ドイツをはじめオランダ、イギリス、イタリア、ベルギーを転戦し、ヨーロッパで最も人気のあるモータースポーツシリーズの一つであるドイツツーリングカー選手権「DTM」。昨年いっぱいで撤退したメルセデスに代わり、イギリスのスーパーカーメーカー、「アストンマーティン」が参戦を開始した。

実績のあるアウディとBMWを敵にまわして苦戦を強いられてはいるが、4台体制のチームはこれまで2回の6位を含む複数回の入賞を果たし、来年につながる貴重な経験を積んでいる。英国のアストンマーティン本社から全面的なバックアップを受けてDTMで戦う、「R-モータースポーツ」の代表、フローリアン・カーメルガー博士に聞いた。

◆ワークスチームでないが故の「不参加」という苦渋の決断

----:長年レギュレーションの作成に携わってきたアウディやBMWとは「クラス1」へのスタンスが違うかもしれません。富士スピードウェイで行われるDTMとSUPER GTの交流戦には何を期待しますか?

フローリアン・カーメルガー博士(以下敬称略):非常に申し訳ないのですが、我々は富士のレースには出場しないことになりました。アストンマーティンのDTMおよび「クラス1」への参戦が最終決定したのが昨年だったので、マシン開発に充分な時間をかけることができませんでした。

私のチームは自動車メーカーによる運営ではありませんが、アストンマーティン本社の全面的なバックアップを受けています。(アストンマーティンの)アンディ・パーマー社長からも、力強いサポートを頂いています。(自動車メーカーによるワークスチームである)アウディやBMWとは少し立場が違いますが、アストンマーティンも私のチーム「R-モータースポーツ」も、DTMおよび「クラス1」には長期的にコミットしています。今回は、我々も本当に残念なのですが、富士には行かず、来シーズン(のマシン開発)に100%集中することに決まりました。(GTアソシエイションの)坂東さんには、「最大限の努力をする」とお約束していたので申し訳なく思っています。もちろんホッケンハイムのレースには出場しますし、来年は、日本でレースをすることを強く望んでいます。

----:もともとは、1年間の準備の後に2020年からの参戦を計画していたと聞きましたが。

カーメルガー:そうですね。2018年5月にアストンマーティンとDTMへの参戦に関する最初の話し合いを行いました。長時間のブレーンストーミングの後、2つの案に絞られました。1つ目は、あなたがおっしゃったようにマシン開発などに充分な時間をかけて準備し、2020年シーズンから参戦するというものでした。しかし、今シーズンから「クラス1」としてテクニカルレギュレーションが変わる事は決まっていたので、全てのマシンが新しくなり、全チームがゼロからのスタートです。そこで、1年待ってライバルたちに先行されるよりも、今シーズンから参戦して経験を積むことにしました。

◆来シーズンを見据えた今年の展望

----:今シーズンは、どこに目標を置いていますか? また、その目標をどの程度達成できていると思いますか?

カーメルガー:今年の目標は、まず参戦することでした。開幕までに、マシンはもちろんですがドライバー、チームなど、全ての体制を整えるのはなかなかのチャレンジでした。レースの結果については当初から現実的に考えており、表彰台や優勝など、非現実的な目標は立てていません。とても困難な道のりになることは理解していたので、シーズンを通して一歩一歩前進することに集中しました。第2戦のゾルダーでは6位入賞を果たすなど、早い段階で上位争いをすることができています。シーズン後半にはさらに進歩して、毎戦、現実的にポイントを狙えるレベルまで来ました。したがって、今シーズンは満足できる結果を残せています。

----:では来シーズン、アウディやBMWと互角に戦うために必要なのは何でしょうか?

カーメルガー:我々が持っているパッケージのポテンシャルを最大限に引き出すことだと思います。アウディとBMWはマシン開発に費やす時間に余裕があったはずですが、我々は開幕前のおよそ100日でマシンを作り上げました。そこが我々と、他の2メーカーの大きな違いです。しかし、すでにBMWとはいい戦いができた場面もあったので、来シーズンはもっと僅差になるでしょう。

----:来シーズンの目標は何ですか?

カーメルガー:今年よりも競争力を増して、全レースでポイントを獲得するのが目標です。もっと力強い答えを期待していますか? 「ローマは一日にしてならず」ですよ!(笑)

◆SUPER GTのマシンとのバトルを期待

----:ところで、SUPER GTのレースを観たことはありますか?

カーメルガー:レースはありませんが、セパンのテストには現場に行ったことがあるので、マシンのパフォーマンスやシリーズの雰囲気はある程度知っています。もちろん私もモータースポーツとクルマが大好きですから、マシンの速さには本当に驚き、感動しました。アストンマーティンをあのレベルまで持って行くのが、私たちの仕事です。

----:富士には行かないとのことですが、ホッケンハイムではGT500とアストンマーティンが一緒に走りますね。どんな気持ちですか?

カーメルガー:シンプルに、とても楽しみです。私だけでなく、(DTMに関係する)全ての人が同じ気持ちでいるでしょう。DTMのパドックでも、交流戦が発表された時はビッグニュースでしたよ。

----:それでは最後に、日本のファンにメッセージをお願いします

カーメルガー:日本にも、たくさんのアストンマーティンファンがいると思います。日本の皆さんがモータースポーツに傾ける情熱は、とても素晴らしいと思います。できれば、ヨーロッパにもレースを観に来てください。私たちも、来年は日本に行けることを楽しみにしています。DTMとSGTのモンスターマシンがバトルするレースが、どんどん増えていくことを期待しましょう! 私たちもがんばります。

アウディやBMWとは異なり、アストンマーティンという自動車メーカーのバックアップを受けてDTMに参戦している「R-モータースポーツ」。カーメルガー博士は外科医としてキャリアを積んだのち、自らレースチームを設立して様々なシリーズに参戦してきたという情熱的な「カーガイ」。彼の情熱が、巨大なドイツメーカーや、トヨタ、ホンダ、日産を相手にどんな戦いを見せてくれるのか、これからのアストンマーティンにも大いに注目したい。