リオネル・メッシ(バルセロナ)、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)の2人は、一時代を謳歌してきた。2008年から17年まで10年間に亘って、バロンドールを1位と2位で分け合い、それぞれが5回ずつ受賞している。2人がプレーしたバル…
リオネル・メッシ(バルセロナ)、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)の2人は、一時代を謳歌してきた。2008年から17年まで10年間に亘って、バロンドールを1位と2位で分け合い、それぞれが5回ずつ受賞している。2人がプレーしたバルサとレアル・マドリードは、チャンピオンズリーグ(CL)で覇権を争ってきた。
しかし、2018年はバロンドールをルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)が受賞。一方、CLは群雄割拠で、優勝したリバプールを筆頭にプレミアリーグ勢が台頭を見せている。欧州の勢力図は、大きく動きつつある。
そして時代の変化を象徴するように、今シーズンはCLにデビューした3人のルーキーが躍動を見せている。
チャンピオンズリーグでデビューを果たしたジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリード)
ポルトガルの新星、ジョアン・フェリックス(19歳)はアトレティコ・マドリードの選手として、初のCLの舞台に立っている。対戦相手のユベントスには、奇しくも”先輩”ロナウドがいた。ポルトガル代表として、ともにプレーしている同士だ。
序盤、J・フェリックスはたったひとりでドリブルで切り込むと、4人を翻弄しながら、シュートまで持ち込んでいる。挨拶代わりのプレーとしては十分だった。華奢な体をしているが、しなやかで倒れない。相手のタックルをひらりとかわし、すり抜け、逆を取れる。なによりシュートセンスが出色。そして相手が「ここはシュート」とヤマを張ると、決定的なドリブル、パスを選択することで、ゴールの確率をシュートよりも上げる。
「ルイ・コスタとジョアン・ピントのハイブリッド」
ポルトガル国内では、稀代のパサーとポルトガル黄金世代のストライカーを例に出して語られるが、圧倒的なゴールの才覚はロナウドに近いかもしれない。
もっとも、ユベントス戦は手練手管のイタリアのディフェンスによって、次第に存在を消されている。試合は2-2でドロー。甘さに苦味が混じったスタートになったが、始まりとしては悪くない。
ディナモ・ザグレブのスペイン人アタッカー、ダニ・オルモ(21歳)も、センセーションを巻き起こす予感がある。
CLでは、セリエAのアタランタ戦で先発デビューを飾っている。開始早々、ドリブルでエリア内まで持ち込み、相手を撹乱。鋭いステップで1人を地べたに這いつくばらせ、左足でシュート。その攻撃の流れで先制点が生まれた。
同じく前半、左サイドでパスを受けると、相手を引き寄せてからのパスで、完全に裏を崩す。その折り返しのパスが2点目につながった。前半の終盤には、自陣で相手を背負いながらトラップだけで置き去りにし、ドリブルで攻め上がった。敵陣、左サイドで一度、自分にDFを集めた刹那、インサイドでフリーになった味方にパスし、3点目が生まれた(結果は4-0で勝利)。
落ち着いた様子で起点を作り、リーダーの風格さえ漂っていた。
CL本戦への出場は初めてのオルモだが、実は昨シーズンは最終プレーオフまで勝ち進みながら敗れている。今シーズンも予選を勝ち上がって、出場の権利を得た。ここまで5試合に出場し、3得点3アシストと、すでにチームを牽引している。
オルモはバルサの下部組織で育ったが、16歳のときにクロアチアに渡っている。プロ選手として出場機会を求めた結果で、クロアチアリーグの2部に在籍するザグレブのセカンドチームで2年間経験を積み、3年目からポジションを得た。昨シーズンはリーグ最優秀選手賞を受賞。若くしてプロとしてのキャリアを重ねてきた。
今シーズンは満を持してのCL挑戦で、オルモは一気にスターダムを駆け上がるかもしれない。
そして最後のひとりは、バルサのギニア・ビサウ人FW、アンス・ファティ(16歳)だ。
「年齢よりもずっと成熟している」
バルサのエルネスト・バルベルデ監督がそう語るように、16歳には見えない。今季、トップチームでリーグ戦デビューを果たすと、8月31日のオサスナ戦で、バルサ史上最年少得点を記録。ファーポストでクロスを呼び込み、豪快なジャンプからヘディングで叩き込んだ。
驚くべきは、次のバレンシア戦だった。クロスに合わせて再びゴール。さらに、左サイドを走るだけでDF1人を無力化すると、その後の1対1も制し、得点をアシストした。左右どちらのサイドでも、中に切り込むことも、縦を突破することも、臨機応変にプレーできる。また、メッシと同様、中央でプレーメイクするのも得意とする。ヘディングも強く、オールマイティな選手だ。
しかし、CLデビューとなったボルシア・ドルトムント戦では苦戦した。右サイドでスタートするが、中に入る動きを読まれてしまう。実力差、経験差が出た。ただし、前半途中から左サイドにポジションを変えると、鋭い突破も見せ、アドバンテージを作った。後半は体力的に落ち、メッシと交代したが、非凡さは証明した(結果は0-0)。
ファティはスペイン国籍を取得することが決定。10月開催のU―17ワールドカップに出場の可能性もある。
3人のルーキーは、新時代の到来を告げるか。10月1日、アトレティコはロコモティフ・モスクワと、ザグレブはマンチェスター・シティと、ともにアウェーで対戦。2日には、バルサがホームでインテルと一戦を交える。