早大空手部では、選手、主に幹部が自主的にメニューなどを決め、練習をしている。そのためには、今どのような練習が必要なのか、各部員のコンディションはどうなのかなどを総合的に考える必要があり、細かい観察力が必要である。今年、その幹部として部をけ…

 早大空手部では、選手、主に幹部が自主的にメニューなどを決め、練習をしている。そのためには、今どのような練習が必要なのか、各部員のコンディションはどうなのかなどを総合的に考える必要があり、細かい観察力が必要である。今年、その幹部として部をけん引してきたのは、笹野由宇主将(スポ4=東京・世田谷学園)と鈴木捷太副将(スポ4=群馬・太田)、そして佐川開人主務(商4=埼玉・早大本庄)である。特集の最終回は、空手部をまとめ上げる3人に幹部としての意識や、関東大学選手権大会を控える今のチームの状態、そして部の仲の良さが窺えるお話などを伺った。

※この取材は9月27日に行われたものです。

幹部として


今シーズン、先頭になって部を引っ張ってきた笹野主将

――今年の空手部の雰囲気やチームカラーについて教えてください

笹野 いい雰囲気で稽古ができているなと思っています。大きな上下関係というものをなくして、そこで誰もがアドバイスなども言いやすく、下から上に話しかけやすい雰囲気を作ったことで、チームが一体化していますね。

鈴木 これまでは結構、体育会系な上下関係がしっかりあって、その中で動いていたんですけど、僕たちも後輩としてやりづらい点が多少ありました。そこを雰囲気から変えて、練習や部員同士のコミュニケーションをやんわりすることで、もっと情報交換や練習のやりやすさが変わるかなと思って、笹野主体でそういう雰囲気づくりをやっていましたね。

――お互いの印象についてはいかがですか。まず笹野選手についてお願いします

鈴木 センス?

佐川 そうね、センス(笑)。練習して強くなっている部分も大きくあると思いますけど、運動神経みたいなものも結構感じますね。私はそんなにないので(笑)。

鈴木 確かにそうだね。僕は佐川とは結構小さい時から面識があって仲良くしていたんですけど、笹野を知ったのは高校の時。仲良くなったのも同じチームになるのも、大学が初めてです。第一印象は、見た感じはっきりした顔をしてるので、キツそうだなと思っていたんですけど(笑)。同期でちょっと大変そうだなと。でも実際過ごしてみると、意外と思いやりが強くて優しい面もあって。マイルドな主将でチームをやんわりまとめていい方向に導いてくれていると今は感じますね。

――先ほど主将としての笹野選手について話していただきましたが、笹野選手が主将として選ばれたのはどういった経緯なのでしょうか

鈴木 まあ慣例的に。

佐川 雰囲気というか、3年間「あいつが主将になるんやろなぁ」という感じできて、案の定主将になりましたね。

鈴木 スポーツ推薦入学の人が、代々主将になっていくんです。それと僕らの同期内での雰囲気もあって。こいつが一番リーダーシップをとれるので…。そうですね、流れです。

――次に鈴木選手についてお願いします

鈴木 いいこと言ってね(笑)。

佐川 中学校の時から一緒に試合することもあったので、大学に入ってどうとかはないですけど。とにかく笑顔で、笑っている顔を見るとこっちも笑っちゃうんです(笑)。なので、主将はちょっと顔立ちが怖いかもしれないですけど、それを中和させている感じですかね(笑)。

笹野 主将としてチームをまとめないといけないということで厳しい面を出しているんですけど、やはり厳しいだけではチームは一体化しません。先ほど「中和する」と佐川が言ったんですけど、鈴木は本当にそういう役割を担っているなと。主将と副将でこういう関係ができているからこそ、チームがまとまっているのかなと思います。

鈴木 照れちゃう(笑)。

――最後に佐川さんについてお願いします

鈴木 めっちゃ頭固いんですよ(笑)。論理的に何事も順序立ててロジカルに考えて、それをガチっと当てはめていく人なんです。僕みたいな何も考えないでとりあえず行くフィーリング体質とは、あまり合わなさそうに思えるんですけど、ノリがいいところもあって、気が合います。どっちか分からない(笑)。

