全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)第6戦は29日、岡山国際サーキットで決勝日を迎え、近藤真彦監督率いるKONDOレーシングの山下健太がSFでの自身初優勝を飾った。2位は中嶋一貴。3位には新人のハリソン・ニューウェイが入り、初表彰台を獲得している。

天候微妙といわれていた週末だが、予選に続きレースもドライコンディションとなった。ドライ時のSF決勝レースでは、ソフトとミディアム両方のタイヤを使う義務(タイヤ交換義務)が生じるが、今回は「先頭車両が10周回目の第1セーフティカーラインを交差した時点から先頭車両が最終周回に入るまで」にタイヤ交換を完了しなければならない規則的措置がとられた。給油を含めたピット戦略は従来よりも幅が狭まる可能性も考えられ、それがレース展開に新たな影響を及ぼすかもしれない状況下で68周(250km)の戦いが始まる。

ソフトとミディアムのラップタイム差が大きく、ソフトでも充分長く走れる背景から、各陣営はあまり長くミディアムで走りたくはない。それをうまくピット戦略に反映して臨機応変に対応することが勝敗を左右するわけだが、そこには運も当然、介在する。そして展開を大きく左右する出来事が序盤8周目に起きる。

コースアウトしてストップしたマシンがあり、セーフティカー(SC)導入に。そして必然的に、このSC導入中に前述の“義務消化可能”な周回に入ることになる。ここで運、不運が交錯した。

ミディアムでスタートしたマシンはここでピットインしてソフトに履きかえることで、基本的にはそのままゴールまで行ける。だが、ソフトでスタートしたマシンはここでミディアムを履くと、それで長く走らねばならないからステイアウトが基本線になる(この先にピットインが必要)。そこで、ソフト組のなかにはSC走行中に2周連続ピットインしてミディアムを1周で捨てる戦略を取るところもあった。

この段階でSC先導のスロー走行隊列内のおおまかな序列は、前方に「ソフト発進のステイアウト組」、中団に「ミディアム発進からソフトに換えた組」、後方に「ソフト発進からミディアムに換えてそれをすぐ捨ててソフトに戻した組」となった。

見た目の上位を走るステイアウト組は展開的に不利。最も利を得たのは中団の組である。その先頭に位置していたのが、#3 山下健太(KONDO RACING/トヨタ)だった。その後も“中団組”の優位を崩すような展開変化はなく、レースは規定周回に2周足りずに“タイムアップ”を迎えるのだが、#3 山下は実質の先頭といっていいポジションをSC明け以降も守り続け、SFでの自身初優勝を飾った。昨季のチーム部門チャンピオンであるKONDOレーシングにとっては今季初勝利。

#3 山下はSCのタイミングを「スーパーいいタイミングでした。今日は『もってるな』と思いました」と振り返ったが、決して運が良かっただけではない。予選2位という結果以上の充実した取り組みと成果が、彼を含む今回のチームにあったからこそで、そういうベースの好調さがなければ、今のSFでチャンスをものにすることはできない。

今季が3年目の#3 山下は開幕前のテストでは最も好調だったといっていい選手で、自身ものちに「無双になれるかな、と思ったくらいでした」と冗談交じりに振り返っていたほど。ただ、開幕後はもうひとつの結果が続いていた。また、彼自身「参戦初年度からポールを獲ったりしていたので、もっと早く勝てるだろう、と考えていたこともありました。でも、やはり甘くなかったです」とも述懐する。

それだけに「嬉しいよりも、ホッとしましたね」というのが山下の勝利直後の実感。これは近藤監督も同じだったようで、「速いケンタをようやく勝たせてあげられて、嬉しいというよりはホッとしました」。

開幕前は本命ともいえた存在の#3 山下がついに勝って、これで今季は6戦して6人のウイナー誕生となっている。

今回の決勝2位は#36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)。2012&14年のチャンピオンは、これが今季初表彰台となった。3位には新人の#51 H.ニューウェイ(B-Max Racing with motopark/ホンダ)。彼の父はエイドリアン・ニューウェイ、F1界で空力の鬼才といわれる人物だが、この週末はF1ロシアGPではなくSF岡山戦に登場、息子のSF初表彰台を見届けることになった。

決勝4~8位は以下の通り。

4位 #64 A.パロウ(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)
5位 #50 L.アウアー(B-Max Racing with motopark/ホンダ)
6位 #15 P.オワード(TEAM MUGEN/ホンダ)
7位 #1 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
8位 #8 大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS/トヨタ)

ポール発進の#20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)は展開に恵まれなかったこともあり、見た目の先頭は長く走っていたが最終結果12位。#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)は5番手で最終ラップに入ったが、他車との交錯がありストップ(18位完走扱い)。選手権リーダーとしてこのレースを迎えていた#37 N.キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)は10位。

これらの結果、最終戦を前にドライバーズチャンピオン獲得の可能性を有する者は下記の5人に絞られた(以下は全て手元の計算と理解に基づく)。

29点/#1 山本
28点/#37 キャシディ
25点/#64 パロウ
21点/#3 山下
19点/#18 可夢偉

最終戦(1レース制)には優勝者ボーナスポイント「+3」があるため、ポール獲得の1点と優勝の13点でトータル14点獲得できる(決勝2位は8点、3~8位に6~1点)。山本はもちろん、キャシディ、パロウまでは自力王座の権利あり。山下と可夢偉は他力が必要だが、彼らにもチャンスは残っている。

最終戦は今年も鈴鹿サーキットが舞台、10月26~27日に開催される。昨年は最終戦の最終ラップまで王座と優勝の行方が分からない好勝負の末に山本尚貴がキャシディとの戦いを制すという、感動的なフィナーレだった。2019年の“日本一速い男”の座をかけたファイナルバトルは、どういう結末を迎えるのだろうか。1カ月後が今から楽しみだ。

なお、今回のSF岡山戦決勝日には、来季2020年から発足する2つの“F3級シリーズ”のマシンがデモランを披露している。ひとつは、現在の全日本F3選手権が名称変更等をして発足するかたちの「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権」のマシン、ダラーラ320。もうひとつは、現在のFIAフォーミュラレースのピラミッドに準ずるかたちで新発足予定の「フォーミュラ・リージョナル・ジャパン・チャンピオンシップ(仮称)」のマシン、童夢F111/3。国際的なF3級カテゴリー再編の波のなかで、両シリーズは来季の船出に向けて準備を進めている。