スポーツの秋である。世界陸上に、プロ野球のクライマックスシリーズ、バレーW杯、世界体操まで、イベントが目白押しだ。そんな中でも、話題の中心にあるのは、季節外れの桜色をまとったジャージー。ラグビー日本代表の快進撃に、世界中から賞賛の声が止まらない。特に第2戦では、優勝候補のアイルランドにがっぷり四つで組み合い、勝利。報道によると、南アフリカを破った前回大会の『ブライトンの奇跡』に続き、アイルランド紙「アイリッシュ・タイムズ」は『シズオカの衝撃』と命名したという。ルールを十分に理解していない私でも、日の丸を背負う戦士たちの奮闘に、心を奪われている。

改めて思う。人々が、最もスポーツの面白さを実感する瞬間は、奇跡が起きるときなのではないだろうか。スポーツの歴代視聴率ナンバーワンは、1964年東京五輪で、女子バレー日本代表が当時最強と言われたソ連を倒し、金メダルに輝いたときだ。当時の視聴率は66.8パーセントだった。想像を超えた結果を前にしたとき、人間は熱狂の渦を巻き起こす。

しかし一方で、スポーツに奇跡はない、とも思う。アイルランド戦でのある実況に、共感の声が広がっている。NHKの豊原謙二郎アナウンサーが終了の笛が鳴った瞬間、「もう奇跡とは言わせない」と絶叫した。さらに、「日本は何か特別なことをしたわけではありません。鍛えてきたこと、ゲームプランを忠実に、何かそれ以上に遂行した」と続けた。その言葉には、選手たちの血のにじむような努力や関係者の尽力が含まれている。ちなみに、テレビ離れと言われる今日でも、その放送では30パーセント近い視聴率を叩きだした。

そんな最中、フィフティーンの快進撃を真似たかのように、あるチームが歴史を塗り替えた。サモア戦の勝利で史上初のベスト8が現実的になった5日、立大アイスホッケー部がリーグ第3戦で、神奈川大から白星をあげた。それも、2014年11月8日以来の大金星である。日数にして1792。時間だと43008…。なんて言ってたらきりがないけれど、そう書きたくなるぐらいの長い時間、苦汁をなめてきた。


試合終了後の整列で、スタンドから祝福を受けるメンバーたち

私は3年間、寒いリンクの中でペンを握り、シャッターを切ってきた。いまの戦力ならもしかしたら…と思うことは何度もあった。昨年は、2試合で3Pを同点で迎えるなど、勝利まであと一歩に迫った。しかし、その一歩が、とてつもなく大きい壁だった。

さらに言えば、今年の神奈川大に対しては、1か月前のサマーカップで4-14と惨敗していたのである。

奇跡…と思ったのは自分だけでないはずだ。だが、試合後に話を聞いてみると、手のひらを返さざるを得ないような裏話があった。

ほぼ全員が口にしていた勝因、それは綿密な準備だった。試合の3日前から、学生だけで状況ごとの戦術を確認し、練習に落とし込んだという。今年に関してはほとんど取材をしていないので、詳しくは後輩の原稿を見ていただきたいのが、なんとも粋なのが、作戦会議の声をあげたのは競技歴の浅い佐山(済3)ということ。1部リーグの中で唯一、大学から競技を始めた選手が多く在籍する立教らしい、勝利への道だと言える。初心者と経験者の混ざり合い。多国籍のラグビー日本代表。通じるものがあると言うのは、無理やりなのだろうか。



リーグ戦でリードする試合展開も久しぶりだったが、プラン通りに試合を進め、5-2で勝利した

これまでのチームが準備を欠いていた、とは思わない。4年間の辛い時期があったからこそ、「10・5」の歴史的勝利がある。昨年のメンバーで、勝利を経験していない安保(大学院法学研究科修士1年)がコーチとしてベンチに入っていることも、ドラマに花を添えている。

激闘から1時間後。主将・上床(社4)に話を聞いてみると、「うれしいというより、ほっとした。歴史は変えられたけど、順位は変わらないからね。勝ったからこそ、厳しくしていかないといけない」と口にした。さらに、エース・竹高(法3)も「喜ぶのは今日限り。まだまだここからあるので頑張りたい」と、しっかりと前を見据えていた。

だから、こう思う。

残す6試合のリーグ戦で2勝目をあげたとしても、「奇跡とは言わせない」。それは、必然である。

(10月10日・16年度~18年度アイスホッケー部担当=浅野光青)