ラグビーワールドカップは10月9日(水)、大分スポーツ公園総合競技場でプールDのウェールズ(世界ランキング2位)とフィジー(同11位)が対戦。決勝トーナメント進出を懸けた重要な一戦となった。 優勝候補の一角となるウェールズは、強豪オーストラ…

ラグビーワールドカップは10月9日(水)、大分スポーツ公園総合競技場でプールDのウェールズ(世界ランキング2位)とフィジー(同11位)が対戦。決勝トーナメント進出を懸けた重要な一戦となった。

優勝候補の一角となるウェールズは、強豪オーストラリアに競り勝つなど2連勝で勝ち点9と波に乗っている。この試合は引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる。昨日は練習開始から15分を公開。キックオフからの攻守の動き出しなど繰り返ししながら戦術確認した。

会見ではウォーレン・ガットランドHC(ヘッドコーチ)は「オーストラリア戦と同様に簡単にはいかない。強度の高い戦いをしなければならない」と語り、No.8ロス・モリアーティは「フィジーは体が強く、簡単な相手ではない。個々の技術とチーム全体の力が必要だ」と話した。

対するフィジーは、これまで好勝負を繰り広げながらも1勝2敗にとどまっている。この試合がリーグ最終戦となり、予選突破するには勝利が最低条件となる。前日練習では開始から15分を公開。リラックスした雰囲気のなか、ゲーム形式の練習などで調整した。

ジョン・マッキーHCは「スタジアムの雰囲気は最高、ピッチの固さもいい。試合では我慢強くプレッシャーをかければ好機は作れる」と話し、キャプテンのFLドミニコ・ワンガニンブロトゥは、「力勝負となる。ノーサイドまで80分間チャレンジを続けたい」と意気込みを語った。

フィジーのキックオフで前半がスタート。ウェールズの蹴り返したボールをフィジーLOレオネ・ナカラワがオフロードパスを通し、いきなり会場を沸かす。前半3分にはまたもフィジーがスクラムから右に展開し、WTBジョシュア・トゥイソバが次々と襲いかかるタックルをものともせずにトライを挙げる。SOベン・ヴォラヴォラのゴールは外れたものの0-5と先制する。

勢いづいたフィジーは前半8分、ゴール前のラックからWTBセミ・ラドラドラが大きく右に展開。ロングパスをタッチライン際で受けたFBキニ・ムリムリバルが右隅にボールを押さえ0-10とリードを広げる。

フィジーのLOテビタ・カブバティが危険なタックルをしたとしてシンビン(10分間の一時退出)となり数的有利が生まれた前半17分、ウェールズに待望の初トライが生まれる。連続ラックで相手を真ん中に集め、手薄となった左にロングキック。キャッチしたWTBジョシュ・アダムズがトライを決めて5-10となり、SOダン・ビガーがコンバージョンゴールを決め7-10と点差を縮める。

ウェールズは持ち味である激しく組織的な守備で圧力をかけ、相手のミスを誘う。前半30分、またも密集からテンポよく展開して、最後は大外で待っていたWTBジョシュ・アダムズが逆転トライで12-10。SOビガーのゴールも決まり、14-10で前半を折り返す。

負けられないフィジーは後半の入りから好スタートを切る。ボール争奪戦で上回り、素早くBKへ展開。後半13分、ラインアウトからWTBラドラドラが相手タックルを引きずりながら力強く前進すると最後はモールからなだれ込み、ペナルティトライで14-17と逆転に成功する。

この試合で決勝トーナメント進出を決めたいウェールズは後半17分、SOビガーと交代したリース・パッチェルがPGを決め17-17の同点とし、その3分後にはCTBジョナサン・デービスが密集から抜け出すと、最後は好フォローしたWTBアダムズがハットトリックとなるトライを決め、22-17と再びスコアをひっくり返す。

ここから両チームの攻防の入れ替わりが激しくなり、会場は展開の早い攻防にどよめきとため息が交互に響く。後半28分、ウェールズは相手の一瞬の隙を突く。No.8モリアーティが中央を突き抜け、パスを受けたSHガレス・デービスが一度倒れながらも、すぐに立ち上がって一気にゴールライン近くへボールを運ぶ。最後はFBリアム・ウィリアムズがトライを挙げゴールも決まり29-17。これで勝負ありとなった。

フィジーは最後までWTBラドラドラらの個人能力を生かし、ライン突破を試みたがスコアを動かすことなく力尽きた。ジョン・マッキーHCは、「今夜、選手たちが見せた努力を誇りに思う。ウェールズはシックス・ネーションズの(2019年の)チャンピオン。今年世界(ランキング)1位にもなっていて、やはり本当に上手にゲームをした。この大会に最後までいることはできなかったが、勇敢に戦い抜いた」と選手を労った。

キャプテンのFLワンガニンブロトゥは、「強い気持ちで80分間戦い抜いた。望んだ結果は出なかったが、小さな国のチームがここにいるのは決して簡単なことではない」と支えてくれた方々に感謝の言葉を述べ、会場を後にした。

決勝トーナメントに駒を進めたウェールズのウォーレン・ガットランドHCは、「とにかく必死に試合をした。フィジーは信じられないほどの個の力を持っている。とにかくボールをキープして、連続して攻撃すればチャンスが作れると考えていたが、十分ではなかった。タフな試合だった」と振り返った。キャプテンのLO アラン・ウィン・ジョーンズは「最初からフィジーが私たちにプレッシャーをかけてきて、タフな試合となった。彼らは本当に素晴らしいチームだった」と敗者をたたえた。

総勝ち点を14とし決勝トーナメント進出を決めたウェールズは、10月13日(日)に熊本県民総合運動公園陸上競技場でウルグアイと対戦する。フィジーはこの試合でプールDの全日程を終え、敗退が決まった。

 

◆プレイヤー・オブ・ザ・マッチは敗れたフィジーのWTBラドラドラ

ハットトリックを達成したウェールズのWTBアダムズも称賛に値するが、この試合で最も観客を沸かせ、記憶に残る選手となったのがフィジーの “セミ・トレイラー”の愛称で親しまれるWTBセミ・ラドラドラだ。

迫力満点の突進で、4点差を追う後半13分、ラインアウトから相手タックルを引きずりながら力強く前進し、逆転の起点となった。その後も果敢な突破で観客を魅了し続けた。プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたラドラドラは、「試合に負けたので私がここにいるのが相応しいのかどうか」とはにかみながらも「でもチームメイトの頑張りに感謝している。今日は最後の試合だったので、空っぽになるまで全てを出し切ろうと思った」と胸を張った。