Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由
北海道コンサドーレ札幌 ジェイ(3)

今年27シーズン目を迎えているJリーグは、現在、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになっている。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、日本での生活をどう感じているのか? 彼らの本音に迫る。

◆ ◆ ◆

 北海道コンサドーレ札幌のジェイ・ボスロイドには大きな勲章がある。それはフットボール発祥地イングランドの代表として、1試合に出場した経験だ。



自身のこれまでのキャリアについて語るジェイ

「間違いなく、僕のキャリアで最高の功績だ。家族や周りの人々がすごく喜んでくれたし、自分自身もとても誇らしかったよ」

 2010年、当時カーディフ・シティの一員としてチャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)でプレーしていた彼は、開幕から好調を維持し、秋には6試合連続ゴールを記録。イングランドでは2部リーグにも大きな関心が払われ、当時のファビオ・カペッロ監督はジェイが出場した試合に度々アシスタントコーチを派遣していた。

「ファビオ・カペッロの右腕だったフランコ・バルディーニが、僕の出場した試合に訪れていることは知っていた。そして幸運にも、彼が来た試合で毎回、ゴールを決めることができたんだ。フランスとの親善試合に向けた30人強の代表候補に入り、それだけでもうれしかった」

 下部リーグでプレーする選手に代表から声がかかることは少ない。ジェイは代表候補に入ったことを喜んではいたが、あまり気にせずに生活していたという。そしてボクシングの試合(デイビッド・ヘイ対オードリー・ハリソン)の観戦に出かけていたところ、イングランド・フットボール協会(FA)から携帯電話にテキストメッセージが送られてきた──あなたが代表に選ばれました、と。

「最初はイタズラだと思ったよ。代表選出をテキストメッセージで伝えるなんて知らなかったし、それが本当だと思えなかったからね(笑)。だから、誰ですか、と返信したら、『FAです』と。集合の場所や時間も、そのままテキストで送られてきたんだ。ちょっと信じられなかったよ!」

 翌日に指定されたホテルへ行くと、主将のスティーブン・ジェラードがチームメイト全員を紹介し、彼やリオ・ファーディナンドがいろいろと面倒を見てくれた。ただし、彼を選出したカペッロ監督には、圧倒されたという。

「想像よりも体つきは小さかった。でもオーラがにじみ出ていて、存在感は絶大だった。ミーティングの時に監督が入ってくると、それまでしゃべっていた選手たちも途端に口を閉じたよ。最初の食事の時、僕はサンダルで向かおうとしたんだけど、ジェラードがやってきて、『監督はそういう格好が好きじゃないから、すぐにスニーカーに履き替えてくるんだ』と教えてくれた。あのまま向かっていたら、厄介なことになっていたかもしれないね」

 フランスとのフレンドリーマッチでは、後半途中に投入され、記念すべき1キャップが刻まれた。28歳での代表初出場──それは、気持ちを入れ替えて取り組んできたことの成果だとジェイは語る。

「若いころからプロになることを志していたけど、そのころの僕の練習態度やモチベーションは、必ずしもすばらしかったわけではない。今考えると、自分の才能を無駄にしかけていた。僕もそうだったけど、若い選手はいつまでもフットボールを続けられると考えがちだ。でも実際は違う。プロのフットボーラーのキャリアは短い。

 だから日々を、その瞬間の一つひとつを最大限に生かさなければ、大成できないんだ。周りにもそういう選手はいて、手遅れになってしまうケースも少なくない。幸いにも僕は20代前半で気づき、そこから短期と長期の目標を明確にし、着実にステップを重ねたんだ。そして、プレミアリーグやイングランド代表に到達できた。代表選手になって、自分のやり方が間違っていなかったと証明されたので、余計にうれしかったよ」

 では着実に積み重ねてきたキャリアを通じて、ジェイがもっとも手を焼いた守備者たちは、誰なのだろうか。そう質問を向けると、彼はその長い日々を思い返すように、少し遠くを見つめるような目をした。


イングランド代表としてプレーしたジェイ。当時28歳だった

 photo by Press Association/AFLO

「パオロ・マルディーニ、リオ・ファーディナンド、真っ先に浮かぶのはこの2人だ。それからイバン・コルドバも厄介なDFだった。彼は大きくないのに、桁外れの運動能力を備えていて、ジャンプ力も凄まじく、空中戦にも強かったな」

 Jリーグで対戦した相手は、どうだろうか。

「昌子(源/トゥールーズ)だね。鹿島には常にタフなCBがいる印象だ。昌子が出て行ったあとも、鹿島の最終ラインは堅いね。それから浦和の槙野(智章)も強い。日本のDFも簡単な相手ではないよ」

 そう話すジェイは、自分と同じように、Jリーグに挑戦する外国籍選手がもっと増えたらいいと思っている。ただし、適切なモチベーションとコンディション、能力がなければ、通用する舞台ではないと語る。

「僕はここで成功したいと強く望んで、移籍を決断した。栄光のキャリアを誇る選手でも、余生を過ごすくらいの気持ちで成功できるほど、甘いリーグではない。(アンドレス・)イニエスタや(ダビド・)ビジャは真のワールドクラスだし、彼らがJリーグを甘く見ているとは思わないけど、彼らの存在だけで勝てるリーグではないことは、今シーズンの順位表を見ればわかるよね。だから、もし日本に来ることを考えている外国籍選手がいたら、正しい姿勢とモチベーション、強い意欲とともに来てもらいたいね」

ジェイ
Jay Bothroyd/1982年5月7日生まれ、イギリス・ロンドン出身。北海道コンサドーレ札幌所属のFW。アーセナルの育成組織で育ち、プロ入り後はイングランドのクラブを中心にプレー。イングランド代表歴1キャップを持つ。2015年より日本へ。コベントリー→ペルージャ→(イタリア)→ブラックバーン→チャールトン→ウォルバーハンプトン→ストーク・シティ→カーディフ・シティ→QPR→シェフィールド・ウェンズデー→ムアントン・ユナイテッド(タイ)→ジュビロ磐田(日本)