文=丸山素行 写真=FIBA.com本橋が最終クォーターに躍動、3点差の接戦を制すアジアカップ決勝戦、日本はアジア最大のライバル、中国と対戦した。先発は町田瑠唯、赤穂ひまわり、宮澤夕貴、髙田真希、渡嘉敷来夢の5人。序盤は中国の高さを警戒しす…

文=丸山素行 写真=FIBA.com

本橋が最終クォーターに躍動、3点差の接戦を制す

アジアカップ決勝戦、日本はアジア最大のライバル、中国と対戦した。

先発は町田瑠唯、赤穂ひまわり、宮澤夕貴、髙田真希、渡嘉敷来夢の5人。序盤は中国の高さを警戒しすぎてシュートが決まらず、ボールも手につかずにターンオーバーを連発するなど、リズムに乗れない。それでも、途中出場の本橋菜子が3点プレーとなるバスケット・カウントを決めたのを機に立て直し、17-19で第1クォーターを終えた。

だが第2クォーターに入ると平均187cm、2m超えのセンターが2人いる中国の高さに苦戦する。ドライブでペイントエリアに侵入してもセンターにブロックを浴び、シュートチェックを気にして手元を狂わされた。日本も集中したディフェンスを披露し我慢を続けるが、トランジションを繰り出そうとするも、ガードのプッシュを警戒され速攻が出なかった。6分半で3点しか奪えず、10点のビハインドを背負った。

主導権が握れず重い雰囲気が漂っていたが、シューターの林咲希がこの空気を一変させる。ディフェンスを振り切るために動き続けた林は、わずかなスペースから3ポイントシュートを放ち、3本すべてを成功させた。これで一気に点差を縮めると、不調だった宮澤も3ポイントシュートを沈めて点差を詰め、最大のピンチを切り抜けた。

一人ひとりが役割を全うしたチームバスケの勝利

追いかける展開が続いていた日本だが、後半に入るとこれまでの我慢が実る。センターへのダブルチームとその後のローテーションなど、高さの不利を運動量でカバーし、フィジカルなディフェンスでゴールを死守した。そして、残り5分40秒、タフショットを打たせてアウトナンバーを作ると、髙田がオープンな状態から3ポイントシュートを沈め、44-42と逆転に成功した。

日本が3点をリードして迎えた最終クォーター。逆転まで持って行った第3クォーターに引っ張った主力を休ませるために起用した町田瑠唯、長岡萌映子が短い時間でも試合のリズムをしっかりつかんで自分のプレーを披露。町田が速攻から得点するなど互角の戦いを演じ、主力を休ませながらリードを保って時間を進めた。

互いに主力に戻した勝負の時間帯で本橋が本領を発揮する。中国の選手のフットワークが疲労で鈍る中、本橋は渡嘉敷や髙田とのピックを使って主体的に攻めかける。相手がスイッチした際はセンターとのスピードのミスマッチを使い、ドライブや3ポイントシュートで得点を重ねた。また、スイッチせずにディフェンスが追いかけてくる際はプルアップ、そして髙田や渡嘉敷のシュートをアシストするなど、ほとんどの得点に絡んだ。

ファウルゲームに持ち込んだ中国に1ポゼッション差まで詰め寄られた残り10秒、渡嘉敷がフリースローを落として最後のチャンスを与えてしまうが、同点を狙った中国の3ポイントシュートが外れて71-68で逃げ切り、アジアカップ4連覇を達成した。

大会MVPは本橋「信じてプレーしました」

本橋はともにゲームハイとなる24得点8アシストを記録し、大会MVPに輝いた。「昨日はすごく積極的に攻めて結果が出せました。それが自分の役割だし、それでチームに貢献したいと思うので、積極的に攻めました」と本橋は言う。「ターンオーバーがあったり、最初の方は良い流れを持ってこれなかった場面もあったんですけど、積極的に最後まで攻め続けることをしました。トムさんが自分たちのバスケットを信じてやり抜けば絶対に勝てると言っていたので、チームも自分も信じてプレーしました」

2番の赤穂と3番の宮澤は、ともに2つのオフェンスリバウンドを含む6リバウンド1ブロックを記録した。リバウンドで36-37と互角に渡り合い、セカンドチャンスポイントで14-9と上回ったことは、トム・ホーバスが推し進めてきたサイズアップが実を結んだと言える。

両チーム最長となる、38分間コートに立ち続けた髙田は14得点9リバウンドとチームを支えた。大黒柱の渡嘉敷は自分よりも10cm以上高い中国の強力センター陣とマッチアップし、身体を張ったディフェンスでチームの勝利に大きく貢献。本橋や宮澤、林と若手が派手な活躍で大会の主役を演じたが、髙田と渡嘉敷、さらには長岡の経験豊富なインサイド陣が安定したディフェンスを続けたことも見逃せない。

前人未到のアジアカップ4連覇を達成した日本。東京オリンピックでの金メダル獲得という大いなる目標は現実味を増した。