10月13日(日)、プールAのみならず全プール戦の最終戦、日本代表対スコットランド代表の一戦が横浜国際総合競技場で行われた。前夜、日本列島を通過した台風19号の影響で試合の開催が危ぶまれたものの、当日朝になって予定通り開催されることが決まっ…

10月13日(日)、プールAのみならず全プール戦の最終戦、日本代表対スコットランド代表の一戦が横浜国際総合競技場で行われた。前夜、日本列島を通過した台風19号の影響で試合の開催が危ぶまれたものの、当日朝になって予定通り開催されることが決まった。スタジアムには日本代表史上最多の67,666人もの観客が詰めかけた。

3戦3勝、プールA唯一の無敗で総勝ち点は14。前日に4試合を終えたアイルランドの16に次ぐ2位としている日本代表は、スコットランドに勝つか引き分け、仮に負けたとしても条件次第で決勝トーナメント進出となる。

これまで決勝トーナメントに進出したことない日本代表にとってはまさに歴史的大一番となった。

日本代表は2戦連続でゲームキャプテンをFLピーター・ラブスカフニに譲っていたFLリーチ マイケルが、開幕戦のロシア戦以来3試合ぶりにゲームキャプテンとなった。また、HO堀江翔太、LOトンプソン ルーク、FBウィリアム・トゥポウが先発に復帰したほか、リザーブから途中出場し2試合連続でトライを決めたWTB福岡堅樹が今大会初先発。日本代表では初となるワールドカップ3試合連続トライを目指した。

なお、PR稲垣啓太、LOジェームス・ムーア、FLラブスカフニ、NO8姫野和樹、SH流大、SO田村優、CTB中村亮土&ラファエレティモシー、WTB松島幸太朗は4試合連続の先発となった。

ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はFLリーチをゲームキャプテンに戻した理由について、「リーチには負担がかかっていたので、まずはプレーに専念してほしいとゲームキャプテンから外していた。次の試合(スコットランド戦)は最もリーダーにふさわしいから選んだ」と説明した

キャプテンのFLリーチ マイケルも「自分のパフォーマンスが上がってきた。調子が戻ってきてチームの先頭に立てるようになった」と自己評価し、「ティア1(おおむね世界のトップ10)に勝つために優しい言葉は使いたくない。鬼にならないといけない」と勝利への意欲をむき出しにした。

対するスコットランドは、キャプテンのHOスチュアート・マキナリーをリザーブに下げ、かつてのキャプテンであり日本代表との対戦経験が豊富なSHグレイグ・レイドローがゲームキャプテンとなった。その他PRアラン・デル&WP・ネル、LOジョニー・グレイ、そしてアタックの要となるSOフィン・ラッセル、WTBトミー・シーモア、そしてFBスチュアート・ホッグといった経験と実績を伴うメンバーがずらりと並び、負けられない一戦に臨んだ。

日本代表のキックオフで始まった前半、負けられないスコットランドに先手を打たれる。6分、SOラッセルにディフェンスのギャップを突かれトライを許し、SHレイドローのゴール成功で0-7と先制されてしまう。

それでも冷静にゲームを進めた日本代表は、16分にはSO田村がPGを外したものの、直後の17分、CTBラファエレのパスを大外で受けたWTB福岡がゲインし、見事なオフロードパスを放つとフォローしていたWTB松島がキャッチしインゴールへ。チーム初トライを決めて7-7の同点に追いつく。

また、25分、敵陣でフェーズを重ねた日本代表はHO堀江、FLラブスカフニ、CTBラファエレと続けてオフロードパスでつないで前進すると、ラストパスを受けたPR稲垣が中央にトライ。14-7と勝ち越しに成功する。

さらに日本代表は畳みかける。前半終了間際の39分、CTBラファエレのグラバーキックを抜け出したWTB福岡が胸元に収め、そのままインゴールへ飛び込みトライ。SO田村も難しい角度のゴールを決めて21-7とリードを広げて前半を折り返す。

後半も日本代表の勢いは止まらなかった。2分、タックルから相手ボールに直接絡んだWTB福岡がボールを奪い取り、そのまま独走。自身2トライ目、チーム4トライ目を決めて28-7とリードを広げる。

