チーム事情から見るドラフト戦略〜DeNA編  10月1日に発表されたDeNAの”戦力外通告”…

チーム事情から見るドラフト戦略〜DeNA編

 10月1日に発表されたDeNAの”戦力外通告”のメンバーを見て、アッと思った。このなかに4人の右打ちの野手がいたのだ。松尾大河、狩野行寿(ゆきかず)、中川大志、青柳昴樹(こうき)である。

 もともと粒ぞろいの左打者に比べて、右打者は質、量ともに不足しているというのに、4人も退団となれば、今年のドラフト戦略は右打ちの強打者である。そして投手は、右の本格派がほしい。これこそがDeNAの補強ポイントである。



夏の甲子園でチームを準優勝に導いた星稜・奥川恭伸

 まず右打ちの強打者からいきたいが、これがなかなか難しい。今年だけに限ったことではない。イチローや松井秀喜が登場してから、一気に右投げ左打ちの選手が増えたように思う。実際、高校野球を見ていても、左打ちの好打者は多く見かけるが、右打者は少ない。さらに、打つだけじゃなく、ある程度走れて、守れて……となると、極端に減ってくるのが現状だ。

 そんななか、今年は石川昂弥(たかや/東邦)という将来性豊かな右打ちの野手がいる。三塁手には宮崎敏郞という看板選手が君臨するが、いつまでも……というわけにはいかないし、石川が2年目あたりから一軍で使えるメドが立ってくれば、いろんな戦術が成り立つ。

 もし石川が獲得できなれければ、紅林弘太郎(駿河総合)はどうか。身長186センチの大型遊撃手だが、セールスポイントはフィールディング。下半身の動きが柔軟で、グラブさばきが器用。守備ができれば、二軍の試合にスタメンで使うことができるから経験が積めて、バッティングの向上も見込める。松尾が退団して、将来のレギュラー候補の遊撃手の見通しが立たなくなった今、紅林は面白い存在だと思う。

 外野手なら、大学生の中村健人(慶応大)か蝦名達夫(青森大)を推したい。ともに、まだ荒削りな部分はあるが、強肩、快足の持ち主で、ここ一番の場面で打てる勝負強さを兼ね備えている。一級品の身体能力と勝負根性は、今回のドラフト候補のなかでもトップクラスだ。3~4位ぐらいでまだ残っていれば、確実に獲得したい逸材である。

 そして投手陣だ。DeNAといえば”サウスポー王国”。石田健大、今永昇太、濱口遥大、東克樹……今シーズン、この4人で27勝を挙げたのだが、濱口、東は故障上がりで、石田は主に中継ぎとしての登板だった。もし4人とも万全なら、50勝を期待できる布陣である。それだけの実力を備えた左腕が4人もいるというのは、じつに珍しいことである。

 計算できる左投手というのは、本当に希少である。もし今回のドラフト候補のなかに、彼らに匹敵するようなサウスポーがいれば、それを狙うというのも”あり”だが、今年は肩を並べられる素材が見当たらない。

 ならば、迷わず”右腕”だ。

 間違いのない即戦力なら、森下暢仁(まさと/明治大)だろうが、今のDeNAの状況を考えれば、奥川恭伸(星稜)だ。

 今年3年目の京山将弥、2年目の阪口皓亮(こうすけ)という、あと少しで本格化しそうな右腕をなんとかしたい。そのためには、年上の森下よりも年下の奥川の突き上げが必要だと見る。

 チームの将来を左右する若手投手に対する強烈な刺激……いや、むしろ”叱咤”だ。それには奥川の実力と存在感が必要であり、”相乗効果”も期待できる。

 じつはこの春、開幕前の順位予想で私は「1位・DeNA、2位・広島、3位・巨人」と予想した。地元・神奈川のメディアにも「本当ですか?」と驚かれたが、まったく根拠がなかったわけではない。

 そのひとつが、京山の台頭だった。2年目の昨シーズン、6勝をマークするなど”飛躍”の兆しが見てとれた。それだけに今シーズンは、少なくともローテーション投手としてやってくれるんじゃないかという期待があった。その活躍に引っ張られるように、2年目の大型右腕・阪口も一本立ちするんじゃないかと……。

 だが、期待の京山は9試合に登板して0勝6敗、阪口もわずか3試合の登板にとどまった。プロの世界は、素人の計算が成り立つように簡単じゃないのはわかっている。それでも、とくに京山については「こんなものじゃない」という思いが強い。腕のしなりとストレートのキレとスピード。打者の手元でホップしてくるような快速球は、わかっていてもそう打たれるものじゃない。

 この京山に、今年ルーキーながら7勝を挙げた上茶谷大河、そして奥川が加われば……12球団ナンバーワンの”投手王国”は完成間近である。