笹野 確かにそういった点もあって、主務としての仕事をきっちりとこなしてくれています。この部が支えられているのも主務の仕事があってのことだと思いますし、それがなかったら試合にも出られません。本当にそういった陰の所で支えてくれているのが佐川なのかなと。

――今年の新入生についての今の印象、入部した時からの変化についてお願いします

笹野 最初は俊樹(長沼、スポ1=東京・保善)にしよう。

鈴木 まあ強いからね。高校時代に活躍していて、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)3位という結果も残していたので、それを含めたイメージを持って最初は接していました。でも付き合ってみたら、いい感じに大学生だよね。

佐川 最初(部に)入ってくる前に何回か練習に来てくれていたんですけど、私はそんなに喋ったことがなくて、「めちゃくちゃ蹴り強いぞ」とか「キックボクシングやってるらしいぞ」とか聞いて。単純に「怖いな」と。それもあってファイティングな奴なのかなと思ったら、性格はそんなでもなかった。

鈴木 そうだよね。結構落ち着いてる。

笹野 根は真面目みたい。

佐川・鈴木 そうそう。

笹野 自主練習が好きで、普段の稽古から真面目に取り組む人なんですけど、いつも練習終わった後に30分ほど色々な人を巻き込んで練習していて、結構真面目だなと。あの見た目からは想像もできない。

佐川 見た目以外は真面目じゃない?

鈴木 そうそう!

――1年生全体の印象についてもお願いします

鈴木 大人しいよね。

佐川 うん。大人しいですね。先輩がうるさすぎるのかもしれないですけど。

鈴木 結構代によって色が違っていて、その中でもやはり大人しい感じはするよね。うるさくないという意味ではいい後輩だよね。ちゃんと話を聞いてくれるので。

――ちなみに、自分たちの代のカラーについてはどんなイメージを抱いていますか

鈴木 混ぜすぎてすごく汚くなる時ないですか、絵の具って。あんな感じです(笑)。

一同 (笑)。

佐川 失敗しちゃった絵みたいな。それがいいんだよね。

鈴木 そうそう。みんなキャラが強いので、それでこう、わんやわんやみたいな感じですかね。結構にぎやかな感じです。

――今までに特に印象に残った試合、自身のターニングポイントとなった試合について教えてください

佐川 これから10月11日にある大会(関東大学選手権)の、ちょうど1年生の時の団体形の試合がターニングポイントというか、一番印象に残っています。その時私達は1年生で、4年生の先輩が引っ張ってくれていました。私と鈴木と谷口(輝、スポ4=早稲田佐賀)と、4年生の先輩一人の4人で団体形をしていて、その時の練習がめちゃくちゃきつくて。

鈴木 きつかったなあ。

佐川 本当に。4年生は早津先輩(陸氏、平28先理卒)という方なんですけど、もうストイックというか、無尽蔵に体力があるものだから。1年生は練習で体ボロボロになりながら試合に出て。それで全国7位になったんだっけ。

鈴木 まあ結果としてはね。団体形としては(一番良かった)ね。

佐川 まだその結果は追い越せてないので、それを追い越したいなと思って練習しています。

笹野 自分は去年の関東団体(関東大学選手権団体組手)ですね。男子団体組手で41年ぶりですかね?第3位に入ったんですけど、これが久々の入賞、メダルを貰えたということで、1番嬉しかった試合だなと思います。

鈴木 僕としては、さっき佐川の言った団体形の試合が大学に入って初めての大きい大会で、そこがターニングポイントです。その(大会)後に大学1年生で早慶戦のメンバーに選んでもらえて。僕らは小さい頃から選手として大会に出る経験をしていたのですが、そんな試合と異質な雰囲気でした。やはり早慶戦となると、会場のムードだったり、本当に1対1で、早慶で殴り合っているような雰囲気があって、それに飲み込まれちゃって。気づいたら終わっていた、みたいな試合だったんですけど、大学の伝統であったり、空手をやっている自分に付いてくる看板というか、そういうものの重さを初めて実感しました。好き勝手やっていいチームじゃないんだな、と思いましたね。

