J1リーグ第28節。5連勝と好調なセレッソ大阪が鹿島アントラーズをホームに迎えた。前日、首位のFC東京はサガン鳥栖に敗れたため、C大阪は勝てば優勝戦線に名乗りを上げる絶好のチャンス。そして鹿島にとっては引き分け以上で今季、初めて首位に立つ…

 J1リーグ第28節。5連勝と好調なセレッソ大阪が鹿島アントラーズをホームに迎えた。前日、首位のFC東京はサガン鳥栖に敗れたため、C大阪は勝てば優勝戦線に名乗りを上げる絶好のチャンス。そして鹿島にとっては引き分け以上で今季、初めて首位に立つという大一番だった。

 C大阪は前節のガンバ大阪戦と同じメンバー。一方の鹿島は、ケガ人が続出するなか、ついに攻守の要であるレオ・シルバも故障で欠き、白崎凌兵が今季初めてボランチとして出場した。

 試合は序盤に動いた。前半6分、鹿島が左コーナーキックを獲得。永木亮太のファーサイドへのボールを、町田浩樹がヘディングで折り返し、犬飼智也がヘッドで飛び込み先制に成功する。



セレッソ大阪戦の前半6分、犬飼智也が先制ゴールを決めた鹿島アントラーズ

 だが、その後はホームのC大阪がソウザを中心に鹿島ゴールに襲いかかる。前半13分、左サイドでソウザのスルーパスに抜け出した柿谷曜一朗が決定的なシュートを放つが、鹿島のGKクォン・スンテに阻まれる。17分にも右コーナーキックを、ブルーノ・メンデスがニアで頭を合わせるが、わずかにゴール左にそれた。27分にも、右サイドで水沼宏太からブルーノ・メンデスとつなぎ、最後はゴール前でフリーだった奥埜博亮がヘディングでシュートをするが、ボールはゴールの左に。前半終了間際にも木本恭生、ソウザのヘディングシュートをクォン・スンテがセーブ。前半は鹿島1点リードで折り返す。

 後半に入ると、鹿島はC大阪の生命線でもあるサイド攻撃を抑えにかかり、決定機を作らせない。逆にカウンターで追加点を狙った。

 C大阪は柿谷に代え高さと強さがある鈴木孝司、さらに奥埜に代えてドリブラー高木俊幸を投入して勝負に出るが、鹿島の牙城を崩すまでには至らない。鹿島は後半17分、セルジーニョのケガで、経験豊富な遠藤康を投入。さらに中村充孝に代えて名古新太郎をボランチに入れ、白崎を本来の2列目に上げる。最後は伊藤翔に代えて上田綺世を入れ、1点を守り切った。

 鹿島は28試合目にして、ついに首位に立った。

 今夏、鈴木優磨(シント・トロイデン)、安部裕葵(バルセロナB)、安西幸輝(ポルティモネンセ)と3人の選手が欧州に移籍。さらに、ここにきてレオ・シルバ、三竿健斗もケガで離脱。駒不足になってもおかしくないところだが、たとえばセンターバックの町田を左サイドバックに起用し、それがしっかり機能する。この試合でもボランチとして初先発の白崎が機能、攻守の要として永木がチームの中心となっていた。誰が出ても同じサッカーができる。それが強いチームの証であり、鹿島の伝統でもある。

 その象徴ともいえるプレーがふたつあった。ひとつは後半42分、浮き球を足で処理しようとした相手選手に、名古が勇気を持って頭から突っ込み、ファウルをもらいマイボールにしたシーン。もうひとつはアディショナル・タイムの92分、上田の落としたボールに体を入れて、相手のファウルを誘った白崎のプレーだ。

 かつて、鹿島の黄金時代を支えた選手たちが、ジーコやレオナルドに口を酸っぱくして言われた言葉がある。

「どんなにリードしていても勝手なプレーはするな。場所、点差、時間帯を考え、チームのためにベストのプレーを選択しろ」

 その伝統は清水エスパルスから移籍して1年目の白崎、順天堂大から加入して2年目の名古にも浸透していた。

 ACL敗退後、「三冠を狙う」と宣言した鹿島。日本代表のW杯アジア2次予選があるためリーグ戦は中断するが、鹿島は9日、13日とルヴァン杯準決勝の川崎フロンターレ戦を控えている。ケガ人続出、ハードスケジュールと、三冠への道のりは簡単ではない。これから鹿島がどんな結果を出すのか注目したい。