プロテニスのツアーの運営は、男子はATP(Association of Tennis Professionals)が、女子はWTA(Women’s Tennis Association)が行っていますが、ATPとWTAとは選手たちと、四大大…

プロテニスのツアーの運営は、男子はATP(Association of Tennis Professionals)が、女子はWTA(Women’s Tennis Association)が行っていますが、ATPとWTAとは選手たちと、四大大会を除く各大会との共同体です。選手たちの中から選ばれた選手会(Players’ Council)の代表者と大会代表者が集まって、ツアーの日程や規模といった重要な事柄を決定します。ところが最近、男子の一部の選手たちの間ではATPによる運営に対する不満の声が上がっていて、3月には2014年からATP会長を務めてきたクリス・カーモード氏の、今年いっぱいでの退陣が決議されました。これはテニス界の革命の幕開けなのでしょうか。今回は、普段あまりスポットが当たらないものの、意外と大事な存在である選手会についてご紹介します。

■WTA選手会は8人。あの有名選手も

現在のWTA選手会はスローン・スティーブンス(アメリカ)、マディソン・キーズ(アメリカ)、ジョハナ・コンタ(イギリス)、アナスタシア・パブリウチェンコワ(ロシア)、ドナ・ベキッチ(クロアチア)、アレクサンドラ・クルニッチ(セルビア)、ガブリエラ・ダブロウスキー(カナダ)、クリスティ・アン(アメリカ)の8人。ランキング1~20位から4人、21~50位・51~100位・21位以下・101位以下が各1人と、様々な立場から選ばれるようになっています。

■ATP選手会は12人のはずなのに…

一方、ATP選手会は50位以内から4人、51~100位・ダブルス1~100位・ランキング不問が各2人、元選手・コーチ各1人で合計12人ということになっています。ところが、今年1月から選手会内の不協和音がささやかれ始め、4人が辞任した後にラファエル・ナダル(スペイン)、ロジャー・フェデラー(スイス)、ユルゲン・メルツァー(オーストリア)が選出されましたが、あと1人、コーチの枠はまだ決まっておらず、現在11人になっています。

■ATPと選手たち、選手会内の不協和音

近年、テニスの大会での賞金額は上がり続けていますが、一方でトップ100以下の選手たちは金銭的にもツアー日程の面でも、とても苦しい生活を強いられている、という不満の声も上がっています。四大大会で男女の賞金が同額であることを疑問視する選手たちもいます。2016年からATP選手会長を務めるノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、組織が選手と大会の共同体になっているのがむしろ良くないと考え、2018年1月に選手だけの組合をつくることをATPの選手たちに呼びかけました。この話は十分な賛同を得られなかったようで実を結ばなかったのですが、そうした選手たちの不満が今年のATP会長退陣につながったのでは、と考えられています。

ただ、選手たちの中にはカーモード氏の業績を高く評価する声も多く、先月選手会に入ったナダルとフェデラーは会長支持派の筆頭です。カーモード氏の任期は今年末までですが、いまだに新会長の人選は発表されておらず、現在の運営に不満を抱く選手たちによる革命となるのか、穏健派がなだめて従来通りの運営となるのか。選手会は、揺れるテニス界の将来に大きく関わってくるかもしれません。時には、そうしたオフコートの話題も追ってみてはいかがでしょうか。

(テニスデイリー編集部)

※写真は左からスティーブンス、フェデラー、ジョコビッチ、ナダル

(©Getty Images)