――4年間で成長したことは何でしょうか

笹野 高校は強豪校の世田谷学園で主将を務めていて、大学でもう一回主将を務めたのですが、高校時代はやらされる練習というのが本当に多くて。監督やコーチがいて、指導してもらって稽古するというのが主でした。それに比べて大学はかなり自主的な環境で、自分が主将になったときにチームを一から作れるということで、どういうチームにしようか、どういう取り組みを入れていこうか工夫しながらやっています。高校とは違う主将をできていることが成長できたところではないかなと思います。

鈴木 僕は大学に入ってから、自分の持っている知識や技術を伝えたり発信する方に成長できたなと思っています。高校の時は笹野みたいに強豪校ではなく普通の県立高校で、個人でやっていました。そうすると練習相手もあまりいなくて、部活動はあまりメンバーも揃わない中でやっていたので、自分のことに集中して、殻に閉じこもって練習していました。でも大学に入ると、部活もですが、大学のキャンパスも広くて、色々な人と出会うじゃないですか。その中でいざ自分が先輩になって空手の指導に当たるときにただ言うだけでは伝わらないので、自分が感動した人や尊敬した人を真似したり、工夫を交えたりして。ものの伝え方は空手・私生活含めて成長できたかなと思います。

佐川 私は…他人のいい所を見つけられるようになった所ですかね(笑)。

鈴木 確かにそうだな(笑)。

佐川 でしょ。まあ大学入学当初はすごくひねくれた奴だったんですよ。「なんでこうしないの、ああしないの」みたいな。「あいつダメだな」とかずっと思っていたんですよ。

一同 (笑)。

佐川 でも徐々に、「あいつは周りがよく見えてるな」とか人のいい所を見つけられるようになって。主務になって仕事を任せるときに、誰がどういうことが得意かなどを把握しないといけないんですよ。そういう時に、「こいつはこれが得意だから任せよう」とか、「こんないい所があるから任せよう」とか、成長した結果が最終的に主務に活きたかなと思います。

「俺らがへばったら終わり」


常にチームのバランスを取ってきた鈴木副将

――合宿が9月中にありましたが、その振り返りをお願いします

一同 きつかったね(笑)。

笹野 7泊8日もあったんですよ。

鈴木 4部練ね。

笹野 朝練やって、午前練やって、午後練やって、夜練やって。4部練を6回もやって…。

鈴木 なんか疲れてきちゃったね、思い出したら。

一同 (笑)。

笹野 本当に、4年生で頑張れるかという。頑張れたんですけど、やっぱり疲れたよね。

鈴木 疲れたね。今のところ疲れたしか言ってないね(笑)。

佐川 (笹野の方を向いて)組手としては全体的にどういうことをしていたとかある?なんか目標があったじゃない、確か。

――目標ですか

笹野 毎年、夏合宿で何を成し遂げるかという目標を書いています。午前中は基本を主にやって、午後は形と組手に分かれて2時間半くらい稽古して、夜はそのフィードバック、振り返りを行うんですけど。午後練が形と組手で分かれるので、組手で出た課題というのを夜にフィードバックして、互いの課題を指摘することで日々成長できたんじゃないかなと思います。

鈴木 競技レベルにすごく差があるチームなので、第一線で活躍している人から大学で始めた人まで本当に幅広い競技歴の人たちがいます。結構(実力が)上の人でも、目標があってそれについて何をやらないといけないかというのをみんながちゃんと明確化できているわけではありません。そういったことに没頭できるというのが合宿だと思っているので、その点ではしっかりこなせたと思いますね。

佐川 そうですね。

――非常にハードな合宿であったことが伺えますが、合宿の中でチームとして特に重点的に取り組んだことは何ですか

笹野 そうですね…やはり基本ですかね。形組手で分かれて練習するだけじゃなくて、基礎的な部分、土台というのをしっかり確立させようということで、午前中みっちり2時間やりました。土台が小さかったら小さいピラミッドしか積み上がらないので、土台をしっかり大きくして、そこから(形組手に)つないでいこうかなと。自分たちの代は基本をすごく大切にしてきました。

