令和の学生三大駅伝が開幕し、初戦の出雲駅伝を國學院大が制した。5区終了時でトップだった駒澤大から37秒差の4位で走り出した、アンカーの土方英和(4年)が残り700m付近で大逆転し、初優勝を手にした。”伏兵”の快挙に驚いた駅伝ファンも多かっただろうが、過去最高10位からの初栄冠は決して偶然ではない。むしろ必然の結果だった。



出雲駅伝で優勝した、國學院大のアンカー・土方英和

「平成の常勝軍団」を築いた、駒澤大・大八木弘明監督のもとで主将を務めた前田康弘監督が指揮を執って11年目。当初は前田監督が在籍時の駒澤大をモデルに、箱根駅伝でシード権を狙えるチームを目指していたが、現在の4年生が入学してから「4年計画」で優勝争いができるチームビルディングに切り替えた。

 昨季は、3年生だった土方を主将に指名するなど、1年後の戦いを見据えていた。そして、全日本駅伝で6位、箱根駅伝で7位と、それぞれ過去最高順位をマークした。

 今季はトラックシーズンから快進撃を続けている。5月の関東インカレ(2部)は浦野雄平(4年)が1万mと5000mで日本人トップを奪い、土方がハーフマラソンで優勝。エースと主将がチームに勢いをつけると、7月14日の関東学連網走夏季記録挑戦競技会1万mで後輩たちが続く。1組で中西大翔(1年)が29分34秒81でトップを飾り、2組では藤木宏太(2年)が28分46秒41、島﨑慎愛(2年)が28分46秒83とワン・ツーを達成。学生長距離界に「今年の國學院大は強いぞ」という強烈なインパクトを与えた。

 夏合宿は箱根予選会がないこともあり、9月の日本インカレと10月の出雲駅伝に照準を合わせてスピードも磨いた。インカレ出場組は、9月上旬の北海道合宿では別メニューを組んで結果を残す。日本インカレ5000mで浦野が5位(日本人2位)。1万mは土方が28分47秒40で3位(日本人1位)に食い込み、藤木も28分51秒70で4位と続いた。

 今季はチームとして初めて学生三大駅伝にフル参戦するが、全てで「3位以内」という目標を掲げている。しかし、出雲駅伝は7年ぶりの出場で経験者はいなかった。夏合宿を取材した際に出雲駅伝の印象を尋ねると、「僕は距離が短い駅伝が好きなので、見ていて楽しそうだなと思っていました」と浦野が言えば、土方も「僕は距離が長いほうが好きで、暑さも苦手にはしていません。出雲駅伝は距離が短いですけど、自分の長所を生かせる駅伝ではあるのかなと思います」とポジティブに捉えていた。

 そして出雲駅伝の大会前日、発表されたオーダーを見て「國學院大に”追い風”が吹いている」と感じたのは筆者だけではないだろう。

 昨季の箱根王者でトラックのスピードナンバー1の東海大は、館澤亨次(4年)を故障で欠いた。さらに、9月29日の東海大記録会5000mで14分00秒35を出した關颯人(4年)と、14分01秒58の小松陽平(4年)を外してきたのだ。

 また、青山学院大はエース格の鈴木塁人(4年)と、昨年の全日本駅伝5区で区間賞を獲得した吉田祐也(4年)。東洋大は1万m28分台の渡邉奏太(4年)と吉川洋次(3年)がメンバーから外れており、両校は選手層の薄さが最終6区の人選に表れていた。

「3強」が主力を欠いたなか、駒澤大と國學院大はほぼ順当な顔ぶれが並び、今回は5校の争いが予想された。國學院大は1区に藤木、3区に浦野、6区に土方と”三本柱”を主要3区間に配置。日本インカレの結果を考えても、優勝のチャンスは十分にあった。

 そして1区藤木が5位で発進すると、2区中西で3位に浮上。3区浦野は、青山学院大の吉田圭太(3年)と駒澤大の田澤廉(1年)を引っ張る形になり、1区で飛び出した北海道学連選抜をかわしてトップに立った。しかし、田澤のスパートに対応できず、後続から来た東洋大・相澤晃(4年)にも追いつかれた。

 それでも4区の青木祐人(4年)と5区茂原大悟(4年)が共に区間5位でまとめて、アンカー勝負に持ち込むことに成功。最後は主将・土方が、埼玉栄高時代のチームメイトで、ユニバーシアードハーフマラソン銀メダルの駒澤大・中村大聖(4年)を逆転し、初優勝をさらった。

 今季のチームスローガンは「歴史を変える挑戦」。國學院大は出雲駅伝で新王者となり、想定以上のスタートダッシュを決めた。次は8名で争われる全日本駅伝になるが、今回の出雲駅伝メンバー6人に加えて、1万m28分台の島﨑、前回1区を務めた臼井健太(3年)らがいるため、再び優勝争いを演じることができるだろう。 

 そして箱根駅伝は、「総合3位以内」と「往路優勝」を狙っている。前回の往路3位メンバーの5人が残っており、出雲駅伝6区で大逆転&区間賞の土方は2区で、前回(1時間7分53秒の区間7位)以上の走りが期待できるし、何よりも前回5区で区間賞を獲得した浦野の存在が大きい。出雲駅伝3区では区間3位(区間新)と悔しい走りになったが、7月には1万mで今季日本人学生最高の28分25秒45をマークするなど、大きく成長した。来年の正月には、「山の神」と呼ばれるくらいの爆走を見せる可能性もある。

 7年前の出雲駅伝では青山学院大が過去最高10位から初優勝を飾り、その後、黄金時代を築いた。出雲駅伝の初勝利がチームをさらに強くすることは間違いない。これから國學院大がどんな進化を遂げていくのか。再び、”戦国駅伝”となった令和の時代で、新たな主役になるかもしれない。