムになってしまったなと思います。

――6分間練習から少し滑りづらそうでした

ここ最近いい練習を重ねられていなかったので。別にそのせいではないんですけど、自信のなさが出てしまったかなという印象です。

――いま練習と学校はどんなバランスですか

やっぱり夏休みはだいぶ練習にかけられる時間が長かったので、やりやすかったんですけど、いまは週4くらいで学校行ってるので。もっと時間の使い方をうまくしていかないとまたこのままだめになっていく気がするので、また考え直したいです。

――自分の中のベストプランはあるのですか

「この時間やったからできる」みたいなのはあんまり考えないようにしようと思っていて、やっぱり短い練習だったとしても集中してたくさん運動量を増やしていけるようにと思っています。

――練習の際、本番の自信のためにしていることはありますか

夜の練習とかは結構体が動いているので、いつも試合だと思って割と集中してやっています。

――ことしは夏から調子が上向いてきて復活が期待できるなと思っていたのですが、少し浮き沈みがありますか

そうですね、夏は割と滑っていたので。スケート以外に心配することも何もなかったですし。そんな大したレベルではないんですけど、学校行ってスケート行って、あとは来年のことを考えたりとか、スケートだけ考えていればいいっていう感じではなくて。バランスとか気持ちの問題はもちろんですし、体力的にも結構しんどいのでそこをうまくしていかなきゃいけないんですけど、まだ模索中という感じです。

――学校が前より忙しくなったのですか

忙しい訳ではないんですけど、やっぱり学校が全くないと、朝練行って家帰ってゴロゴロして、それでまた練習行ってゴロゴロしてみたいな、ふぅって気が抜ける時間っていうのがたくさんありました。いまは学校に行ったら授業は一応聞いている方なので、そこでも集中するし、ずっと座ってたりすると体も疲れちゃって。リンクにベッド欲しいなとかも思ったりするんですけど(笑)、まあなかなか気が休まる場所がないので。でもみんな同じ脳研でやっているので、そこは自分で工夫していかないといけないなと思っています。

――学校も真面目にやっていて手が抜けないというか

そうですね。手、抜けばいいじゃんと思っているんですけど。行かなくても単位取れるような楽な授業でもいいんですけど、それだとなんか勿体無いような気がしちゃって。それで結局自分が興味ある授業を少なく取っていくけど、行かないと気がすまないので自分で自分の首絞めてるような感じなんですけど(笑)。まあでも自分でやると決めたので、スケートがどうなるかわかりませんけど、自分ができることを全部できればいいなと思っています。

――ショートのテーマや見所は

きょうは割とジャンプで精一杯な感じで足も震えていたのでちょっとあまりうまくできなかったんですけど、すごい綺麗な曲ですし、演技中に呼吸しているところ、緩急みたいなものをつけられるようにと思って滑っています。

――呼吸しているというのは

外から見ても、ここでふわって呼吸しているなみたいなのを見せられればいいなと思ってやっているんですけど、なかなかうまくできなかったですね(笑)。

――最初のスピンの後とか

あっ、そうです。はい、スピンの後、ちょこっとだけ。

――トーループジャンプはあまり調子が良くなかったですか

特に何かあったわけではないんですけど、トーループは自分の中で不安度が高いジャンプだったのでそれをなくせるようにと思って練習してきたんですけど、それができなかった結果です。

――トーループが不安というのは

元々トーループはあまり得意ではなくて、でも昨日の練習とかでは綺麗に決まっていたので、今日はたまたま悪かったなという感じです。

――ルッツは戻ってきましたか

今シーズンの試合の結果を考えると割と跳べている方なので、まあ去年よりは上がっているのかなと思います。

――ルッツにはセカンドジャンプがつきました

トーループを失敗した後にそこで(ジャンプを)降りられるようになったのは、自分の中でも小さな進歩かなと思っています。

――点数的はどうでしょうか

まあそんなもんだよね、という感じです(笑)。

――今シーズン力を入れていることは

エレメンツの方はもちろんなんですけど、精神面できょねんと変えられればいいなと思っています。メンタルトレーナーではないんですけどそういう専門的な方とお話しさせていただいたりとかして、結構自分の気持ちもきょねんよりは前を向けています。まあ結果に繋がるかはわからないですけど、着実に気持ちの面は変化しているなと思います。

