負ければ優勝争いから脱落する明大3回戦。同点で迎えた9回2死満塁、一本出れば勝ち越しの場面。打順はへと回った。絶対に負けられない、森下暢仁主将(明大4年)との真っ向勝負。思い切って直球一本にしぼり、狙いをすます。2球目はその直球が来たが、捉え損ねファウルにしてしまう。これで2ストライクに追い込まれた。これまでの小藤であれば次の球を当てにいき、凡退していただろう。しかし、この日は違った。5球目、再び来た直球をしっかりと捉えると、これが走者一掃の適時二塁打に。苦しんだ末の一打。「三振を怖がって当てにいってしまう」。2日前の同カード1回戦後、そんな話をしていた小藤はもうどこにもいなかった。


明大3回戦、走者一掃勝ち越しの適時二塁打を放つ小藤

 今秋開幕からここまで、小藤にとっては悪夢のような展開だった。夏季オープン戦では誰よりも好調だったが、開幕すると一転。軒並み不調な早大野手陣の中でも一、二を争うほどの不振を極めた。チームは開幕4戦目にしてようやく得点し、光が差したが、小藤はその日も無安打。4試合を終えて13打数1安打と、打率は1割を切っていた。


明大1回戦、森下の前に空振り三振に倒れうつむく小藤

 それでも守備力を買われスタメンマスクをかぶり続ける小藤だったが、この日の試合は精彩を欠いていた。4回1死二、三塁。一ゴロに打ち取ったはずが、自らの打撃妨害でピンチを広げてしまう。ここでエースが登板。気迫の投球で次打者を空振り三振に仕留めたものの、その球をなんと捕逸。最悪のかたちで同点に追い付かれてしまったのだ。さらに悪循環は続く。7回、2死一、三塁という勝ち越しのチャンスで小藤は打席に立ったが、結果は二邪飛。何もかもがうまくいかない。それでも、気持ちは切らさなかった。7回、チャンスで凡退した後、「また俺に回してくれ」。そう自分より前を打つ仲間に告げた。そしてチャンスは再び回ってくる。

 最終回、2死一、二塁。「絶対に2アウト満塁で俺に回してくれ」。打席に立つ後輩を小藤はそんな思いでネクストバッターズサークルから見ていた。その願いはかない、2死満塁で小藤へ。「絶対に打つ」。そう強く思い、打席に立った。長年捕手を務めてきた勘で、直球勝負だと読んだ。森下との絶対に譲れない大勝負。5球目を外角直球を振り抜くと、走者一掃の適時二塁打に。抱き合って喜ぶチームメートへ向け、いつもの笑顔で塁上から両拳を空に突き上げた。


二塁ベース上で仲間の祝福に応える小藤

 今秋開幕前、海野隆司(東海大4年)や郡司裕也(慶大4年)といった同世代の有力捕手に勝っているところは、「正直ない」とこぼしていた。いつも自己評価の低い小藤だが、二人に負けず劣らずのポテンシャルを秘めていることは確かだ。大学ラストシーズンのこの秋、それを開花させることはできるだろうか。誰にも負けない強みを手にできた時、真の意味で強肩強打の小藤が誕生する。

(記事 金澤麻由)

コメント

小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)

――試合を終えた感想は

とりあえず勝って勝ち点を取って、優勝への望みをつなぐことができたので良かったです。

――苦しんだ中での一本でした

同点に追い付かれた時も自分のパスボールで点をあげてしまって。(適時打を放った)前の打席でもチャンスで凡退してしまって。2アウト一、二塁で打席は金子(銀佑、教3=東京・早実)だったんですけど、「絶対に2アウト満塁で俺に回してくれ」という思いでネクストで待っていました。2ストライクからだったんですけど、しっかりタイムリー打つことができて良かったです。

――強気で打席に入れたと

前の打席で凡退した後、加藤(雅樹主将、社4=東京・早実)と金子には、「また俺に回してくれ」と。絶対に打つという強い気持ちで臨みました。

――捕逸したのはチェンジアップでしょうか

そうですね。(ワンバウンドは)していないんですけど、自分がボールを見切るのが早くて逸らしてしまいました。あそこはピンチでエース(早川隆久、スポ3=千葉・木更津総合)が出てきて、気持ちも十分に入っていたんですけど、自分がやらかしてしまったので早川には本当に申し訳ないです。その前の内山(竣、4年)の打席でも自分が打撃妨害してしまって。打ち取った打球だったので、そこからピンチ招いて追い付かれてしまいました。

――打った球は真っすぐ。森下投手も直球でぐいぐい押してきましたが、狙い球だったのでしょうか

これはキャッチャーをずっとやってきての勘なんですけど、打席入った時に森下(暢仁、4年)の自分に向かってくる感じから、真っすぐ勝負かなと思って。まあ変化球待っていてもそう簡単に打てるピッチャーではないので、思い切って真っすぐ一本に絞って。本当は2球目の真っすぐで決めたかったんですけどファウルになってしまって。それで追い込まれてからも、集中して真っすぐ一本だけを待っていました。

――4年生が徐々に状態を上げてきました

監督さんや部長さんからも「4年生はもっと楽にやった方がいい」と言われました。「4年生はこれが最後だ」と言われていたので、本当に気楽に楽しもうと思ってやっていました。

――次戦は東大戦です

ここからは一戦も落とせないので、一戦一戦、目の前の試合に集中して。その結果が(これからの)6連勝につながればいいなと思うので、まずは集中して目の前の試合に勝っていきたいと思います。