チーム事情から見るドラフト戦略~中日編 今シーズンの中日は、終わってみればセ・リーグ5位だったが、チーム防御率3.72はリーグ3位、チーム打率.263はなんとリーグトップである。さらに、打率ベストテンにビシエド(2位/.315)、大島洋…

チーム事情から見るドラフト戦略~中日編

 今シーズンの中日は、終わってみればセ・リーグ5位だったが、チーム防御率3.72はリーグ3位、チーム打率.263はなんとリーグトップである。さらに、打率ベストテンにビシエド(2位/.315)、大島洋平(4位/.3118)、高橋周平(8位/.293)、阿部寿樹(10位/.291)の4人が名を連ねるなど、決して現有戦力が劣っているわけではない。

 68勝73敗2分で、優勝した巨人には9ゲーム差をつけられてしまったが、3位の阪神とは3ゲーム差。まずは”Aクラス奪還”が、当面の現実的な目標だろう。たとえば、10勝5敗ぐらいの成績を挙げられる投手が入ってくれば、その目標もグッと現実味を増す……というよりも、優勝も夢ではなくなってくる。



最速152キロを誇る東海理化の本格派右腕・立野和明

 まず名前が浮かぶのは、森下暢仁(まさと/明治大)だろう。今季、ようやく頭角を現してきた柳裕也との”明大コンビ”は、大いに注目を集めるだろう。そこに来季2年目を迎える根尾昂が打線に加わったら……きっとナゴヤドームは満員御礼になるに違いない。

 しかし今年は、石川に奥川恭伸(星稜)がいる。中日新聞の販売エリアに「10年にひとりの逸材」なら、本社から獲得指令が下されるであろう。

 奥川だって、1年から10勝も夢じゃないと思っている。投球センス、実戦での洞察力、ゲームメイク能力、制球力……どれを取っても、すでにプロレベルだと断言できる。

 問題は、プロで1シーズン乗り切れるだけの心身の強さがあるかどうかだ。ローテーション入りすれば、登板日に合わせた調整が中心となり、能力値を上げる追い込んだ練習はなかなか難しい。

 いずれにしても、森下も奥川も”一本釣り”できるような選手じゃない。ならば、地元・愛知の逸材、石川昂弥(東邦)も控えている。この春から夏にかけてのめざましいバッティングの進化は、プロでも3冠王を狙える存在になるのではないかと本気で思っている。それぐらいのバッターである。ただ、この石川にしても密かに”単独指名”を狙っている球団があるかもしれない。

 ならば、こちらも地元出身の本格派右腕、東海理化の立野和明だ。森下や奥川に比べて知名度は高くないが、実力はたしかである。柔軟性、バランス、パワー、ベース上での体感速度、変化球の精度……長所を挙げればいくらでも出てくる。「愛知にこんなすばらしいピッチャーがいたのか」と驚く人もいるかもしれない。Aクラス奪還とともに、”人気回復”も中日の大きなテーマだ。立野もその役割を担ってくれる選手であろう。

 投手以外のポジションはどうか。武山真吾、杉山翔大が退団し、松井雅人も今シーズン、トレードでオリックスに移籍。捕手の選手層が急激に薄くなっている。もともと手薄だったところに3人も減ったのだから、ドラフトを含め捕手の強化は急務だ。

 とはいえ、1年目の石橋康太がウエスタンリーグ終盤は「4番」を任されるなど、将来の正捕手候補として経験を積んでおり、捕手しかできないより融通性のある選手の方がチーム事情にフィットしている。

 そう考えると、海野隆司(東海大)より、50mを6秒ちょっとで走る脚力があって、もともと内野手だった佐藤都志也(東洋大)になってくる。2位で獲得できればいいが、1位で消える可能性もある。その時は一転、山瀬慎之助(星稜)や江川侑斗(大分高)の高校生にシフトするのもありだろう。

 さらに、将来のことを考えて、平田良介のような右打ちの外野手もほしいところだ。3位あたりで佐藤直樹(JR西日本)はどうか。足と肩なら、今の中日外野手陣のなかではトップだろう。まだ粗っぽさが残るバッティングだって、インサイドアウトのスイング軌道を覚えたら、大化けの可能性もある。

 冒頭でも述べたが、戦力は悪くないし、楽しみな若手も着実に育っている。それだけに”中日復権”に向けて、今回のドラフトの意味は大きい。