ケガをしたらプレーをせずに休む。あらゆるスポーツでそれが当たり前になっている。しかし、満身創痍(そうい)でも出場を強行…

 ケガをしたらプレーをせずに休む。あらゆるスポーツでそれが当たり前になっている。しかし、満身創痍(そうい)でも出場を強行してしまう競技がある。

 それがオートバイだ。世界を転戦するロードレース世界選手権(WGP)は、転倒して骨折したとしても、完治に至る前に戦列に復帰する選手がほとんどなのだ。

 

右肩の故障で中上貴晶はシーズン終盤の3戦を欠場する((c)RedBull Content Pool)

 

戦線を離脱するのはよほどの事

 

 栃木県のツインリンクもてぎで10月18~20日に日本GPが開催された。最高峰のモトGPクラスにフル参戦するLCRホンダの中上貴晶(27)は、故障した右肩の激痛に耐えながら出走。決勝でも16位でゴールした。

 右肩は約4カ月前のレースで傷め、その間は欠場することなく、だましだまし走り続けた。9月に入って痛みがひどくなったようだが、かかりつけの医師からは右肩関節唇損傷と診断されていた。この部位は肩の受け皿となる骨の輪郭を覆う線維性の軟骨のことで、衝撃を吸収するクッションの役割をする。野球、テニス、水泳など肩を使うスポーツで発症しやすいとされる。

 通常であれば、すぐに休養して治療を施す必要があるが、シリーズを転戦するWGPの選手は選手権ポイントを獲得しながらチャンピオン争いを繰り広げているため、数戦欠場するだけでランキングが下位に転落してしまう。どの選手も世界で戦うことを目標としており、戦線離脱が災いしてせっかく得たシートを失う恐れすらある。休みたいのに休めない状態なのだ。

 中上の右肩は状態がひどく、来季のチーム残留を発表したのと同時に、日本GPの後に手術を受け、残りレースを欠場することを決断した。戦線を離脱するということは、オートバイの世界ではよほどのことだ。日本GP期間中も「痛みがある。走行後が一番きつくて、肩が上がらないところまで来てしまっている」と限界に近い状態であることを明かしており、休むことは当然の選択肢だ。

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一流選手でも骨折経験が無い選手は皆無

 

中上は右肩の痛みに耐えながら日本GP決勝を16位で完走した(ホンダ提供)

 

 過去には後遺症を抱えながら走っていた選手も数多くいた。1990年代に旧500㏄(現モトGP)クラスで5連覇を果たしたミック・ドゥーハン(オーストラリア)は事故の影響で右足でのブレーキ操作が不自由となり、左ハンドルに親指で操作するリアブレーキレバーを取り付けて出場。それでチャンピオンを獲得するパフォーマンスを続けたのだから驚く。

 旧125㏄(現モト3)クラスで活躍した上田昇も98年に右腕の神経を断裂する重傷を負った。修復手術を受けて早期復帰を目指したが、ハンドルのグリップを握ることができる半面、手を自力で広げることができなくなったという。そこで、強制的に指を開くことができるゴムのワイヤーが編み込まれた特別なレーシンググローブをつけてレースを戦った。

 レーシングカーを駆る4輪の選手と異なり、オートバイは体がむきだし。ヘルメットなど保護具も装着するが、転倒してアスファルトにたたきつけられれば、即座に大けがにつながる。オートバイの選手にとってけがは宿命。一流の選手でも骨折を経験していない選手は皆無なのだ。因果な職業・・・。

[文/東京中日スポーツ・鶴田真也]

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