鈴木 部活としてやっていても空手って結局個人種目なので、やるときは一人なんですよ。練習も形組手で分かれてやっていたりして、正直ずっと空手を一緒にやっているとしても結局は一人で頑張らないといけないし、一体感のある練習というのは結構難しいんです。そこで基本の練習、みんなで一番初めに立ち返って同じメニューをやるのは、きつくてつらいんですけどバーッとやり切った!という達成感があるかな、と。やはりテンションを上げるとか高めるといった部分は、結構上手く行ったかなと思いますね。

佐川 そういう感じですね。

――合宿の中で特にきつかったのはどんな練習ですか

笹野 すごく思い出させてきますね…(笑)。

一同 (笑)。

佐川 色々な面できつかったよね。違う意味での辛さが毎回あったじゃん。(練習)単体でつらければ、合宿を通した疲れでつらければ、脚がガチガチでつらければ…みたいな。

鈴木 ビデオを撮って、形だったら形を打った後に、組手だったら試合の後に自分たちで振り返っています。それを見て上手く行っているときは次の日のモチベーションになるんですけど、変わらなかったり上手くいかない時は大会間に合うかな、と焦ったり、(合宿が)あと何日もあると思ったり、つらい方に目が行っちゃって。そういった所が辛かったですかね。メニューもみんなきついですけど(笑)、メンタルやモチベーションをどうしていくかという所が、みんな一番きつかったと思いますね。

佐川 全体で言うと、俺らがへばったら終わりじゃん。

鈴木 うん。

佐川 4年生だから。

鈴木 あっ、そうだね…嫌われるもんね、あんなにきついメニュー組んだらね。

笹野 そういうわけじゃない(笑)。

鈴木 俺そこきつかったよ、精神的に。

佐川 それもあるけど、練習中にへばった姿を見せると後輩に影響が出るかなと。

鈴木 雰囲気が落ちちゃうもんね。

佐川 だから割と声も出していたし、辛くても盛り上げなくちゃいけないみたいな。そういうのが一番つらい(笑)。

鈴木 そこは笹野が正面で引っ張ってくれていたので、自分たちは後輩が振り落とされないようにサポートに回って、自分たちも食らいついてという感じでしたね。

――合宿のメニューはどのように決めていましたか

笹野 学生主体なので、私と幹部中心で一日目から全部組んで、そこから監督に提出して了承を得ています。

――きつかった合宿だと伺えますが、逆に楽しかったことや嬉しかったことは何ですか

笹野 終わったときじゃない?

佐川 終わったときですかね。

笹野 胴上げ?

鈴木 胴上げの瞬間。

佐川 4年生は胴上げしてもらうんですよ。

笹野 僕らは知らんふりしてるんですけど。

鈴木 後輩がサプライズを装って毎年やってくれるイベントなんですけど、いざ自分たちの番となると嬉しかったよね。

笹野 まあ7泊8日もやれば達成感が本当にすごい。

鈴木 やっぱり最後の瞬間になっちゃうよね。

笹野 納め突きやっている時かな。

鈴木 あれ楽しいもんね。

佐川 納め突きという、合宿とか納会の最後にやる儀式的なものがあるんですよ。みんなで突きをやって、終わりにしよう、納めようという会で。

鈴木 幹部が号令を順番にかけるんですけど、最後主将が突きを入れて終わりで、終わった瞬間いえーい!みたいな(笑)。その瞬間ですかね。

――合宿での成長株や、特に強くなった人は誰ですか

鈴木 僕的には新人(=1年生)の、特に女子は空手のメニュー的にも、回数であったり時間が長い部分があって、それ以外にトレーニングとかも入ってくるので。その中でも同じメニューを最後までこなしてついてきて、ちゃんと乗り切ったのはすごいなと思いますね。ここから彼女たちの心境が変わってくれればいいなとは思いますね。一番これから変わるだろうなというのは1年生の女子2人なのかなと思います。

笹野 組手も女子が1年の土屋(菜々子、スポ=北海道・札幌北)と2年の田部(明音、法=東京・早実)の二人しかいないので、その中で普段から、やはり二人では稽古もできないので、男子に混ざって稽古を行っています。でも合宿となるとメンタル面もそうですし、技術面とか肉体面も含め結構厳しいものがあるので、本当に頑張ってついてきてくれたなと。自分は下からもサポートしながらやっていたんですけど、あまりサポートをする必要もなく、二人とも頑張ったなと。二人ともMVPです。

佐川 MVPで言えば女子二人はもちろん頑張っていたなと、すごいなと思っているんですけど…。

笹野 自分?

