2019-2020シーズン展望@イースタン・カンファレンス編 昨季、フランチャイズ史上初のNBAチャンピオンに輝いたトロント・ラプターズ。だが、エース放出によって、新シーズンはチャレンジャーとして迎えることになった。今季のイースタン・カンフ…

2019-2020シーズン展望@イースタン・カンファレンス編

 昨季、フランチャイズ史上初のNBAチャンピオンに輝いたトロント・ラプターズ。だが、エース放出によって、新シーズンはチャレンジャーとして迎えることになった。今季のイースタン・カンファレンスを制するのは、どのチームだ?そして、八村塁の活躍は?



八村塁のNBAシーズンがいよいよ幕を開ける

 まず、日本のファンにとって最も注目度が高いのは、八村塁(SF)が所属するワシントン・ウィザーズ(32勝50敗/イースタン11位)だろう。左アキレス腱を断裂したエースのジョン・ウォール(PG)は全休濃厚で、今季はチーム再建に向けた1歩目となりそうだ。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。チームのカッコ内は昨季レギュラーシーズン成績。

 しかしその分、八村のプレータイムが増えることは間違いなく、今季の新人王争いに絡んでくる可能性も高まる。新人王はドラフト1位=ザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ/PF)、2位=ジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ/PG)、3位=R・J・バレット(ニューヨーク・ニックス/SF)を中心に争われそうだが、伏兵も多い。

 ドラフト2巡目33位指名のカーセン・エドワーズ(ボストン・セルティックス/PG)は、183cmながらサマーリーグとプレシーズンゲームで大活躍。プレシーズンゲームのクリーブランド・キャバリアーズ戦では20分間の出場で30得点を記録し、わずか6分間で8本の3ポイントを沈める驚異のシュート力を披露した。

 また、13位指名でマイアミ・ヒート(39勝43敗/イースタン10位)に入団したタイラー・ヒーロー(SG)も面白い。プレシーズンゲームのアトランタ・ホークス戦では、試合開始からひとりで14連続得点を挙げる活躍で話題を呼んだ。

 今季のルーキーは、「これからのNBAを背負う」と呼ばれる逸材も多い。新人王争いに注目したい。

 イースタン・カンファレンスの優勝争いに目を向けると、トロント・ラプターズ(58勝24敗/イースタン2位)優勝の立役者であり、ファイナルMVPを獲得したカワイ・レナード(SF)が、ウェスタン・カンファレンスのロサンゼルス・クリッパーズへ移籍したことで、ラプターズの連覇のハードルは限りなく高くなった。

 しかし、今季の勢力図は難しくない。ミルウォーキー・バックス(60勝22敗/イースタン1位)とフィラデルフィア・76ers(51勝31敗/イースタン3位)の2強と、それを追う他チーム……という図式だ。

 昨季躍進したバックスは、シーズンMVPを獲得したヤニス・アデトクンボ(PF)が絶対的エースとして、今季もコートに君臨する。

 コアメンバーだったマルコム・ブログドン(PG)がインディアナ・ペイサーズ(48勝34敗/イースタン5位)に、ニコラ・ミロティッチ(PF)がユーロリーグのバルセロナ(スペイン)に移籍したのは痛手だろう。だが、ウェズリー・マシューズ(SG)やカイル・コーバー(SG)といったシュート力のある選手を獲得。アデトクンボがサイズとスピードを生かしてインサイドで勝負し、ディフェンスが収縮したら外から3ポイントを狙う--というスタイルがより色濃くなった。

 バックスは今季を「勝負の年」だと位置づけている。

 2021年にフリーエージェントとなるビッグネームは、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ/SF)、カワイ・レナード、ポール・ジョージ(クリッパーズ/SF)と豪華な顔が揃うが、アデトクンボもその中のひとり。噂レベルではあるが、ウォリアーズが2021年にアデトクンボの獲得に動くとも囁かれている。チーム残留を決意させるためにも、今季、そして来季は是が非でも好成績を残したい。

