非常に有利なカウントだからこそ、打ちに出ることは少ない 3ボール0ストライクというカウントは、言うまでもなく打者にとっては非常に有利な状況である。しかし、投手が制球に苦しんでいる場面なだけに、打者に対してはベンチから「待て」のサインが出るこ…

非常に有利なカウントだからこそ、打ちに出ることは少ない

 3ボール0ストライクというカウントは、言うまでもなく打者にとっては非常に有利な状況である。しかし、投手が制球に苦しんでいる場面なだけに、打者に対してはベンチから「待て」のサインが出ることも多い。それもあって、投手はまず1つストライクを取ろうと、高い確率でストライクゾーンに甘い球を投げてくる。そういった背景も重なり、打てる球が来た場合は決め打ちで積極的に振りに行く打者も、また少なくはない。

 今回は、パ・リーグの球団に所属する打者たちが、3ボール0ストライクというカウントにおいて残した打撃成績を紹介。絶好のカウントから打ちにいってしっかりと結果を残している選手は誰なのか、具体的な数字を見ていこう。

 今季のパ・リーグにおいて、3ボール0ストライクというカウントにおける打席数を記録した選手自体は多かったが、その打席結果は大半が四球。実際に打ちに出て、打席結果を残した選手は決して多くはない。パ・リーグ各球団において、3ボール0ストライクというカウントでの打数を1以上記録した全ての選手を、以下に紹介していきたい。

○日本ハム
大田泰示外野手:8打席 3打数1安打 0本塁打1打点4四球 打率.333
渡邉諒内野手:12打席 2打数0安打 0本塁打0打点 10四球 打率.000
西川遥輝外野手:17打席 1打数1安打 0本塁打2打点 16四球 打率1.000
王柏融外野手:4打席 1打数1安打 0本塁打1打点 3四球 打率1.000

○楽天
浅村栄斗内野手:24打席 6打数3安打 0本塁打1打点 18四球 打率.500
ブラッシュ外野手:20打席 4打数2安打 1本塁打1打点 16四球 打率.500
ウィーラー内野手:10打席 2打数1安打 0本塁打1打点 8四球 打率.500
茂木栄五郎内野手:9打席 2打数0安打 0本塁打1打点 7四球 打率.000
島内宏明外野手:10打席 1打数1安打 0本塁打1打点 9四球 打率1.000

○西武
森友哉捕手:10打席 4打数4安打 0本塁打4打点 6四球 打率1.000
中村剛也内野手:9打席 3打数1安打 0本塁打0打点 6四球 打率.333
山川穂高内野手:19打席 2打数0安打 0本塁打1打点 17四球 打率.000
外崎修汰内野手:13打席 1打数1安打 0本塁打2打点 12四球 打率1.000
木村文紀外野手:5打席 1打数1安打 0本塁打1打点 4四球 打率1.000
戸川大輔外野手:2打席 1打数0安打 0本塁打0打点 1四球 打率.000

○ロッテ
レアード内野手:18打席 4打数2安打 0本塁打1打点 14四球 打率.500
井上晴哉内野手:13打席 1打数1安打 1本塁打1打点 12四球 打率1.000
岡大海外野手:3打席 1打数1安打 1本塁打1打点 1四球 打率1.000
角中勝也外野手:14打席 1打数1安打 0本塁打0打点 13四球 打率1.000
鈴木大地内野手:9打席 1打数0安打 0本塁打0打点 7四球 打率.000
田村龍弘捕手:5打席 1打数0安打 0本塁打0打点 4四球 打率.000
吉田裕太捕手:2打席 1打数0安打 0本塁打0打点 1四球 打率.000

○オリックス
中川圭太内野手:5打席 1打数1安打 0本塁打0打点 4四球 打率1.000
T-岡田外野手:1打席 1打数1安打 0本塁打0打点 0四球 打率1.000

○ソフトバンク
なし

 やはり、4打数4安打と積極的に打ちに出たうえで、堂々の打率10割と結果も残した森の活躍ぶりが目を引く。ミスショットの少なさが、負担の大きい捕手という守備位置を務めながら首位打者に輝いた理由の一つとも言えそうだ。状況的に甘い直球が来る可能性が高いといえど、本塁打の数自体はリーグ全体を見渡しても多くはない。しかし、ブラッシュ、井上、岡の3名は、絶好のチャンスを逃さず、見事に本塁打を記録している。

 チーム別の打数では楽天が最多の15となっており、3-0からでも積極的に打ちに出る選手が多かった。それに次ぐ12打数を記録したのが西武で、リーグ制覇を支えた積極的な打撃がここでも光っている。リーグ3位の10打数を記録したロッテは、リーグで唯一3-0から2本以上のホームランを記録したチームでもある。また、リーグ4位とはいえ7打数を記録し、4選手中3名が安打を放った日本ハムも一定の積極性を示している。

 その一方で、ソフトバンクはチーム全体で3ボール0ストライクの状況で記録した打数が1つもないという極端な結果に。松田宣、グラシアル、デスパイネといった大砲や、436打席でわずか10四球という極めて積極的な打撃スタイルを持つ牧原もその例外ではなく、よほどのことがなければ手を出さない姿勢がチーム全体で徹底されていた様子がうかがえる。

 また、オリックスもこのカウントで打数を記録しているのが中川とT-岡田の2人のみで、打数の合計もわずかに2つ。ソフトバンクほどではないにせよ、3-0からは手を出さないという姿勢を明確にしている。このような数字を鑑みても、3ボール0ストライクからの打撃は、選手個々の性質に加え、チームごとの特性にも大きく左右されるものであると言えそうだ。

結果が出ているからこそ、積極的に打ちに出る?

