文=神高尚 写真=Getty Images

言い訳のできない戦力を集めたチームの期待と不安

レブロン・ジェームスを獲得した1年前には、焦らず若手たちを育成していく方針だったレイカーズですが、シーズン途中で思うような勝率を上げられない状況が続くとトレードで若手を放出し始め、オフには期待のヤングコアをアンソニー・デイビスとトレード。ベテラン陣をフリーエージェントで補強したことで全く違うチームに変貌しました。

複数のプレーメーカーを並べた昨シーズンは、レブロンの負担を減らすことを優先した形でしたが、周囲のパスを受けて打つキャッチ&シュートは2.1本しか打てず、「チームメートがレブロンを生かし、レブロンがチームメートを生かす」というシナリオは、ボールを持ってこそ力を発揮するレブロンだけに上手くいきませんでした。

トレードとフリーエージェントで獲得した新戦力にプレーメーカータイプはほとんどおらず、レブロンのパスを受けて決めるフィニッシャーを優先的に集めました。カワイ・レナードの獲得には失敗したものの、レブロン中心の戦術を遂行するのに適したロスターを構築しています。

特に、3ポイントシュート成功率がリーグ29位と苦戦したことから、複数の優勝経験を持つダニー・グリーン、クレバーなプレーで勝負強いジャレット・ダドリー、シュートへ持って行くパターンが豊富なトロイ・ダニエルズと各ポジションにシューターを補強しました。彼らは単にディフェンスを広げてくれるだけでなく、選手の組み合わせに応じて柔軟なポジショニングをしてくれる選手で、レブロンを中心にする形は同じでもオフェンスパターンに変化をつけられます。シーズン序盤は起用法に戸惑うこともありそうですが、ハンドラーをレブロンに固定しながらも戦術の幅を狭めることをしなかったことは高く評価できます。

レブロン&デイビス、どこまで相乗効果を生み出すか

最大の注目はレブロンとアンソニー・デイビスの破壊力抜群のデュオがどこまで威力を発揮できるか。これまでエースタイプのセンターと組んだ経験が少ないレブロンだけに、その相性は気になるところです。シューターを使ってディフェンスを広げながら、パワフルなドライブで切れ込むのがレブロンの持ち味ですが、これまでのチームではドライブを最大限に生かすために敢えてインサイドにセンターを置かないシステムが好まれました。

レブロンからデイビスへのホットラインは間違いなく機能しファンを喜ばせるでしょうが、それがどこまでの相乗効果を生み出せるかは競った展開の中でこそ問われます。

デイビスはペリカンズ時代にコンビを組んだラジョン・ロンドもいるだけにフィニッシャーとして高い能力を発揮するでしょうが、ルーキー時代からチームの中心として「周囲が自分に合わせるパス」で生かされてきたデイビスが、「自分がレブロンに合わせる」ことも求められる中でどこまで気持ち良くプレーできるかがポイントになりそうです。

『レブロン中心』を徹底したことでの懸念

ディフェンスもグリーンやダドリーだけでなく、エースキラーとして名高いエイブリー・ブラッドリーも補強して戦力を整えました。ですが、実力のあるベテランが増えたことでの不安要素もあります。展開の早い西カンファレンスでは長いシーズンを考えると疲労の蓄積も大きく、チームとして安定したパフォーマンスをするためにはエネルギー溢れる若手の力も欠かせません。残った若手のカイル・クズマや運動量が魅力のケンドリウス・コールドウェル・ポープにはチームに活力を与えるプレーが期待されています。

そしてチームの中心であるレブロンはケガに強い選手ですが、昨シーズンはキャリア最少の55試合の出場に留まりました。ケガはつきものとはいえ、レイカーズは毎シーズンのように主力が長期欠場しており、チーム全体としての対応に疑問が持たれ、ここを改善できるかも一つのポイントとなります。

レブロンがプレーメークする形に整理できたのはポジティブですが、レブロンが離脱した時にどうするのかは非常に難しい問題です。代役になれるはずだったデマーカス・カズンズがオフのトレーニングでシーズン絶望のケガをしてしまう不運もあり、シーズンという単位で考えたマネジメントも重要になってきます。

分かりやすくレブロン中心に切り替えたことで、優勝だけが目標のシーズンを迎えるレイカーズ。先行きは明るいように見えますが、デイビスがオフにフリーエージェントを選ぶこともできるため、結果が伴わなければ再び再建へ切り替えざるを得ない可能性すら出てきます。レブロンとデイビスのコンビがかつてのコービー&シャックやコービー&ガソルのように優勝をもたらすことができるのか、言い訳のできない『勝負のシーズン』が始まります。