鈴木 お、自分?

佐川 男子団体形、めっちゃ頑張ってた!

一同 (笑)。

鈴木 頑張ったね!頑張った頑張った(笑)!

佐川 目に見える変化が得られたのかなという感じですね。

鈴木 初めて(監督に)言われるコメントも変わったしね。形って採点競技なので色々な人、監督やコーチから見てもらえるんです。1年の時の団体は4年生が一番上だったのが抜けて、そこからメンバーが代わっての2~3年でした。そこでずっと同じことを言われていたことがちょっと変わったので…。

佐川 いや、もう言い尽くしてるじゃん!

一同 (笑)。

鈴木 ごめん(笑) 。

佐川 今まではみんな、流派が違ったんですよ。全員流派が違う団体形は珍しかったんですけど、結構一つ一つの技というものをしっかりやってきたんです。でもそれだけじゃ駄目だよなという風になって。合宿では全体の流れを一から見直して、団体形という一つの芸術品じゃないですけど、そんなかっこいいことは言わないですけど…。

笹野・鈴木 言ったじゃん。

一同 (笑)。

佐川 1つの作品として仕上げられるようになってきたのかなという気持ちですね。

――先ほど「全員が違う流派」とおっしゃっていましたが、今はどの流派に合わせて練習していますか

佐川 剛柔流ですね。

鈴木 僕の流派に合わせてもらっているんですけど、僕の流派と早稲田の流派(松濤館流)が違って。1年生の時は早稲田の流派でやっていたんですけど、そこで(流派を)変えるってなった時に、大学として出ているのにそれはいいのかな、というのが多少あって。流派をこっち(剛柔流)に合わせてもらっているのに全然結果が出ない年だったので、責任というかショックが大きくて、そこでどう頑張ろうかという前期だったので、あと少しこのまま勢いに乗って頑張れたらなと思いますね。

 

――役職に就いている中で、大変だったことを教えてください

 

笹野 初心者から日本代表レベルまで様々な選手がいるということで、メニューをどうやって決めるかということに苦労しました。良かった点は、チームが一体化して上下関係がいい意味であまりなくて、1年生や2年生が積極的にアドバイスを求めてくるといったところが一番嬉しかったなと思いますね。そういったところで信頼を築くことができて良かったなと思います。信頼がなかったらアドバイスも聞いてこないと思いますし、下からのやる気が見られたところが主将として嬉しかったことかなと思いますね。

 

――メニュー作りで意識されたことはありますか

 

笹野 もともとは自分が独断でメニューを決めてしまっていたのですが、それだけではいけないと思って、練習試合後のミーティングでチーム内の課題を明確化してみんなでやりたいメニューを考えてもらうようにしました。2時間しかない練習でどれだけ競技力を向上できるかというのが私たちがやるべきことなので、みんなでメニューを決めています。

 

佐川 私は仕事を振ることが大変でした。今までは仕事を部内で分散できていなくて、仕事をするだけで精一杯で、主務が仕事を下級生に教えることなく引退してしまうということが多かったんです。だから次の主務はゼロからのスタートになってしまって、「なにをやればいいんだろう」って感じになってしまっていました。マネージャーもいないので、できるだけ次の世代への負担を減らして行けたらなと思って、自分の仕事をしつつ、仕事の分担もしていました。どうやったら抜けがないかなとか、どうしたら管理しやすいシステムになるかなといったことを考えるのが大変でした。

 

