写真:中国卓球はなぜ強いのか、村上恭和編/作成:ラリーズ編集部

「なぜ中国は卓球が強いのか?」

そんな卓球の原点とも言える質問を専門家たちにぶつけ、中国越えのヒントを得ようという本企画。

第5回となる今回は、Tリーグ・日本生命レッドエルフの村上恭和総監督に中国卓球の強さの源について尋ねた。日本女子代表監督を務め、2012年ロンドン、2016年リオ五輪と2大会連続メダル獲得に導いた名将・村上恭和氏の考える中国卓球の強さとは。

日本は東京五輪で中国越えなるか




写真:リオ五輪団体で銅メダルを獲得した福原愛さん、石川佳純、伊藤美誠/撮影:YUTAKA/アフロスポーツ

――村上代表監督体制でリオでメダル獲得されてから3年が経ちました。来年の東京大会についてはどのような見方をされていますか?
村上:女子団体のメダルは固いでしょうね。

中国は強いですがドイツは若手が育っていない。前回のベテランメンバーが4年たってもっとベテランになっている。他の国も今中国が補強させない、つまり若い帰化選手を行かせない。

ですから、女子は中国と日本。あと韓国が世界選手権の時みたいに北朝鮮と合同チーム組むかぐらい。そうなると北朝鮮にカットマンが1人いるのでまあまあの脅威です。それでも実力的には日本の2位以上は固い。

――男子はどうでしょうか?
村上:男子はわからないですね。台湾も林昀儒(リンインジュ)が強くなっている。韓国は元々強かったし、ドイツもいてるので…。だから組み合わせ次第ですね。

――新種目のミックスダブルスは?
村上:ミックスはやっぱり今の戦いを見てたら、許昕(シュシン・中国)に出てこられたらしんどいですね。女子は後ろからものすごい威力のボールが来るのを体験してないからやられちゃう。それから韓国もミックスが強い。

ペアの予想はまだ出来ないですね。水谷(隼)は前ミックス向きじゃなかったのが、前でタッチするようになったでしょ?それでミックスもできるようになりました。このまま行けば水谷、(伊藤)美誠じゃない?でも張本を軸にする考えもある。

――シングルスはいかがでしょうか?
村上:シングルスは男女とも2人の代表が本当にわからない。でも誰が代表になっても、銅メダル以上の可能性がある。

出てくる中国選手2人ともに勝てと言うと結構しんどいけど、今の日本の勢いであれば1人だったら勝つかもしれない。来年が楽しみですね。

中国卓球の強さの源泉とは




写真:リオ五輪で日本女子チームを率いた村上監督/撮影:Enrico Calderoni/アフロスポーツ

――やはり中国が立ちはだかることが予想されます。村上監督が考える中国の強さの源をお聞かせください。
村上恭和総監督(以下、村上):まずは中国の環境ですね。全員が競技者というわけではないですが、中国は卓球人口、つまり卓球に関心のある人が約8,500万人と言われてるんですよ。一方、日本は約300万人です。

卓球への関心が高い国は、卓球のレベルも高くなるということです。卓球人口の多さが強化に直接結び付くかと言うと、そうではないですが。

――なるほど。中国は14億人中8,500万人、国民の卓球への関心は人口比で日本の3倍ほどです。
村上:ラグビーでもそうでしょ?ニュージーランドも国民のラグビーへの関心が高いんです。人口が多くても関心が高くなかったらダメなんですよ(笑)。そういう意味では中国は断トツですね。

――中国では卓球は国技ですし、卓球に関心のある層が多いんですね。
村上:そうです。そうなると当然プロの指導者も多いし、プロになろうと上を目指す小学生も多いです。また、プロが多いということは、プロ同士が切磋琢磨してレベルも上がりますよね。指導技術のレベルも同様です。その全ての差が中国卓球の強さですね。

日本卓球が中国卓球に勝つために




写真:村上監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

――では、その中国を日本が倒すにはどうすればいいんでしょうか?
村上:少数精鋭ですね。JOCエリートアカデミーやミキハウス、うち(日本生命)もやっているように、全国の小学生を集めてその中のトップを集中的に訓練する。そこからオリンピック代表を出してるわけですよ。あと大事なのは“思想”です。

――“思想”とはどういうものでしょうか?
村上:卓球を続けられるエネルギーを注入することです。卓球って面白いんだよ、命懸けてやるんだよ。そういう想いを子どもたちに、あるいは父兄に伝えられるかが重要です。

――その“思想”をどのように伝えているのでしょうか?
村上:卓球面白いよ、お金持ちになれるよ、有名になれるよ、テレビに出られるよ。こんな感じですよ(笑)。これが一番です。

――Tリーグも誕生し、実際にそういう卓球界へ徐々に近づいてきていますね。ありがとうございました。

※取材日:8月31日
文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)