――この東日本選手権はどんな気持ちで臨みましたか

本当はショートとフリーをノーミスして、今までで一番いい点数を出して全日本に行くと思っていたんですけど、ショートはそれが叶わなかったので、切り替えてあした立てていた目標を達成できるように頑張りたいです。

――あすはどんな演技がしたいですか

きょうの失敗したイメージを忘れて、あしたはあしたで無心で滑り切れればいいなと思います。

――気持ちを切り替えるのは得意ですか

得意か得意じゃないかあんまりわからないんですけど、どうなんですかね。わからないです、そのときによるって感じなので(笑)。あしたもし失敗してもきょうのせいではないと思いますし、成功したとしてもすごい切り替えられたからということでもないと思うので、きょうはきょうであしたはあした、と分けたいと思います。

石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)※囲み取材より抜粋

――東日本のショート、いかがでしたか

緊張はしたんですけど、全員のお客さんに演技を見せるっていうのをずっと前から意識して練習していたので、それは緊張した中でもできたかなと思います。

――ジャンプの調子はいかがでしたか

今年1シーズンを通してあんまり波がないので、まあ比較的安定して、気持ちさえ整っていればいつでも跳べるという状態になっていると思います。

――いつも観客を意識されていますが、きょうの会場は客席の場所が横でした。意識など変わったところはありましたか

いつもより観客の方が身近にいるような感じがしたので、僕にとってはすごい嬉しくて、なんか近くで見守ってもらっている感というか。そういうのがすごいあったので、こっちも緊張した中で楽しく滑れました。

――最後は手をキラキラさせていました

いい演技ができたらやろうと思っていて。よくダンサーの方が、振り付けが終わった後にやっているのをよくYouTubeで見ていたので、やろっかなと思ってました。

――衣装のポケットチーフは赤もあるそうですが、いつ見られるでしょう

とりあえず全日本が終わってから、インカレ(日本学生氷上選手権)とか国体(国民体育大会冬季大会)とかで着ようかなと思っています。

――大会パンフレットに、特技が「スピードを出して滑ること」とありました。以前目標として掲げていたことだと思うのですが、特技になりましたか

そうですね、特に東京都の強化合宿が終わってから、すごいなんか(スピードを)出せる感覚というのが掴めて、それで普段の練習のときもすごく気持ちよく滑れるようになったので、やっと特技になったという感じです。

――上品な滑りですが、スケーティングなどでポイントにあげていることはありますか

僕は元から上半身とかの動きがスケーティングの中でも固かったんですけど、そこをもう演技して行く中でどんどんどんどん柔らかく、しなやかに見せるっていうのが目標でもあり課題でもありました。「スケーティング元からいい」って言ってくださる方もいてすごい嬉しいんですけど、そこにそのしなやかさとか体の使い方っていうのが加わるともっと良くなるかなと思っていたので、それがきょう少しはできました。

――オフシーズンに取り組んできたことは

色々ジャンプもスピンもステップもあるんですけど、一番はやっぱり滑り込みです。滑り込んでいって体力がついていけばきつい中でもジャンプであれステップであれスピンでも決めていけると思ったので、とにかく曲かけをして朝からできるだけ動くっていうのを意識して練習してきました。

――今までのシーズンよりも多くということでしょうか

そうですね。やっぱり今まではどこかで「朝練はこんぐらいでいいや」と思ってしまっていた自分がいたかもしれないんですけど、今年に関してはもう動ける限り動こうと思ってずっとやってきて。そう思って練習していくうちにすごい動くのが楽しくなったので、もうこれはこのままやっていこうという気持ちでどんどん滑り込んできました。

――動くのが楽しいというのは具体的にどういうことでしょうか

体がよく動いている時ってスピードもすごい出るので、風をきって滑っていく感じが本当に気持ちよくて、それが楽しいという感覚です。

――エレガントな滑りにそれが現れているのかなと思います

そう言っていただけて嬉しいです。

――東京ブロックからはどんなことを練習して臨みましたか

練習していることはトリプルアクセルとかもやっているので高いレベルの中では練習できてるんですけど、その中でも滑り込みというか、最終段階の滑り込みっていうのをこの1ヶ月間やってきました

――成果はどうですか

だいぶ成果は出ていて、やっぱり体力が試合の時はいつもより疲れるんですけど、その疲れたきつい中でもなんとか決める(力)っていうのがここ1年間ぐらいでだいぶついたと思います。ショートでも出せたかなと思いました。

