画像:卓球マンガ『スリースター』/提供:© Cygames

現在マンガアプリ・サイコミで連載中の卓球マンガ『スリースター』、作者の加治佐氏が前編で語った通り「王道スポーツマンガ」とは一線を画している。

衝撃的な展開だったのが第1話だ。主人公が親の過度な練習でケガをして卓球ができなくなり、その親を見返すために卓球を再開するのだ。「タブーに踏み込んだ」と加治佐氏が語る『スリースター』に込めた思いとは。本人に話を聞いた。




画像:卓球マンガ『スリースター』1話。衝撃的な展開で始まる。/提供:© Cygames

衝撃展開でのスタート

――1話は衝撃的でした。幼少期の練習の問題は卓球界に固有の問題かもしれません。だいぶ踏み込んだな、と。
加治佐修氏(以下、加治佐):有名選手の幼少期なんかは特にそうですけど、卓球って幼少期から親子でマンツーマンで練習するじゃないですか。

――野球やサッカーは地元に根ざしたスポーツチームがありますね。
加治佐:卓球は一人でもできちゃうし、時には自宅に卓球台を置いて、四六時中練習するなんてことも耳にします。特に低年齢から世界を見据えることができるスポーツって数少ないと思うんですよ。

テレビで過去の親からのスパルタ練習を面白おかしく話している選手を見たことがあるのですが、有名選手はそれがとても上手くいったケースで、もしかしたら過度な練習で体を壊してしまう子もいるんじゃないか。

精神的な成熟よりも前に、もうとにかくやりこまないとっていうところがあると思うんで、それの功罪を第1話で出しました。自分なりに卓球のタブーに踏み込んだ感じはあります。もちろん卓球界とは仲良くしていきたいんですよ(笑)!




画像:卓球マンガ『スリースター』1話/提供:© Cygames

――卓球界独特の非常に難しい問題かもしれません。
加治佐:そうですね、やっぱりなんだろう…。たぶん正解は出ないと思うんですよ。育成とか強化とかも。それこそもう、国全体の文化とかも影響してくるでしょうし。

――ともすれば社会問題ですよね。球数制限などの高校野球でも似たような問題がありますよね。
加治佐:ええ。人によってもベストな指導の方法って違うと思いますし。もしかしたらスパルタでやってもらえるのが一番伸びる子もいるでしょうし。

――どちらにしても強いものだけが残る、と。
加治佐:『スリースター』というマンガのタイトルには、いろいろな意味を込めていますがそこも1つの由来です。ご存知でしょうが、スリースターは試合用の公認されたピン球のことです。スリースターは「認められた一握り」のピン球なんですよ。逆にその基準に満たないものはふるい落とされてしまう。

勝負は、最初はみんな同じスタートラインだけど、ふるい落とされて、結果的に残るのは一握り。そんな世界と重ねてしまうんです。

主人公の変化や今後の展開は

――主人公はかなり暗く、鬱屈した印象もあります。
加治佐:そういう意味では高校から卓球を初めてその面白さにのめり込んでいく白金君や才能に秀でた天崎君なんかの方が主人公っぽいかもしれませんね。主人公の司君は描いていて本当に難しく感じます。




画像:才能に秀でた彗文館高校の天崎/提供:© Cygames

――指導者目線で卓球を描くとありましたが、驚きなのが主人公が部活に入部してから一切卓球の試合をしないことです。
加治佐:言われてみれば確かに(笑)。主人公が幼少期のケガを治すために手術して、リハビリ中なので、試合には出られませんから。ですが、卓球部を指導する立場になったことで、かつて父が立った視点からものを見ることになり、色々と気付かされるところがある。

――そこからの主人公の変化も楽しみですね。今回、高校生という年齢に据えたことも印象的です。
加治佐:中学生ほど親の言いなりでもなければ、大学生ほど独立してもいない。体の変化も大きい。そんな一番難しいときに決定的にこじれている父親に報いるために卓球を始める。ここにドラマが生まれるかな、と。それに高校はインターハイなどわかりやすい大会もあるので、描きやすさもありましたね。

――9月末に2巻が発売しましたね。
加治佐:ここから一気に話が展開していきます。卓球ファンの方には卓球の描写を見てほしいですし、卓球が初めての方には高校生のドラマの部分を見て欲しい。楽しみにしていてください。

取材・文:武田鼎(ラリーズ編集部)