ラグビーワールドカップ日本大会で「ブレイブブロッサムズ(桜の戦士たち)」ことラグビー日本代表は見事に、史上初めてベスト8に進出した。その要因はさまざまあるが、3勝を挙げてもボーナスポイントの差で敗退した前回大会のチームより攻撃力が増したことが大きい。

まず3勝1敗だった前回大会と、4戦全勝だった今大会の予選プールのみのデータを比較したい。

 

トライ数:2015年大会(9) → 2019年大会(13)

得点:2015大会(98点) → 2019年大会(115点)

失点:2015年大会(100点) → 2019年大会(62点)

タックル成功率:2015大会(84%) → 2019年大会(88.4%)

総勝ち点:2015年大会(12) → 2019年大会(19)

 

前回大会、エディー・ジョーンズHC(現・イングランド指揮官)の下、4年間鍛え上げられた日本代表はFWとBKを重層的に配置し、パスとランでボールを保持しつつ、ラックを重ねることでオフサイドランを形成して相手にプレッシャーを重ねていく戦術が主だった。そのため、ボールを保持する=相手にボールを渡さないことも狙っており、僅差で3勝を挙げたと言えよう。

2019年、ジェイミー・ジョセフHCが率いた日本代表は、アタッキングコーチのトニー・ブラウンが4つのユニットを70mの横幅いっぱいに配置し、キック、パスを使いつつスペースを攻める戦術が主だった。6月の宮崎合宿からより両WTBを大外に張る形にし、オフロードパスでモメンタム(勢い)を取りつつ、積極的にトライを狙う形にマイナーチェンジした。 その意図は、藤井雄一郎強化委員長によると「ワールドカップで戦う欧州勢(ロシア、アイルランド、スコットランド)を分析するとディフェンスが寄る傾向にあったため」だったと説明した。現在、多くのチームが前に出る「ブリッツディフェンス」を採用していることもあり、両サイドはスペースが空く傾向にあったというわけだ。

またジョセフHCは「Xファクター(特殊能力)を持っている」とWTB/FB松島幸太朗、WTB福岡堅樹、レメキ ロマノ ラヴァの3人に大きな信頼を置いていた。戦術のマイナーチェンジもあったが、WTBの3人はコーチ陣の期待に大きく応えたと言えよう。

それでは2015年大会と2019年大会のWTB、FBの総称であるバックスリーのデータを比べたい(※2015年大会のデータはespnによる。2019年大会は公式HPより)。

 

トライ数:2015年大会(6/9) → 2019年大会(9/13)

ボールキャリア:2015年大会(86回) → 2019年大会(148回)

ランメーター:2015年大会(513m) → 2019年大会(1015m)

 

2015年大会もしっかりボールを継続し、セットプレーからバックスリーがトライを挙げているが、6トライのうちの1つはアメリカ代表戦で、モールからWTB藤田慶和が挙げたものであり、FWとBKでバランスよくトライを取っていたことがわかる。

一方、2019年大会は、いきなり開幕のロシア戦でWTB松島がワールドカップで日本代表初となる3トライを挙げる「ハットトリック」の偉業を達成し、その後もアイルランド戦、スコットランド戦で福岡が大活躍し、バックスリーだけで13トライ中9トライを挙げた。  2015年大会はスコットランド戦で大敗したが、2019年は4連勝を達成したこともあり、バックスリー全体のボールタッチの回数とボールを持って走った距離は倍増している。

やはり「ダブルフェラーリ」と称えられた両翼の松島、福岡の数字は群を抜いている。

5トライを挙げた松島はボールキャリーの回数は48回(前回大会26回)で、走った距離は350m(前回大会177m)と今大会も4試合出場して、チームの中軸として大きく成長した姿を見せた。

また前回大会、大敗したスコットランド戦しか出場できなかった福岡は、今大会は予選プール先発1試合、途中出場からの2試合の計3試合に出場。それでもアイルランド戦の決勝トライやスコットランド戦の2トライを含む4トライを挙げて気を吐いた。ボールキャリーの回数16回(前回大会2回)、走った距離は187m(前回大会8m)となった。

予選プール4連勝で日本代表は、首位通過でベスト8に進出したが、開幕のロシア戦、3戦目のサモア戦でしっかり4トライ以上のボーナスポイントを獲得した、予選プール4試合目でスコットランドに大きなプレッシャーをかけることができた。

予選プール4戦目で、後半4分、日本代表が4つ目のトライを挙げて28-7としたとき、スコットランドは3トライ以上&29得点以上追加しないと予選プールを突破できない状況となり、焦りを生んだことは間違いない。 2015年大会の反省も活かし、日本代表は、サンウルブズでの経験も活かしつつ、より攻撃的なラグビーを信条として4年間、アタッキングマインドを持って練習、試合で強化を続けてきたことがワールドカップで活きたと言えよう。

ただ初の準々決勝で、フィジカル強国である南アフリカに3-26とノートライで敗戦したことも事実だ。この試合で出た課題と反省を踏まえつつ、フランスで開催される2023年ワールドカップでは、再び、「ブレイブブロッサムズ」のアタッキングラグビーと観客を魅了するようなトライが見られることをおおいに期待したい。