セ・リーグ3連覇のあとの4位。こういう時の「踏みとどまり」は肝心だ。だが、チームは、とっくに投手陣の軸になっていな…

 セ・リーグ3連覇のあとの4位。こういう時の「踏みとどまり」は肝心だ。だが、チームは、とっくに投手陣の軸になっていなければならないはずの岡田明丈と薮田和樹の誤算も痛いが、野村祐輔、曾澤翼の“FA問題”も気になるところだ。いずれにしても、バッテリーの強化が最優先だ。

 9月28日付けの新聞に「1位はまだ決まっていません」と、スカウト会議後の苑田聡彦(そのだ・としひこ)スカウト統括部長のコメントが載った。この時期の常套句であるが、今年の広島にいたっては、本当に決まっていないのだろう。



夏の甲子園では初戦で履正社に敗れたが、大器の片鱗を見せた霞ヶ浦の鈴木寛人

 今年のドラフト1位候補には、森下暢仁(明治大)、奥川恭伸(星稜)、佐々木朗希(大船渡)といった手足の長い本格派が揃うが、これこそ松田元オーナーの好みであり、誰かに狙いを定めているに違いない。だが、3人とも競争率は高い。

 仮に競合覚悟で指名して外れたとしても、彼らに匹敵する本格派はいる。鈴木寛人(霞ケ浦)、小川一平(東海大九州キャンパス)、近藤卓也(ヤマハ)といったあたりがそうだが、間違いなく彼らもターゲットになってくるはずだ。

 捕手にいたっては、一昨年のドラフトで中村奨成を獲得し、次代の正捕手は決まりと思われていたが、雲行きがあやしくなってきた。2年目の今季、中村は一軍昇格どころか、ファームでレギュラーにもなりきれていない。ケガに泣かされた部分はあったが、”兆し”が見えないのであれば、手を打たなければならない。

 筆頭は郡司裕也(慶応大)だ。身体能力はそこまで飛び抜けているわけではないが、郡司がマスクを被ってからの6シーズンは、六大学リーグで優勝2回、2位3回、3位1回と常に安定した成績を残しており、「勝てる捕手」として高い評価を得ている。将来のチームリーダーの素養も兼ね備えており、グラウンド外でも見るべきところがある。

 もうひとり捕手で注目しているのが、辻野雄大(たけひろ/Honda)である。強肩・強打に俊足まで加わる万能型の捕手で、どの打順でもこなせるのが強みである。さらに、捕手だけでなく内野、外野もこなし、ユーティリティプレーヤーとしての活躍も期待できる。

 また、昨年のドラフトで小園海斗を筆頭に、高校生内野手を4人指名するなど、世代交代に向けて着々と準備を進めている広島だが、今年もレギュラー候補の野手は獲っておきたい。

 慶応大に柳町達(たつる)という内野も外野もこなせる選手がいるが、ドラフト上位で郡司、柳町の両獲りは厳しいだろう。ならば、蝦名達夫(青森大)でどうだ。

 身長185センチ、体重84キロの堂々たる体躯の持ち主で、今はセンターを守っているが、サードもこなす。高校(青森商)時代は県下ナンバーワンの強打の三塁手として鳴らした逸材だ。センター方向への長打力に加え、50mを6秒フラットで駆け抜ける足もあり、近い将来、打線の中軸を担える選手であるのは間違いない。

 そして、今シーズンの広島で気になったのは、ファームである。53勝62敗6分はウエスタン・リーグ最下位で、スタメン9人のうちベテランが半数近く占める試合も多く、そろそろファームの”平均年齢”を下げる必要がありそうだ。

 足が速くて、ガッツがあって、強靭な心身を持ったカープ向きの選手……近藤大樹(西日本短大付)、藤岡陸(希望が丘)、平野大和(日章学園)と鍛えがいのある選手はいくらでもいる。3連覇は途切れたが、次の黄金時代に向けて、たくましい選手をひとりでも多く育ててほしいものだ。