鈴木 僕は副将だったんですけど、あまり大変なことってないんですよ。小学校の時にあった登校班の班長って先頭に立っているだけじゃないですか、あんな感じです(笑)。(笹野)由宇がしっかりしていて、信頼もあってみんなを上手く引っ張っていってくれるので、そこをサポートしようかなと思ったんですけど、そんなにサポートいらないなと思って。仕事は佐川主体でちゃんと進んでいて。そこで僕は、副将の仕事ってわけじゃないんですけど、練習中にきつい雰囲気にならないように後輩とのコミュニケーションを大事にしていました。練習の中でもコミュニケーションを取ったり、私生活で親睦を深めていくことでいい雰囲気を作っていけるようにしました。没頭する練習時間ももちろん必要ですが、それだけではつまらないので。チームの雰囲気作りは貢献できるかなと思って、それしかやっていないです。後輩からコミュニケーションを取ってくれていたのが嬉しかったです。

 

――話がかわりますが、試合前のルーティンはありますか

 

鈴木 なんか佐川とかありそうだね。

 

佐川 ルーティンなら、僕は試合前にミルクティーを飲むことですね。

 

鈴木 開人、お腹痛くならないの?

 

佐川 ちゃんと朝ご飯を食べてからね。朝ご飯を食べる前に乳製品を飲むとお腹が痛くなっちゃうので、朝食を食べて30分後くらいにミルクティーを飲むようにしています。試合中って無心でやっているつもりなんですけど、頭フル回転の状態なので、しっかり糖分を取ろうと思ってミルクティーを飲んでいます。

 

笹野 自分は早稲田大学の校歌を聞いています。

 

鈴木 え、ほんと?

 

笹野 本当に。最初に聞いたのが早慶戦の時で、聞いてみようかなと思って。その前は聞いたことなかったんですが、試しに聞いてみたらすごくやる気がでて、当時1年生だったんですけど、4年生の選手に勝つことができました。その時から親に車で送ってもらう時に校歌を聞いています。手は振らないですけど(笑)。

 

鈴木 1回しか聞かないの?

 

笹野 いや、2回くらいかな(笑)。

 

鈴木 僕は、高校の時はルーティンがあったんですけど。朝起きてから家を出る時のルーティンがあって。もう今は完全に忘れてしまったんですけど(笑)。大学に入って生活が大きく変わって、新入部員の仕事もありますし、ルーティンどころではなくなってしまって、そんな余裕がなくて、ルーティンもなくなってしまいました。きょう校歌の話を聞いたのでやってみようと思います。

 

笹野 1回やってみな。

 

――オフの日は何をしていますか

 

鈴木 趣味みたいな感じかな。由宇は釣りがあるじゃん。

 

笹野 そうだね、釣りね。楽しい話になってきたね(笑)。自分は釣りが好きで、部内の釣りが好きな子、例えば吉田(翔太、スポ2=栄北)とかと自分の家に前泊して釣りに行ったりしていました。

 

鈴木 練習で疲れているので朝早くから動いたりはしないんですけど、夕方までダラダラして。そこから友達誘って飲みに行ったりします。趣味としては、僕はパン屋さんのパンが好きなんですよ。就活とかでいろいろな駅行くので、そこでパン屋を探したり、探したパン屋をそのためだけに出掛けたり。友達を誘って行っていたんですけど、最近はあんまり来てくれなくて。一人でも行っちゃいますね。

 

佐川 あんまり決まったことはないんですけど、日曜日は誰から何を言われようと仕事をしないって決めています。監督との連絡とか、日曜日に連絡が来ることもあるんですけど、日曜日は仕事をしません。LINEの通知をオフにするとか(笑)。それで、一人で温泉とかに行きますね。岩盤浴とかロウリュウとかやりますね。

 

――夏休みのオフは何をして過ごしましたか

 

笹野 アメリカだね。

 

佐川 そうだね。4年生と3年生でアメリカに道場を持っている先輩のところに行って稽古してもらいました。それと兼ねて旅行みたいな。

 

鈴木 部活のイベントというか行事だよね。毎年幹部が行っていて、人数が少ないから3年生も来るみたいな。練習がメインで、後付けで旅行をしました。

 

――では、あまり観光はできませんでしたか

 

鈴木 少ししましたよ。

 

笹野 ラスベガス行ったよね。

 

鈴木 ラスベガスね(笑)。カジノだったり色々あったんですけど、僕たちはグランドキャニオンに行く2日間のツアーを予定していて。すごい景色だったり美味しいごはんだったり、すごくいいツアーだったんですけど、メインイベントでグランドキャニオンに行くってなった時に、そこまでの移動途中で佐川がホテルの朝食を食べたところにお財布を置いてきたことに気がついて。しかもパスポートごと。それが一番面白かったです。佐川が見たこともないような顔で沈んでいて、それがすごく面白かったです。

