Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由北海道コンサドーレ札幌 チャナティップ(1)今年27シーズン目を迎えている…

Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由

北海道コンサドーレ札幌 チャナティップ(1)

今年27シーズン目を迎えているJリーグは、現在、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになっている。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、日本での生活をどう感じているのか? この連載では、彼らの本音を聞いていく。

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 タイ語の通訳のティワーポンさんに質問を投げかけたあと、チャナティップ・ソングラシンの顔に目を向ける。すると彼は大抵、笑顔を浮かべながら回答に頭を巡らせ、答え終えたあとにはこちらをじっと見つめ返す。



日本でのプレーについて語るチャナティップ

 おそらくその視線と同じように、彼はまっすぐフットボールに取り組んできたのだろう。スマイルを忘れず、ポジティブに。

「あなたも知っているかもしれないけど、タイ人はいつも笑顔で明るいんだ。ほかの人と一緒に盛り上がったり、知らない人と触れ合ったりするのも好きだね」

 微笑みの国とも呼ばれるタイから、この小兵アタッカーが北海道コンサドーレ札幌にやってきたのは2017年夏のこと。当初、身長158cm、体重56kgの体格や東南アジアの選手への先入観から、懐疑的な目線も向けられていた。タイでしかプレーしたことのない選手がJリーグで通用するのか。それにあまりにも小柄すぎやしないか、と。

 チャナティップはそうした声を完全に鎮めた。史上初のタイ人Jリーガーは半年でリーグと環境に適応すると、翌2018年には完全なる攻撃の主軸となり、リーグ戦で30試合8得点をマーク。シーズン途中には翌2019年からの完全移籍を勝ち取り、シーズン終了後には、J1ベストイレブンにも輝いた。

 そして今シーズンも同じ役割を担い、クラブ史上初のACL出場権獲得を目指すチームを牽引している。

 チャナティップが初めて日本に降り立ったのは、2013年11月。当時所属していたテロ・サーサナ(現ポリス・テロ)がパートナーシップ契約を結んでいた、清水エスパルスに練習参加した時だった。

「日本に来て最初に感じたのは、空気がとてもきれいで、どこも清潔だということ。それから料理はとてもおいしく、街では欲しいものがすぐに手に入る。タイからも多くの人が旅行に訪れる人気の国だけど、その理由がすぐにわかったよ」

 その時は清水と契約に至ることはなかったが、およそ3年後に札幌から声がかかった。

「札幌からオファーを受けたのは、自分のパフォーマンスが評価されたからだと思う。それがすごくうれしかった。清水に練習参加したとき、いつかJリーグでプレーしてみたいと思った。ここではきっと、自分が大きく成長できると思ったからね。その願いが叶ったんだ。迷うことなく、すぐに引き受けたよ」

 チャナティップが思い描いていたとおり、日本とJリーグは彼の成長を促した。それは数字にも現れている。途中加入のリーグ1年目は0得点1アシスト、2年目の昨季は8得点2アシスト、今季はここまですでに4得点6アシストだ。

「成長できたのはすべての面だ。とくにミシャ(ミハイロ・ペトロビッチ監督)の指導によって、効果的なポジショニングを取れるようになったし、規律も覚えて守備にも貢献できるようになった。それから、シュートの精度とパワーも上がったね。ミシャのスタイルを簡潔に言うと、チームの全員がスムーズに攻撃するためのやり方。この超攻撃的なフットボールを気に入っているよ。やっている選手も、お客さんも楽しめるものだね」

 ではチャナティップの目には、3シーズン目を迎えるJリーグはどう映っているのだろうか。

「それぞれのチームのクオリティーが高く、ハイレベルに拮抗している。順位表の下にいるチームでも、上位陣に勝つことは珍しくないよね。プレーの内容で際立っているのは、やはり規律面だと思う。誰もが与えられたタスクを遂行し、チームのために力を尽くしている。それから運営側もすごくプロフェッショナルで、ピッチやスタジアムなど、施設はすごくきれいに整えられている。タイやほかのアジア諸国が学ぶべきところだね」

 そんな風に話すチャナティップは、常にリラックスした表情を浮かべている。天真爛漫な26歳のアタッカーは、ときに自信も垣間見せる。これまでに対戦したDFで、もっと手を焼いたのは誰ですかと訊くと、こんな答えが返ってきた。

「(にやりと笑って)ひとりもいないね」

 語る人が語れば、過信にも捉えられかねない発言だ。けれど、愛らしい笑顔で彼にそう言われると、そこに居合わせた誰しもが声を挙げて笑わずにはいられなかった。そして笑いが収まった頃に、次のように続けた。


日本でのプレーによって

「すべての面で成長できている」と語る

「手強いのは、鹿島アントラーズと川崎フロンターレ。鹿島は常にとてもアグレッシブで、プレスは激しく、ボールを奪った後のカウンターも鋭い。川崎はパス回しがとても巧みだね。スペースのつくり方と使い方がうまくて、いとも簡単に決定機を創出する危険なチームだ」

 そんな風にピッチで対峙した相手チームを分析するチャナティップは、外からフットボールを観ることはあまりしないという。少年時代に憧れていた選手は、ディエゴ・マラドーナ。つまりリアルタイムの選手ではない。タイではプレミアリーグが人気だが、1試合をテレビでフル観戦するようなことはほとんどないという。

「プレーするのが好きだから、他の人の試合はあまり観ない。それに自分はプロになれたのだから、観るよりも、観られるようになりたい。かつてはマラドーナに憧れていたよ。今では(リオネル・)メッシが好きだ」

 初来日の際に頻繁に紙面を賑わせたのは、”タイのメッシ”というニックネーム。そんな風に呼ばれることもありましたね、と返すと、チャナティップはまたスマイルを浮かべてこう答えた。

「いや、メッシじゃないよ。タイのチャナティップだよ」

 L字型の親指と人差し指をアゴに置いて、タイのスーパースターはまたニヤリと笑った。

チャナティップ・ソングラシン
Chanathip Songkrasin/1993年10月5日生まれ、タイ・ナコーンパトム県出身。北海道コンサドーレ札幌所属のMF。2012年にテロ・サーサナでプロデビュー。同年にタイ代表でもデビューを果たし、AFFスズキカップ(東南アジア選手権)で大活躍。2014年と16年大会ではMVPを獲得している。2017年7月に日本へ。テロ・サーサナ(現ポリス・テロ)→ムアントン・ユナイテッド