 次に、3ボール0ストライクから振っていった回数が多い選手たちの顔ぶれについて見ていきたい。パ・リーグ6球団における、3-0のカウントにおける打数が多かった選手のランキングは次の通りだ。

1位 6打数
浅村栄斗内野手:24打席 6打数3安打 0本塁打1打点 18四球 打率.500

2位タイ 4打数
森友哉捕手:10打席 4打数4安打 0本塁打4打点 6四球 打率1.000
ブラッシュ外野手:20打席 4打数2安打 1本塁打1打点 16四球 打率.500
レアード内野手:18打席 4打数2安打 0本塁打1打点 14四球 打率.500

5位タイ:3打数
中村剛也内野手:9打席 3打数1安打 0本塁打0打点 6四球 打率.333
大田泰示外野手:8打席 3打数1安打 0本塁打1打点 4四球 打率.333

7位タイ:2打数
ウィーラー内野手:10打席 2打数1安打 0本塁打1打点 8四球 打率.500
渡邉諒内野手:12打席 2打数0安打 0本塁打0打点 10四球 打率.000
茂木栄五郎内野手:9打席 2打数0安打 0本塁打1打点 7四球 打率.000
山川穂高内野手:19打席 2打数0安打 0本塁打1打点 17四球 打率.000

 トップの浅村は6打数。2位タイの3選手に2つの差をつけており、打率.500と結果もしっかりと残している。2位タイには4打数4安打の森選手に加えて、助っ人の長距離砲2名が入った。5位以下にも一発長打の魅力を持った選手が名を連ねており、四球(=単打)以上の結果を期待できる選手が多いという傾向が見えてきた。

 また、2位タイまでの4選手はいずれも打率.500以上、5位タイの2選手も打率.333と、打数が多い選手は打率も高くなっている。やはり、ほぼ確実に甘い球が来る状況ならばしっかりと捉えてヒットにできるという自信があるからこそ、四球狙いに徹することなく積極的にバットを出しているのかもしれない。

 3ボール0ストライクという状況から打ちに出ること自体が「積極的」と捉えられがちだが、前出のランキングに名を連ねた選手たちの打者としてのタイプの傾向はどうなっているだろうか。そこを確認するために、四球を打席数で割って求める「BB%」と、四球を三振で割って求める「BB/K」という2つの指標を見ていくことで、各打者の選球眼と忍耐力を調べていきたい。

浅村栄斗内野手:635打席 四球93 三振162 BB%.146 BB/K.574
森友哉捕手:573打席 四球72 三振89 BB%.126 BB/K.809
ブラッシュ外野手:527打席 四球81 三振157 BB%.154 BB/K.516
レアード内野手:553打席 四球55 三振128 BB%.099 BB/K.430
中村剛也内野手:557打席 四球54 三振123 BB%.097 BB/K.439
大田泰示外野手:594打席 四球27 三振111 BB%.045 BB/K.243
ウィーラー内野手:472打席 四球43 三振96 BB%.091 BB/K.448
渡邉諒内野手:543打席 四球48 三振120 BB%.088 BB/K.400
茂木栄五郎内野手:648打席 四球66 三振121 BB%.102 BB/K.545
山川穂高内野手:626打席 四球86 三振142 BB%.137 BB/K.606

BB%のリーグ平均値は.089、BB/Kのリーグ平均値は.456

 BB%のリーグ平均値は.089、BB/Kのリーグ平均値は.456となっている。BB%では10名中8名がリーグ平均を上回る数値を記録しており、下回ったうちの1人である渡邉も.088と、リーグ平均とはほぼ差がない。各選手が、一定以上の選球眼と自制心を持ち合わせていることがうかがえる。おおむね、球を見極めて冷静なバッティングをする選手が大半を占めており、積極的なスタイルが持ち味の大田選手は、この中ではむしろ例外的な存在となっている。

 BB/Kにおいては、大田と渡邉に加えて、レアード、中村、ウィーラーの3人もリーグ平均を下回っていた。それでも、大田を除けばその数値は.400台にとどまっており、それ以外の5選手はリーグ平均を上回る数値を記録。BB%ほど極端な結果ではないにせよ、こちらの数値でも好球必打の傾向が強い選手が半数以上を占めていた。

 そもそも、3ボール0ストライクという状況を作れている時点で、打者としてはある程度冷静に球を見られているのは間違いないところ。それに加えて、いかに甘い球が来やすいとはいえ、その1球を確実に仕留める技術も必要になってくる。積極的な姿勢よりも好球必打の精神が見て取れる2つの指標が示した結果は、その意味でも納得のいくものと言えるかもしれない。

 四球による出塁は、得てして投手のメンタル面にも影響を与えがちだ。それゆえ、四球の可能性が高い状況から凡退すれば相手を助けることにもつながってしまう。3-0からのバッティングにはそのような危険性も伴うだけに、「待て」のサインが出ずに自由に打たせてもらえるかどうかは、首脳陣の考え方によっても大きく変わってくる。