 

――お財布はありましたか

 

佐川 ありました。ほんとよかった。

 

――プライベートで同期と遊ぶことはありますか

 

鈴木 たまにだよね。

 

笹野 野球見に行ったりすることが最近増えましたね。

 

鈴木 そうだね。結構遊んでいるかも。最近は後輩を連れてというのが増えましたね。チームで結構仲良くなってきて、後輩との付き合いが増えたので。みんな仲いいみたいな感じですね。

 

全国の舞台へ


ロジカルに仕事をこなす佐川主務

――関東大学選手権での目標を教えてください

 

佐川 チームとしては、もちろんみんなが勝つこと、関東を勝ち抜いて全国に行くことだと思っています。まあそれが最終目標ですけど、次に繋げることができる成果を持ってきたいと思っていて。上手くいかずに失敗してしまうことがあると思うんですけど、それを次にどのように生かしていくのか、根元を解決していくことが大事だなと思っています。そういう成果をみんなに出してほしいなと思います。個人としては、最後なので、絶対に全国に行きたいということだけですね。

 

鈴木 団体形の目標として、全国に行きたいなというのがありますね。1年生の時の記録を超したいと思っていて、それまでのタスクは今までにきちんとやってきたつもりなので、その目標を達成したいなと思います。個人的には、これから『最後の』というのが続くので、やっぱりそこで妥協しないように、万全の態勢で臨めるように手を尽くしていきたいと思います。

 

笹野 チームの目標としては、男子団体組手、女子団体組手、男子団体形、女子団体形、全員で名古屋(の全国大会)に行くことです。それが一番難しいんですけど、各々目標も立てているし、頑張れば行けると思っています。私としてはずっと組手をやっているので、選ばれなかった人の分まで頑張って、まずは全国大会に出ます。まあ(全国大会に)出るのは当たり前なんですけど、1回戦に勝利するためにコンディションを整えて臨むことができたらと思います。個人としては、残り3試合しかないので、全部負けなしでいきたいと思います。以上です!

 

――組み合わせを見ていかがですか

 

笹野 組み手は去年に3位に入ったのもあって、強豪校が散らばっている中、(トーナメント表の)右上に入ることができて早稲田が一番いい山にいると思います。一戦一戦勝つことができれば、3位まではとりあえず行けるんじゃないかなと思います。まずは一回戦に勝って全国に繋げます。

 

佐川 形の方は良くも悪くも、そんなに特にいいわけではないと思うんですけど。まあでも今年からルールが少し変わったので、それがどう生きてくるのか。組み手と違って、審判が客観的に見た判定競技なので、どうなるかわからないんですけど、順番によってやり辛さとかはあります。でも審判の目線も考えた練習をしてきたので、頑張った分の結果がついてくればいいなと思います。

 

佐川 でも今年から2コートだよね。去年までは1コートで全試合やっていたんですけど、今年から2コートに分かれたので審判の判定基準も変わっちゃうんですよ。個人で基準が違うので、2コートに分かれる分得点のつけ方が違うと思うので、そこが少し気になるなと。良く出るか、悪く出るか。

 

鈴木 ちょっと心配って感じですね。

 

――勝利のキーポイントは何ですか

 

笹野 注目選手は1年生ですかね。長沼(俊樹、スポ1 1=東京・保善)っていうのがスポーツ推薦でいるので、6月の東日本選手権では1回戦で立教大に負けてしまったので、団体も長沼が勝てば勝つことができるんじゃないかなと思います。

 

鈴木 団体形は3人でそろってするんですけど、(佐川選手と)もう一人で思い切って留学生を出してみようと思いまして。いつもは個人で活動している選手で、とてもレベルの高い選手なので、期待しています。3人での調整をしっかりするので、彼を入れた新しいメンバーに注目してほしいです。大会のアップの状態とか、環境の差がみんなあるので、その中でどれだけ戦っていけるか、1分40秒の中でミスをすることなく3人で同じ形を打てるかが大事だと思います。メンタル面をカバーして、当日頑張りたいと思います。

