画像:卓球マンガ『スリースター』/提供:© Cygames

「本格卓球マンガ」が誕生した。それが現在マンガアプリ・サイコミで連載中の『スリースター』だ。高校生の卓球部を中心に人間ドラマを描いている。作者の加治佐修氏はなぜ卓球マンガを描こうと思ったのか。

“王道”と違う卓球マンガ『スリースター』

――『キャプテン翼』に『スラムダンク』など有名スポーツには有名マンガがつきものです。卓球だと『ピンポン』が有名ですよね。
加治佐修氏(以下、加治佐):卓球マンガとなるともう『ピンポン』になっちゃいますからね。その後も卓球マンガは短編も含めて出てきましたが、他のスポーツマンガと比べるとやはり少ないですね。

――その中で卓球を選んだのはTリーグ開幕などタイミングも見計らってですか?
加治佐:いえ、そこは全くの偶然で、実は当初は馬術マンガを書こうかな、と思っていたんです(笑)。色々題材を考えているうちに、「自分が経験したことで書いてみよう」と。

僕自身、高校時代に卓球部だったっていうのがもちろんあって。ちなみに戦型はカットマンでした。

――ということは『ピンポン』でいうスマイルですね。
加治佐:インターハイには行ってないし、全然下手クソでしたけどね(笑)。

――マンガの『ピンポン』は20年以上前。卓球を題材としたマンガはその後も出ていますが、他のスポーツマンガより少ない。どうしてだとお考えですか?
加治佐:『ピンポン』がすごいのもあるんですが、今の出版不況もあると思ってます。野球やサッカーは、競技人口も多いじゃないですか。それにルールもほとんどの人が当たり前に知っている。

かたや卓球となるとそこに比べて競技人口が少なくなるから、王道よりもちょっとニッチになってしまう。プラス“王道”となると引っ掛かりが薄くなって、出版自体も不況で売れなくなってるから、卓球を題材にして堂々やろう、ってなったら尻込みしちゃうのかもしれません。

――なるほど、確かに『スリースター』は友情・努力・勝利の“王道”とは違いますよね。
加治佐:はい、僕自身、親になったということもあって“指導者目線”から卓球を描くようにしています。ですので、今までの少年漫画のような“必殺技!”みたいな感じじゃないんですよね。

描きたいことは成長の人間ドラマの方なので、その段階に合わせて卓球の試合がある、という感じですね。




画像:『スリースター』は人間ドラマを中心に描かれている/提供:© Cygames

卓球のプレー描写へのこだわり

――取材期間を設けたりしてるんですか?
加治佐:結構試合は観に行きました。Tリーグも両国国技館での開幕戦を観ましたが、取材者として印象に残っているのは実は日本リーグなんですよ。愛知工業大学対シチズン時計の試合で。

至近距離で観られるんですよ。打った後の地響き、ラバーを弾く音、ドライブの変化、そんな細かいところまでじっくり観られて。トップ選手の球ってこんなに速いし、こんな迫力あるんだ、っていうのが衝撃的でしたね。




画像:木場先輩の打球シーン。プレー中の描写がリアルに描かれている/提供:© Cygames

――特に読んでいて、卓球のプレー中の描写にこだわりを感じました。
加治佐:高校の卓球部で外部コーチをしている方に監修してもらっているんですよ。例えばプレー中の漫画の下書き、ネームを「これ動きあってますか?」って。そういうのは確認してもらってます。

やっぱ卓球やってる人が一番のお客さん、最初のお客さんだと思うので、その人たちが見て「こんなんありえねぇよ」って言われないようにはしようと (笑)。

――特に参考にしている選手はいますか?登場人物の木場先輩は丹羽孝希選手をイメージしながら読んでしまいます。
加治佐:そうかもしれないですね(笑)。個別具体的なモデルがいるわけじゃないんですよ。ですが、個人的に見ていて楽しいのは森薗政崇選手。ピョンピョン跳ねてダイナミックでいいですよね。

取材・文:武田鼎(ラリーズ編集部)