ラグビーワールドカップは10月2日(水)、大分開催の初戦を迎え、プールBのニュージーランド代表とカナダ代表が対戦した。会場となった大分スポーツ公園総合競技場での世界規模のスポーツ大会は2002年サッカーワールドカップ日韓大会以来となり、多く…

ラグビーワールドカップは10月2日(水)、大分開催の初戦を迎え、プールBのニュージーランド代表とカナダ代表が対戦した。会場となった大分スポーツ公園総合競技場での世界規模のスポーツ大会は2002年サッカーワールドカップ日韓大会以来となり、多くのスポーツファンが駆けつけた。

ワールドカップ3連覇を狙うニュージーランドは9月24日に大分入りし、地元住民らと交流を深めるとともに、万全のコンディションを整えた。前日の会見でスティーブ・ハンセンヘッドコーチ(HC)は、「町中に出る機会もあり、いろんな人に会えて楽しかった」と充実したキャンプを振り返った。長い戦いを考慮し、この日は南アフリカ戦から11人入れ替えたが、LOスコット、WTBジョーディー、FBボーデンのバレット3兄弟や、かつてパナソニックでプレーした経験のあるソニービル・ウィリアムズらが揃う充実の布陣で臨んだ。

カナダは9月30日に大分入り。イタリアに完敗し、苦しい出だしとなっている。キングスリー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、「準備はしっかりできている」と述べ、難敵に照準を合わせた。前日の会場練習を終えたキャプテンのNo.8タイラー・アードロンは「芝は湿っていて少し滑りやすいが完璧。明日は屋根がしまった中での試合で歓声が響いて非常に盛り上がるでしょう」と大一番を楽しみにしていた。

前半キックオフからニュージーランドがエンジン全開でスタート。ショートキックを絡め、得意のオフロードパスでつなぎ一気に敵陣5mラインに侵入すると、前半4分にスクラムを押し込み、ペナルティトライで7-0と先制する。

勢いは止まらない。そのわずか4分後の前半8分、ニュージーランドは息も止まらぬ連続攻撃でカナダを中央に集め、SOリッチー・モウンガが誰もいない右大外にキックパス。そのボールをキャッチしたWTBジョーディー・バレットがそのままトライし、SOモウンガのコンバージョンキックも決まり14-0とリードを広げる。

応戦したカナダだが初戦のイタリア戦に続きボールが手につかない。ニュージーランドの守備の上がりが早いこともあるが、ハンドリングミスで自らチャンスを逃す。ただそれはニュージーランドも同じで、スティーブ・ハンセンHCは、「前後半ともにスタートで上手くボールをコントロールできた。お客さんは、なんであんなにポロポロとボールを落としたのかと思ったかもしれないけど、とても湿度が高かったので難しかった」と振り返った。それでも前半16分にはCTBソニービル・ウィリアムズの軽快なフットワークについていけずトライを許す。SOモウンガのゴールも決まり21-0となる。

ここからスコアが動かない拮抗した試合が続くが、前半35分にニュージーランドが敵陣深い位置まで攻め込み、CTBソニービル・ウィリアムズが前方へキックパス。そのボールに追いついたFBボーデン・バレットがボーナスポイントとなる4トライ目を決め、SOモウンガのゴール成功で28-0と大きく突き放し、前半を終える。

後半もニュージーランドは攻撃の手を緩めない。開始44秒、自陣から連続アタックでCTBソニービル・ウィリアムズが抜け出し、最後は大外を走るWTBリーコ・イオアネにつなぎトライ。ゴールも決まり35-0とする。

その後もニュージーランドは後半4分、6分とトライを決め、後半9分、16分には交替で入ったSHブラッド・ウェーバーの連続トライ。SOモウンガは全てのコンバージョンゴールを決め、63-0と大きく点差を広げる。

一矢報いたいカナダは最後まで諦めない。声援に後押しされ、最後まで走り抜いたがスコアを動かすことができず試合終了を迎えた。プレイヤー・オブ・ザ・マッチにはニュージーランドのSOモウンガが選出された。

試合後、ニュージーランドのキャプテン、No.8キアラン・リードは、「屋根があってとても湿度が高くてタフなゲームだったが、徐々にこのコンディションに慣れてきたと思う。(ハンセンHCも)特に前後半の入りには満足していると思う。だがボールを落としてしまうミスがあったのは確かで、このトリッキーなコンディションに対応することを考えないとならないだろう」と次の試合に向けて気を引き締めた。

また、プレイヤー・オブ・ザ・マッチのSOモウンガは「かなり初戦から間があったけれど、こんなに素晴らしい雰囲気のスタジアムでやれたよかった。お客さんも楽しんでくれていたら嬉しい」と笑顔でスタジアムを後にした。

カナダのキングスリー・ジョーンズHCは、「選手たちを誇りに思う。16分と36分と20分間で2度チャンスがあったがプレッシャーで決めることはできなかった。そして最後の20分間もカナダらしい戦いを見せてくれた。選手のパフォーマンスも誇りに思う。やはりオールブラックスの正確さ、スキル、スピードはさすがだ。特にボトムラインでの衝突は、スピードとパワーを同時に使ってくるのでディフェンスするのは至難だ」と話し、次の試合に向けて「ポジティブなところを捉えて修正して、さらに良くなるようにしたい」と前を向いた。

また、キャプテンのNo.8タイラー・アードロン「(ニュージーランドのような強い相手と戦うには)とにかくハードワークを続け、出来る限りの努力をするしかない。チームのスピリットを見せられたことはよかった。もう少しボールをキープしたかったが、相手の手に渡ってしまえば、取り戻すのはとても難しい」と振り返った。

勝ち点を9としたニュージーランドはイタリアに次いでプールB2位となり、中3日の10月6日(日)にナミビアと東京スタジアムで対戦する。また、2連敗となったカナダは8日(火)に神戸市御崎公園球技場で南アフリカと対戦する。

 

◆ニュージーランドのバレット3兄弟が揃って先発&全員トライ!

史上初の3連覇を目指すニュージーランドは、LOスコット、WTBジョーディー、FBのボーデンとバレット3兄弟が揃って先発に起用された。ワールドカップで3兄弟のスタメン入りは、1995年大会のブニポラ兄弟(トンガ)以来2組目、ニュージーランドでは初めてとなる。

試合1週間前の練習後には3兄弟で記者会見を行っており、スコットは3兄弟でワールドカップの代表になったことについて、「3人でワールドカップに出ようと冗談で言っていたことはあるが、3人ともメンバーになると思っていなかった。まだ実感が湧かない」と話した。

そして史上初の大会3連覇に挑むことについて、ボーデンは「いろいろなチームが優勝する可能性があるが、われわれは3連覇という大きなチャレンジを楽しみたい」と意気込みを語った。

この試合では前半8分にWTBジョーディーがチーム2つ目のトライを決め、前半35分にはFBボーデンがボーナスポイントとなる4トライ目を決めた。仕上げはLOスコット、後半4分にトライを決め3兄弟揃ってトライを決める離れ業を見せると、3人は最後までピッチに立ち、チームの勝利に貢献した。