日本代表対アイルランド代表をはじめ、9月最後の週末も数々の印象的な試合が行われ、注目度が急上昇しているラグビーワールドカップ。9月30日(月)は日本代表と同じプールAの注目カード、スコットランド対サモアが行われた。 会場の神戸市御崎公園球技…

日本代表対アイルランド代表をはじめ、9月最後の週末も数々の印象的な試合が行われ、注目度が急上昇しているラグビーワールドカップ。9月30日(月)は日本代表と同じプールAの注目カード、スコットランド対サモアが行われた。

会場の神戸市御崎公園球技場には27,586人が詰めかけ、両国をはじめ世界各国から来日したサポーターが声援を送った。

スコットランドは9月22日、チーム開幕戦となったアイルランド戦(横浜)で27-3と一方的な敗北を喫し、相手にボーナスポイントまで与えた。28日に日本代表がアイルランドに勝ったこともあり、1試合消化時点で勝ち点0のスコットランドはサモア戦を含むプール戦残り3試合すべてで勝ち点5、つまり各4トライ以上を獲得する必要性が高まった。

FLハーミッシュ・ワトソンとSHアリ・プライスの負傷離脱の影響もある中、キャプテンのHOスチュアート・マキナリーを中心にLOジョニー・グレイ、SHグレイグ・レイドロー&SOフィン・ラッセルのハーフ団、WTBショーン・マイトランド、FBスチュアート・ホッグといった現状のベストメンバーが揃った

一方、サモアは9月24日、チーム第1戦のロシア戦で6トライを奪う猛攻でボーナスポイントを含む勝ち点5を獲得し、幸先のいいスタートを切った。連勝すれば決勝トーナメント進出が大きく近づくが、サモアもロシア戦でトライを決めるなど活躍したCTBレイ・リーロに対し危険なタックルによる3試合の出場停止処分が下り、今後への不安を残した。

それでもゲームキャプテンのNo.8ジャック・ラムを筆頭に、PRマイク・アラアラトア、FLのTJ・イオアネ、そして日本でもプレーしたSOトゥシ・ピシとFBティム・ナナイ=ウィリアムズなど各ポジションに名手を揃えた。ロシア戦で2トライずつを決めたCTBアラパティ・レイウア、WTBエド・フィドウも先発し、前回大会33-36で惜敗したスコットランドからの金星を狙った。

前半、先生に成功したのはスコットランドだった。8分、サモアのアーリータックルのペナルティでPGを選択し、SHレイドローがしっかり決めて3-0とリードする。

その後は互いに敵陣ゴール前まで攻めながらも、ミスやペナルティでお互いスコアできない時間帯が続いたが、前半29分、スコットランドはSOラッセルのキックパスを受けたWTBマイトランドがチーム初トライを決める。SHレイドローのゴールも決まり、スコアは10-0となる。

さらに前半33分、再び敵陣でアタックを仕掛けたスコットランドはSHレイドローがボールキャリーし、サモアの強力なタックルにも当たり負けせずインゴールまで突っ切りトライ。2トライ目を獲得し17-0とさらにリードを広げる。

前半37分にはFBホッグのDGが成功し3点を追加。20-0となったところで前半終了を迎えた。

後半、まだ得点のないサモアは少ないチャンスに懸けて攻めたものの、ノックオンなどミスが相次ぎ思うように展開できない。スコットランドもミスが続発したが、後半16分、マイボールラインアウトからモールでトライを狙うと、サモアのWTBフィドウにシンビン(10分間の一時的退出)が出るとともにスコットランドにペナルティトライが認められ、27-0と点差がさらに開く。

ボーナスポイント獲得のためにも4トライ目が欲しいスコットランドは、後半34分、WTBマイトランドが左ライン際を快走しインゴールへ突進する。その直前にサモアWTBフィドウがタッチに押し出したかに見えたが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の結果サモアWTBフィドウに2枚目のイエローカードが出され退場。そしてスコットランドに2本目のペナルティトライが認められ、スコアは34-0となる。

計4トライを決めたスコットランドがそのまま34-0でサモアから完封勝利を奪い、決勝トーナメント進出のために何としても必要だった勝ち点5を獲得、プールA3位に浮上した。いいところがないまま終わったサモアはスコットランドと同じ勝ち点5のままだが、得失点差で4位に順位を下げた。

スコットランドのグレガー・タウンゼンドHCは、勝ち点5を獲得したチームに及第点を与えた。

「前半から勢いをつけていこうとした。前半、特にディフェンスの部分は素晴らしかった。相手にプレッシャーをかけてキッキングゲームにした。セットピースも良かった。後半も悪くなかったし全体的に満足している。もう少し取れたはずのトライが取れなかったのは残念だが、ボーナスポイントが取れて良かった。ワールドカップなのでこのような戦いが必要だ」

さらに、次戦以降に向けてはこのように付け加えた。

「あと2試合ある。まずはロシアと戦わなければいけないし、その後短い間隔で日本と戦う。10日で2試合だ。まずは少し休養を与えて、そこから準備にかかりたい」

キャプテンのHOマキナリーはこのように試合を振り返り、サモアを褒め称つつ勝利の喜びを口にした。

「先週の試合(アイルランド戦)から(力を)取り戻す重要な試合だった。サモアはスタートがとてもよく、いつもタフな戦いになるが今回もそうだった。パフォーマンスに満足している。勝てて嬉しい」

サモアのスティーブ・ジャクソンHCは、

「大変よく戦ったが、スコットランドが強かった。まだトーナメントは続くし、2試合あるのでしっかりと準備して戦うだけだ」

と完敗を認め、視線を次に向けた。

スコットランドは、10月9日(水)ロシアと対戦し、そこから中3日後の13日(日)日本代表と対戦する。まずはロシア戦で再び勝ち点5をマークする必要があり、そこからわずかな期間でコンディションを調整することが求められる。

サモアは10月5日(土)に日本代表と対戦し、ここにすべてをぶつけることになる。日本代表もこの一戦で勝ち点5を得られるかどうかが決勝トーナメント進出への鍵となりそうだ。

◆最優秀選手はスコットランドLOジョニー・グレイ! 攻守に泥臭く貢献

プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたのはスコットランドLOジョニー・グレイだった。前回ワールドカップでは人気選手で同じLOの兄リッチー・グレイとともにプレーし、2大会目の今回もチームに欠かせない活躍ぶりを見せている。

試合後は、

「とてもタフな試合だった。いや、タフな1週間だった。先週がっかりさせてしまったのに変わらぬファンの支えに感謝している。サモアはやはりフィジカルが強かった。勝てて嬉しい。前に進んでいこうと思う」

とコメントし、アイルランド大敗後も応援を続けたサポーターに謝意を示し、前を向いた。

また、日本対アイルランドを見たことを明かし、

「このトーナメントはもはやどのチームにもチャンスがある。今日は結果を出せたので、次のロシア戦に向けて準備したい」

と意気込みを新たにした。

セットプレーだけでなくディフェンスなどでも泥臭く働く仕事人の活躍は、今後のスコットランドの浮上には欠かせない。