――ショートの見所は

やっぱり観客の方に見ていただく部分が多いっていうのが一番の見所かなと思うんですけど、スピードを出して流れていくっていうのも見所の1つだと思います。

――振付師の小平(渓介)さんからはどんなことを言われているのですか

やっぱりまだ動きが硬いので、小平くんに色々アドバイスしてもらった中で、決めポーズとかはいいんですけど、全体的なプログラムの流れが途切れないようにっていうのは一番気をつけたいと思いました。

――小平さんに頼んだ経緯は

僕が元から小平くんのプログラムがすごい好きだったっていうのもあるんですけど、そう思っていたら2年前ぐらいでまだ小平くんが現役だったときに、「いつか玲雄くんの振り付けをしてみたい」っていう風に言っていただいていて。それが本当に嬉しかったのと、今回『ロシュフォールの恋人たち』を使うってもう昨シーズンの時点で決めてたんですけど、そのロシュフォールを最初に聞いた時に、「あ、これはもう小平くんの滑りに絶対合う」と思っていました。その小平くんに振り付けしてもらったら絶対いいプログラムになるだろうなと自分で思っていたので、僕からもう「お願いします」っていうことで頼みました。振り付けしてもらったときに、「この曲で絶対全日本に行く」って決めてやってきました。

――ロシュフォールを選んだのはなぜですか

初めて聞いたときから何回聞いても飽きないなっていうのは思っていましたし、感情豊かに滑れる曲だと思ったのでそれがきっと一番の理由です。元々父親が偶然家で映画を見ていたっていうのはあったんですけど、それで誰か滑ってないかなと思ってYouTubeで検索したらちょうど町田(樹)くんが滑っていて。その町田くんのを一瞬見たときにもう感動して、本当にこっちも幸せな気持ちになったので、自分もそれを使いたいなと思いました。

――相性がいいというか感情がすごく出ているなと思って、滑りやすそうだなとに見えるのですが

すごい滑りやすいですし、何回聞いても飽きないです。

――小平さんは所属しているプリンスアイスワールドでもすごく人気のあるスケーターですが、「魅せ方」という面ではどう感じていますか

プリンスアイスワールドはことしもきょねんも見せていただいているんですけど、あの照明がパッと当たったときに、パッと同じように観客の方達にパワーとかオーラっていうのが解き放たれている感じがあって。小平くんていうのは滑らかな滑りの中でも随所随所にそういう部分が見えるので、見ているときにすごい感動しました。

――小平さんと系統が近いスケーターだと思うのですが

結構周りの方達からもそういう風に言っていただけるので、すごい光栄なことです。今回こういうご縁もあって振り付けもしていただいたので、嬉しいことだと思います。

――フリーはどんな風に滑りたいですか

フリーも曲の感情とかは違うんですけど、お客さんに向けて魅せる楽しさとか喜びっていうのはショートもフリーも変わることはないので、その感謝の気持ちを込めて、前向きな気持ちを出していきたいと思います。

――去年全日本に出て、今年もこの予選に出ていますが、全日本への思いは

この前全日本ノービス選手権を東伏見(ダイドードリンコアイスアリーナ)で見させてもらったんですけど、その時本当に後輩の中田璃士くんとか早川潤くんとか木村智貴くんとかが、なんだろうもうお客さんに向けて魅せまくっているのを見たので、僕もそうやってやろうと思って。もちろん全日本でもショート、フリーと通してやりたいですし、その時にやっぱりいつも一緒に練習している後輩に、(会場が)今年は代々木なので見に来てもらいたいので、それも原動力の1つになっています。だから頑張ります。

――全日本の目標は

去年全日本出たんですけど、ショート落ちっていうのを経験して、今年練習の中でずっと「フリーをあの大声援の中で滑りたい」っていう思いが本当にずっと強かったです。今年こそは絶対それを成し遂げたい、っていう気持ちを全日本への意気込みとして練習してきました。

――全日本に向けてこれから強化したいことは

できるだけ後半のグループ、もう本当に目指すは最終グループなんですけど。そういうトップ選手の方達と一緒のグループで滑りたいので、本当にこれからは前向きな気持ちで、ジャンプをどんどん楽しく練習レベルアップできるように頑張ります。