9月27日、都内で行われたダンロップの新作ラケット発表会にパトリック・ムラトグルーが訪れ、松岡修造さんとトークセッションを行った。その中で、ムラトグルーはテニスをもっと観てもらうために必要なことについて語った。

ムラトグルーはセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチを務めるだけでなく、欧州最大のムラトグルーテニスアカデミーの代表を務める人物。セレナだけでなくココ・ガウフ(アメリカ)やステファノス・チチパス(ギリシャ)も、このアカデミーを拠点としている。

トークセッションの中で松岡さんは、ムラトグルーのことを、一般の人でも「これ観たいな」と思わせる魅力あるテレビの作り方を知っている人物だと紹介。その上で、「日本の中で良い選手はいるけれども、もっともっと観てもらう方向にするために、(テレビの作り方として)良いアイデアはありますでしょうか」と質問した。

これに対しムラトグルーは「テニスを観る時には感情を持ちたいんです。映画を観る時と同じです。プレー中に観る側は何かを感じたいのです。そのためにはその選手の個性を知りたい、その上で好きか嫌いかという感情を覚えたいのです。好きだから勝ってほしい、嫌いだから負けてほしい、そういった形にしていきたいのです」と話す。

「そのためには選手に表現をしてもらわなければなりません。優しい人、すぐ怒る人、礼儀正しい人、色々いますが、そうした個性を表現する自由を持ってもらいたいです。その上で観る側も好きとか嫌いとか思える環境が必要だと思います」

「また、コーチと選手の戦術を観る人にも理解できる形が良いと思います。その上で選手は感情を持つ。それをコートで表現する。それを踏まえて観てもらえると、ショーとして面白いと思います。だから、ATPやグランドスラムでもコーチがコートに立てるようになるといいなと思います」と持論を展開した。

この質問の前には松岡さんも「日本の選手はコーチが言うことをただ聞いているだけです。ヨーロッパなどは違います。何か言われると僕はこう思うと会話が始まり、そこで自分のテニスの考え方が確立していきます。日本でも少しはそういう環境を作らなければ、日本のテニスは前に進んでいかないのではと感じています」と語っていた。

それに対してムラトグルーも「日本は真面目で、静かに聞くというのはコーチに敬意を払っていることの表れですし、コーチも聞いてもらえると嬉しいと思います。ただ、テニスの世界は個性を培っていかなければいけません。テニス選手としても、人としても自信を持って表現することが大事だと思います。コーチに敬意を持って意見をするというのはできると思います。若手も、歳のいったプレーヤーもその形で個性を確立し、意見を持つことが重要だと思います」と個性の重要性を強調していた。

2018年の「全米オープン」ではスタンドからセレナにサインを送ったとして物議を醸したムラトグルー。その時にも「どうしてテニスだけ試合中のコーチングが認められないのか、理解できない」「試合中にコーチが選手に何か言えば、感情が高ぶる。コーチの言っていることに選手が耳を貸さないということも時にはあるが、そういうことも含めてドラマ性が高まって、ソーシャルメディア上で大勢の人が関わり合える」と語っていたが、いつかはコーチングのルールも変わっていくのかもしれない。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」でのムラトグルー

(Photo by Cameron Spencer/Getty Images)