 一方、昨季のカンファレンス・セミファイナルで第7戦までもつれる熱戦を演じるも、最後はラプターズに敗れた76ersはどうか。

 J・J・レディック(ペリカンズ/SG)やジミー・バトラー(マイアミ・ヒート/SF)といった主力を放出するが、オールスター常連のアル・ホーフォード(C)と伸び盛りのジョシュ・リチャードソン(SG)を獲得。ベンチメンバーの薄さは気になるが、スターターは208cmのベン・シモンズ(PG)、198cmのリチャードソン、206cmのトバイアス・ハリス(SF)、208cmのホーフォード、213cmのジョエル・エンビード(C)と圧巻。平均身長206.6cmのスターター相手に、どのチームも対策に苦労するはずだ。

 この2強を追いかけるのは、セルティックス(49勝33敗/イースタン4位)、ペイサーズ、ブルックリン・ネッツ(42勝40敗/イースタン6位)あたりか。

 セルティックスはカイリー・アービング(ネッツ/PG)を放出し、ケンバ・ウォーカー(PG)を獲得した。カンファレンス上位の戦力を有するが、ホーフォードをライバルの76ersに放出したのは痛い。上位2チームとの差を埋めるには、ジェイソン・テイタム(SF)やジェイレン・ブラウン(SG)といった若手の飛躍が不可欠だ。

 ペイサーズは今オフ、ブログドン、T・J・ウォーレン(SF)、ジェレミー・ラム(SG)といった得点力のある選手を補強し、層の厚さはイースタンで最高クラスとなった。ただ、レギュラーシーズンは安定して勝ち星を伸ばしそうだが、プレーオフをどこまで勝ち抜けるかはビクター・オラディポ(SG)次第。昨季、右ひざの四頭筋腱断裂により戦線離脱したエースが、どのタイミングで復帰するかにかかっている。

 むしろ、セルティックスやペイサーズより注目を高めているのはネッツだ。このオフにはアービングとケビン・デュラント(SF)のみならず、デアンドレ・ジョーダン(C)の獲得にも成功した。

 昨季のファイナルで右アキレス腱を断裂したデュラントは今季全休が濃厚。それでも、得点能力の高いキャリス・ルバート(SG)、アメリカ代表でも活躍したシューターのジョー・ハリス(SG)、守備の要ジャレット・アレン(C)など、戦力は充実している。デュラントが復帰する来季は間違いなく優勝候補の大本命となるが、今季上位シードを獲得しても不思議ではない。

 イースタンの優勝候補の大穴として、対称的な2チームを挙げておきたい。それは、ホークス(29勝53敗/イースタン12位)とデトロイト・ピストンズ(41勝41敗/イースタン8位)だ。

 今季のホークスは、2年目のトレイ・ヤング(PG)、3年目のジョン・コリンズ(PF)といった若手がチームを牽引する。さらに今季のドラフトでは、バージニア州立大学をNCAAチャンピオンに導いたデアンドレ・ハンター(SF)を全体4位指名、ポテンシャルが高く「掘り出し物」と評価されるキャム・レディッシュ(SF)を全体10位指名で獲得。ホークスは「若手の宝庫」となった。今季限りでの現役引退を表明した42歳のビンス・カーター(SG)がメンターとなれば、思いがけない好成績を残すこともありそうだ。

 対してピストンズは、オールドファン垂涎のチームに仕上がった。昨季復活を遂げた2009年新人王のデリック・ローズ(PG)が加入し、2011年新人王のブレイク・グリフィン(PF)とデュオを組むことになった。さらに、2年ぶりのNBA復帰となる38歳のジョー・ジョンソン(SG)も獲得。あと5年早く見たかったメンバーだが、老獪なプレーで競り勝つベテランならではの試合運びを見てみたい。