9月28日、いよいよ「ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」が大一番を迎える。

 ラグビーワールドカップ開幕戦で日本代表(世界ランキング9位)はロシア代表を30-10で下し、好スタートを切った。そして予選プール2戦目では、開幕前まで世界ランキング1位だった優勝候補の一角、アイルランド代表(同2位)にチャレンジする。



先発メンバーに戻ってきたアマナキ・レレィ・マフィ

 試合の2日前、両チームのメンバーが発表され、日本代表はキャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケル(東芝)が控えに回ることになった。ゲームキャプテンは7月のフィジー代表戦と同様に、「ラピース」ことFLピーター・ラブスカフニ(クボタ)が務める。

 ラピースはロシア代表戦で、試合の流れを大きく左右するトライとジャッカルを決めた。また、ボールキャリアで目立っていたNo.8(ナンバーエイト)姫野和樹(トヨタ自動車)がFLにまわり、No.8にはケガから復帰したアマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)が入った。

 リーチがワールドカップで控えに回ったのは、出場3大会目で初めてのこと。その理由にジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、「開幕戦のラピースと姫野の出来がよかったこと。また、目標達成するためには経験値の高い、インパクトのあるリザーブが必要だったこと」と語っている。中盤から終盤にかけて、リーチに試合の流れを決めるようなプレーを期待してのことだった。

 リーチは大会前、「最近は言葉ばっかりで、身体を張っていない」と、キャプテンとして自戒の意味を込めて話していた。開幕戦の出来は、本人が一番わかっているのだろう。リザーブからチームにいい影響を与えて、再び、先発の座に返り咲きたい。

 そしてもうひとつ、先発メンバーでサプライズだったのは、バックスリー(WTB/ウイングとFB/フルバックの総称)の組み合わせだ。

 開幕戦でハットトリックを達成したWTB松島幸太朗(サントリー)は、もちろん今回も先発。ただ一方で、FBだったウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ)をWTBに変更し、FBには8月のアメリカ代表戦以来の山中亮平(神戸製鋼)を起用した。

「アイルランドはキックでプレッシャーをかけてくるので、体格の大きいWTBが必要だと思った」

 ジョセフHCの意図は明確で、身長188cmのトゥポウと山中のふたりを並べた恰好だ。

 アイルランド代表のジョー・シュミットHCが「キッキングゲームはウチのほうが有利」と言うように、世界有数のSH(スクラフハーフ)と称されるコナー・マレーはボックスキック(SHからのハイパント)をタッチライン際に蹴り、日本代表を崩してくることは明白である。実際、アイルランド代表は9月22日のスコットランド代表戦でキックを多用し、それをキッカケにトライを挙げていた。

 日本代表はディフェンス時、松島がFBの位置に入り、タッチライン際にトゥポウと山中が立つはずだ。ふたりはアイルランド代表戦のポイントを、ともに「キック処理」と答えている。ミスなく安定してキャッチできれば、相手の攻撃機会を減らすと同時に、指揮官がフェラーリに例えた「松島のカウンター」で攻めることもできる。

 一方のアイルランド代表のメンバーは、FWとマレーの前9人はスコットランド代表戦と同じ。だが、初戦で負傷した昨年の世界最優秀選手SO(スタンドオフ)ジョナサン・セクストンはメンバー外となり、先発SOには8キャップのジャック・カーティーが入った。ただ、代表経験の浅いSOをサポートするべく、WTBには78キャップのキース・アールズ、FBには92キャップのロブ・カーニーが起用された。

 日本代表にとって、セクストンの不在は朗報である。また、CTB(センター)陣のふたりも今大会がワールドカップ初出場だ。国際経験の浅い選手たちにプレッシャーをかけて、ミスを誘いたい。

 アイルランド代表を迎えるにあたり、日本代表の選手やコーチ陣からよく出ていたキーワードは「ボールキープ」だ。ジョセフHCはこう分析する。「アイルランド代表に不用意なキックを蹴って、プレッシャーかけない形で相手にボールを渡すと、ポゼッションを返してくれない」。

 つまり、アイルランド代表はマレーからのパスでFWを前進させるラグビーを繰り返し、ペースを掴もうとしてくる。アイランド代表のFWはフィジカルが強く、なかなかボールを相手に渡さないからだ。それならば日本代表はボールキープすることで、相手がボールを持つチャンスの芽を摘もうと考えている。

 もちろん、スクラムとラインアウトといったセットプレーも焦点となる。接点やセットプレーで後手に回ると、勝つのはなかなか難しい。セットプレーが安定し、しっかりとした球出しができれば、サインプレーからトライを獲るチャンスも生まれる。いずれにせよ、FWの奮闘は欠かせない。

 試合前、このスクラムについて両チームが舌戦を繰り広げた。

 右PR(プロップ)木津悠輔(トヨタ自動車)がアイルランド代表のスクラムの特徴を聞かれ、「完全ではないが、ちょっと(左PRの)1番がステップアウトして、横から攻めてくる」と話した。つまり、やや反則気味に組んでくる、という発言をしたのだ。すると、それを聞いたシュミットHCは、「木津が言ったことには本当に驚きました。左PRのキアン・ヒーリーの心に、少なからず火がついたでしょう」と反論した。

 ジョセフHCも、アイルランド代表のスクラムを警戒する。

「ティア1(世界の強豪10チーム)は必ず、ジャパンのセットプレーを狙ってくるので、苦戦することが予想されます。だが、こちらのラインアウトやスクラムも成長しています」

 ベテランHO(フッカー)堀江翔太は静かに闘志を燃やし、4年前の再現を誓った。

「チームもいい状況です。ジェイミー(・ジョセフHC)に教えられてきたことをやれば、勝てる自信はある。(南アフリカ代表相手に大金星を挙げた)4年前と似ている」

 ジョセフHCは4年という年月をかけてリーダーシップを育成し、チームをまとめ上げてきた。そして、知略に優れたトニー・ブラウンコーチがゲームプランをしっかり練ってきた。スローガンのように「ONE TEAM」となり、準備してきたことをピッチで出せれば、相手が世界2位の強豪であっても勝機を見いだせるはず。それだけの蓄積が、今の日本代表にはある。