世界1位への最後の一歩は、アンジェリック・ケルバー(ドイツ)にとって大きすぎた----少なくとも今回は。 世界2位のケルバーはセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の長く続いた首位での疾走に、終止符を打つチャンスを無駄にしてしまった。 アメリ…

 世界1位への最後の一歩は、アンジェリック・ケルバー(ドイツ)にとって大きすぎた----少なくとも今回は。

 世界2位のケルバーはセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の長く続いた首位での疾走に、終止符を打つチャンスを無駄にしてしまった。

 アメリカ・シンシナティで開催された「ウェスタン&サザン・オープン」(WTAプレミア5/8月15~21日/賞金総額280万4000ドル/ハードコート)の女子シングルス決勝で、第2シードのケルバーは第15シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)に出だしからリードを奪われ、ごく普通のショットを繰り返しミスをおかし、3-6 1-6で敗れた。  これでセレナは184週連続でナンバーワンとなり、1997年に終わったシュテフィ・グラフ(ドイツ)が持つ最長ナンバーワン在位記録にあと2週間足りないだけとなった。ケルバーはフラストレーションのたまるこの決勝のパフォーマンスのあと、別のチャンスの訪れを願いながらセレナの後ろにぴたりとつけている。  「皆がそのことについてばかり話している」とケルバー。「もし、いつの日かそれが起こるなら、起こるでしょう。でも私は自分に過剰なプレッシャーはかけたくはない。ここまで、私はこうも素晴らしい年を送ることができている。そして、今季はまだ終わっていない」。

 セレナは肩の痛みのため今大会への出場をとりやめ、ケルバーに今大会のタイトルを獲ることによって自分を追い抜くチャンスを与えた。ケルバーはリオ五輪での銀メダルを含む、てんやわんやの3週間の終わりに疲労していた。

 これは24歳のプリスコバのキャリアでもっとも大きな勝利で、初のWTAプレミア大会での優勝だ。

 プリスコバは第1セットの第1ゲームでケルバーのサービスをブレークし、風のあるコンディションの中ですらラインぎりぎりに入ったショットの数々で、最初の24ポイントのうち17ポイントを取った。プリスコバは62分の試合の中で、アンフォーストエラーを6本しかおかさなかった。

 どのようにして優勝カップを家に持ち帰るのかと聞かれたプリスコバは、考えてもいなかった、と答えた。

 「自分がいいプレーをすると予想してはいたけれど、こうも簡単にいくとは思わなかった」とプリスコバ。「彼女は少し疲れているんじゃないかと思うわ。それか、(ランキングのことで)プレッシャーを感じていたか」。

 プリスコバが時速185kmのサービスエースをセンターに打ち込んで試合にとどめを刺したとき、ケルバーはほとんど動かなかった。プリスコバはネットに向けて数歩歩き、立ち止まり、両方の拳を硬く握りしめ、少しの間、目を閉じて感慨を噛みしめた。  ケルバーはシンシナティで優勝して世界1位となるドイツ女子選手として、グラフの仲間入りをすることを強く望んでいたが適わなかった。それが実現していれば、28歳のケルバーはWTAランキングで初めて世界一になったときの年齢がもっとも高い女子選手になっていたはずだった。(C)AP