ラグビーワールドカップは9月26日(木)までに全20チームが1試合以上を戦い、ようやく一巡した。28日(土)、日本代表はチーム2戦目となるアイルランド代表戦に臨んだ。 世界ランキング9位(9月26日現在)の日本代表に対しアイルランドは同2位…

ラグビーワールドカップは9月26日(木)までに全20チームが1試合以上を戦い、ようやく一巡した。28日(土)、日本代表はチーム2戦目となるアイルランド代表戦に臨んだ。

世界ランキング9位(9月26日現在)の日本代表に対しアイルランドは同2位の強豪で、今大会の優勝候補の一角だ。プールA屈指の難敵をどのように攻略するか、日本代表の戦いぶりに注目が集まった。静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムには47,813人もの大観衆が詰めかけた。

日本代表はキャプテンのFLリーチ マイケルをリザーブに下げ、同じくFLのピーター・ラブスカフニがゲームキャプテンを拝命。その他、FWはPR稲垣啓太&具智元、HO堀江翔太、LOトンプソン ルーク、FL姫野和樹、そしてケガから復帰し今大会初の出番となったNO8アマナキ・レレィ・マフィらが先発した。

BKはSH流大、SO田村優のロシア戦と同じハーフ団を筆頭に、CTB中村亮土&ラファエレ ティモシー、WTBレメキ ロマノ ラヴァ(試合直前までリザーブ。ウィリアム・トゥポウのケガで先発に)&松島幸太朗も固定。FBはロシア戦で途中出場した山中亮平が入り、ワールドカップ初先発の座を手にした。リザーブには負傷からカムバックしたWTB福岡堅樹らが入った。

試合の2日前、日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はメンバー選考の意図について、

「リーチはキャプテンですが、我々が目標を達成するためには経験値の高い、インパクトのあるリザーブが必要です。他国も経験値の高い選手が控えています。前回の試合のように試合が乱れたらSH田中史朗とLOトンプソンと経験値の高い選手が入って、チームを落ち着かせました。そういった理由でリーチを控えにしました。彼は必ず、いいインパクト与えてくれる」

と説明し、FLリーチだけでなくSH田中といった経験ある選手が試合途中から入る効果を期待した。

この4年でニュージーランドに2度勝っているアイルランドは、チームの中心選手であり昨年の年間最優秀選手SOジョナサン・セクストンが欠場。

しかし、キャプテンのHOローリー・ベストを中心に、PRキアン・ヒーリー、FLピーター・オマホニー、SHコナー・マレー、CTBギャリー・リングローズ、WTBジェイコブ・ストックデール&キース・アールズ、FBロブ・カーニーといった経験値の高い選手が並んだ。先発SOにはこの試合が9キャップ目となったジャック・カーティが入った。

前半、先制のチャンスをつかんだのは日本代表だった。アイルランドのオーバーザトップから、日本代表はPGを選択し、6分SO田村が狙ったもののボールは左にそれ、先制機を逃してしまう。

すると13分、今度はアイルランドが日本代表ゴール前まで攻め入ると、SOカーティが右前方へキックパス。日本代表FB山中とハイボールを競ったアイルランドCTBリングローズにトライを決められ、3-5と逆転を許す。

さらに20分、アイルランドは再び日本代表ゴール前でSOカーティが前方へショートパントを蹴り上げ、ハイボール争いからFBカーニーにトライを決められて3-10。SOカーティのゴール成功で3-12とリードを広げられる。

それでも日本代表はボールを継続してアタックし、敵陣でペナルティを得ると、33分、39分とSO田村が落ち着いてPGを決めて9-12としたところで前半終了を迎える。

後半、引き続きチャンスを作った日本代表だが、13分のSO田村のPGは決まらず、3点差のまま試合が進む。しかしアイルランドのアタックにダブルタックルで耐え抜き相手に得点を許さず、9-12のまま後半中盤を迎える。

後半18分、日本代表は敵陣でのマイボールスクラムからアタックを仕掛け、CTB中村、WTBレメキらがゲイン。ゴール前のラックから途中出場のSH田中、CTB中村、CTBラファエレ、そして同じく途中出場のWTB福岡までパスがつながり、左大外から回り込んでWTB福岡が値千金のトライ! SO田村のゴールも成功し、日本代表がついに16-12と逆転する。