 

佐川 そうですね。勝利のキーポイントは練習の成果をどれだけ試合に出すことができるかにあると思います。

 

――今、大会に向けてチームで取り組んでいることはありますか

 

鈴木 基本の見直しというよりは、選手個人の調整に充てている感じですね。

 

笹野 夏合宿を終えて1日2時間しか練習しかないので、基本に充てるのではなく、個人で形や組み手に取り組むことができるようにしています。個人でみっちりと練習するようにしています。

 

鈴木 個人でのペースも確立されていると思うので、無理やり練習メニューを押し付けてそれを崩さないように。それと最低限みんなで練習することのバランスを考えて、主将がメニューを考えています。

 

笹野 夏合宿で克服できなかった課題や、練習試合で新たに出た課題を10月12日までにどう改善していくか。練習のラスト30分に課題の時間を設けて、取り組んでいます。

 

――今のチームのコンディションはどうですか

 

笹野 悪くないよね?

 

鈴木 うん、悪くない。

 

笹野 組み手はもちろん、チームは一体化していますし、このまま行ければいいんじゃないかなと思います。

 

鈴木 時間がまだあるので、その間にしっかり調整しようと思います。今のところ演武の出来はいいし順調に行けていると思うので、このまま大会に臨めたらと思います。

 

佐川 空ぶっている選手もいなくて、大会に向けては一番いい持っていき方なのかなと思います。今までで一番いいと思いますね。いつもは夏合宿後に疲れとか辛さで、力が入っちゃったりしてコンディションが悪くなる部員が多いんですけど、今年はいないなという感じです。夏合宿の練習がいい感じで生きていると思います。

 

――関東大学選手権に向けての意気込みを聞かせてください

 

鈴木 すごい直前に緊張してしまうんですけど、形を打つ直前、礼をすると緊張してしまって。メンタル面がとても弱いので、これまでの実績や練習を振り返って自分に自信を持てるように調整していきたいです。全日本に出て、しっかりと結果を残せるようにしたいと思います。

 

笹野 自分は鈴木と違ってあまり緊張しないタイプで、団体組手で(メンバーが)5人いるので、試合も1試合ではないですし。でもそこで誰かが負けてしまった時に自分も落ち込んではいけないなと思いますし、しっかりサポートしたいと思います。とりあえず、僕は個人で残りの全試合負けないだけです。

 

佐川 私もあまり緊張しなくて、試合ではいつも練習の120%くらいの力が出るんですよ。練習中よりいい形が打てたりするので。なので、練習中の100%をどれだけ伸ばすことができるかが課題で、それを残りの2週間でコンディションを整えつつ、詰めていきたいと思います。そして全日本に必ず続けたいなと思います。

 

――ありがとうございました。

(取材・編集 小山亜美、名倉由夏)

全員で全国へ。この3人が先導していく

◆笹野由宇(ささの・ゆう)(※写真中央)

1997(平9)年10月23日生まれ。175センチ。東京・世田谷学園高出身。スポーツ科学部4年。常にチーム全体を気遣う姿勢が印象的だった笹野主将。団体組手ではチームの主軸として再びメダルを狙います。趣味の釣りでも、駆け引きを忘れないことを大切にしているそうです!

◆鈴木捷太(すずき・しょうた)(※写真右)

1997(平9)年4月20日生まれ。167センチ。群馬・太田高出身。スポーツ科学部4年。明るく丁寧に質問の受け答えをして下さった鈴木選手。2年生の時からリーダーを務める団体形で、佐川選手と共に集大成に挑みます。最近のブームはパン屋巡りで、イチオシは代官山の「フスボン」。

◆佐川開人(さがわ・かいと)(※写真左)

1997(平9)年5月30日生まれ。162センチ。埼玉・早大本庄高出身。商学部4年。笹野・鈴木両選手に「論理的」な性格と評される佐川選手。旅先で財布を忘れたことをいじられる場面もありましたが、普段は主務として信頼されていることが伺えました。 実は親知らずに悩まされ、最近抜いたばかりなのだとか。