しかし、欧州の伝統国スコットランドもここから意地を見せる。9分には日本代表陣ゴール前のFW戦でPRのWP・ネルが体をねじ込みトライ、28-14と点差を詰める。

さらにわずか5分後の後半14分、LOグレイらがオフロードパスでつないだ末に、最後はPRザンダー・ファーガソンがトライを決め、28-21と7点差に迫る。

その後もスコットランドは敵陣で長くプレーしチャンスを作ったものの、日本代表も粘いディフェンスを見せる。最後までリードを守り切り、途中出場のFB山中亮平が蹴り出してノーサイド。28-21と歴史的勝利を収め、日本代表史上初のベスト8進出をプール1位通過という最高の形で実現した。

試合後、日本代表FLリーチは勝利の歓喜よりも台風19号による甚大な被害に心を寄せた。

「今夜来てくれたみんなに感謝したい。この試合は台風で苦しんでいる皆さんのためのものだった。すごくうれしいが、台風で亡くなった人たちもいる。僕たちの戦いで勇気を与えられたと思う。

観客の皆さんは、私たちにとって大きかった。今日は私たちにとって単なるゲーム以上のものだった。このゲームができないという話があったので、このゲームを作ってくれた皆さんに感謝します。今、台風で苦しんでいる皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

私は信じられないほど誇りに思っている。私たちは最初から心を込めてプレーしました。今日はスキルではなく気持ちと身体の問題でした。みんな気持ちを揃えた。そしてそれを示しました。

日本を代表して、アジアを代表してティア2を代表して次戦以降も戦いたい」

これまで日本代表の前に度々立ちはだかってきたスコットランドのゲームキャプテン、SHレイドローは日本代表を褒め称えた。

「とにかく日本が素晴らしかったです。ボールを常に回してキープして、日本がしたいようにプレーしていました。前半も良かったですし、後半もいいトライがありました。日本に28点を与えてしまったらなかなか難しいです。日本が相手なのでクイックなゲームになると思っていました。だからボールをキープしようとしました。私たちは前半良くなかったので、後半少しは盛り返せたかとは思います。だが常に日本を追う展開は厳しかったです」

日本代表は総勝ち点を19としてプールA1位となり(2位は16のアイルランド)、ワールドカップで初めて決勝トーナメントに駒を進めた。前回大会は3勝1敗と勝ち越しながら勝ち点の差でスコットランドに届かず3位となり涙をのんだが、9大会連続9度目の出場にしてついにその壁を乗り越えた。

日本代表は10月20日(日)、準々決勝でプールB2位の南アフリカと対戦する。前回大会の初戦で対戦し34-32と歴史的勝利を収め、今大会直前の9月6日(金)にも対戦し7-41と敗れている相手だが、直近で戦っているだけに慣れもあろう。初の8強から一気に初の4強を目指せ!

◇2トライ1アシスト!WTB福岡堅樹が大坂なおみからトロフィーを受け取る

プレイヤー・オブ・ザ・マッチとなったのはWTB福岡堅樹だった。持ち前の嗅覚と快足で2トライを決めたうえ、最初のWTB松島のトライをアシストする見事なオフロードパスで文句なしの受賞となった。ワールドカップ3試合連続トライは日本代表初の記録となった。

試合後のWTB福岡は達成感に満ちた表情でこうコメントした。「たくさんの応援ありがとうございます。新しい歴史を作るために全てを捧げてきたので、今最高の瞬間です」

続いて日本が誇る韋駄天は「本当にこの時のためにすべて時間を犠牲にしてこの勝利のために頑張ってきたので、本当に最高です。因縁の相手に最後しっかりと勝ちきってベスト8に行くというのが、自分たちの歴史を作るという中での最高の目標だったので、それが達成できた」と喜びを爆発させた。

9月6日の南アフリカ戦で肉離れとなり、ワールドカップ開幕戦に間に合わず回復度が心配されたが、アイルランド戦、サモア戦、そしてスコットランド戦と計4トライを決めており、そのすべてで勝利の立役者となっている。

プロテニス選手の大坂なおみがプレゼンターを務めるというサプライズもあったプレイヤー・オブ・ザ・マッチの表彰で、一人だけバックスタンドへの挨拶に間に合わなかった福岡は、ひとりでバックスタンドへ駆け寄り一礼。丁寧にファンへの感謝を示した。