後半31分にはSO田村がPGを追加し、19-12とリードを7点に広げる。その後もWTB福岡がインターセプトからビッグゲインを見せるなどチャンスを作るなど落ち着いた試合運びで最後まで反撃を許さず、そのまま19-12のまま日本代表が歴史的勝利を挙げた。アイルランドとの対戦成績は過去0勝9敗(互いにテストマッチと認めた試合は0勝7敗)だったが、ワールドカップ3度目の今回の対戦が日本代表にとっての初勝利となった。

前回大会で南アフリカを破って以来、再び世界のラグビー史に名を刻んだ日本代表は、ロシア戦に続いての連勝で総勝ち点を9として、プールAで堂々の首位に立った。アイルランドは7点差での敗戦によりボーナスポイントを獲得、総勝ち点を6としたが順位を2位に下げた。

試合後、日本代表のジョセフHCは選手たちを称えた。

「結果に鳥肌が立っている。選手たちを誇りに思う。ずっと長い間プランを持って練習も行ってきた。長い時間、私たちはこの試合のことを考えてきた。とにかく注意深く、慎重に、そして過信せずにいこうと思った。信念を持って、やりたかったゲームプランを遂行できた。コーチングスタッフ全員をずっと信頼してきた。まだ2試合あるが、今夜だけは選手たちを喜びに浸らせたい」

ビッグマッチでゲームキャプテンという重責を担った日本代表FLピーター・ラブスカフニも喜びを隠さなかった。

「とても嬉しい。言葉にならない。選手全員を誇りに思う。チームの努力が結実して満足している。ブライトンの奇跡は素晴らしい試合だったが、私たちはまた違うゴールを持ってこの大会に臨んでいる。来てくれてサポートしてくれた皆さんにも感謝したい。皆さんの声は届いていました。特にラスト8分ははっきり聴こえていました。皆さんは素晴らしい。ありがとう」

敗軍の将、アイルランドのジョー・シュミットHCは試合展開を悔やみつつ、「前半、最初の20分は良かった。3-12になったところで止まってしまった。ペナルティが多かった。日本に感服せざるを得ない。何と勇猛で素晴らしい努力をしてきたのだろう。こうなることは潜在的にわかっていたのに残念だ。 日本が素晴らしい。おめでとう」と日本代表を称えた。

日本代表は3連勝をかけて、そして現実味を帯びてきた決勝トーナメント初進出に向けて、10月5日(土)のサモア戦(豊田スタジアム)に臨む。アイルランドは10月3日(木)のロシア戦で巻き返しを図る。

◇プレイヤー・オブ・ザ・マッチのHO堀江翔太、セットプレーにパスにキックに大車輪の活躍!

日本代表を長年牽引してきたベテランHO堀江翔太が、この歴史的な一戦のプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。まず「皆さんの声援のおかげで、最後の1センチ、最後の1ミリを走ることができました」と大歓声を送ってくれた観客に感謝を伝えた。

そして、この試合6本中6本、マイボールで成功させたスクラムに関しては、「この試合のためにずっと何年も準備してきた。だから勝てて嬉しい。(スクラムコーチの長谷川)慎さんのスクラムをやっていれば勝てると信じてきた」と胸を張った。

HOは途中交替が通例ではあるが、この試合は80分間「2番」を背負い続け、スクラム、ラインアウトはもちろん、パスのつなぎ役、キックパス、そして献身的なディフェンスでアイルランドにダメージを与え続けた。

実際、マイボールスクラムは6回中6回成功。ラインアウトは8回中成功6回と成功率は75%にとどまったが、要所要所でしっかり決める確実性の高さを見せた。

試合後、HO堀江はこのようにコメントした。

「この試合のためにずっと何年も準備してきた。だから勝てて嬉しい。慎さん(長谷川慎スクラムコーチ)のスクラムをやっていれば勝てると信じてきた。まだ次のゲームがある」

常に日本代表FWの先頭に立ってきたベテランHOの視線は、すでに次のサモア戦に向いていた。