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チーム事情から見るドラフト戦略~ソフトバンク編
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今年2月、ソフトバンクの宮崎キャンプでのことだった。朝9時を回ったあたり、ネット裏の記者席にいたら、外の通路からドタドタと大きな足音がして、誰だかたくさんの人が歩いてくる。
何だろう……と思って通路に出てみたら、ユニフォーム姿の大男たちの群れが歩いている。その男たちの大きさたるや、大男が集うプロ野球選手のなかでも頭ひとつ抜けていた。
千賀滉大、武田翔太、加治屋蓮、田中正義、石川柊太(しゅうた)……さらには成長株の高橋礼やルーキーの杉山一樹があとに続く。
リック・バンデンハークやデニス・サファテといった大柄の外国人投手と比べても、まったく引けをとらない立派な体つき。183センチの東浜巨が小さく見えるほどだ。

今年4月、高校生史上最速となる163キロを記録した大船渡の佐々木朗希
練習が始まり二軍のブルペンに行っても、195センチの椎野新(あらた)にはじまり、193センチの中村晨(しん)、187センチの泉圭輔、187センチ左腕の川原弘之と、バッテリー間の18.44mが近く見えるような、大男たちが居並ぶ。
その壮大な景色を見て気づいたことがある。「ソフトバンクというチームは”夢”を育てたいんだ」と。
長身を生かして、豪快に投げ下ろす快腕ばかり。ソフトバンクのブルペンは、まさしく”夢牧場”だった。未知の可能性を秘めた投手が、コントロールは二の次とばかりに、とにかく力強いボールを投げ込む。そんな未熟さと魅力が同居していた。
そんな”夢牧場”に似合う選手は、奥川恭伸(やすのぶ/星稜)や森下暢仁(まさと/明治大)といった投手ではなく、佐々木朗希(大船渡)だ。
高校生史上最速の163キロを出した時には、何球団が指名するのだろうと言われていたが、岩手大会決勝で投げず、日本代表として挑んだU-18のワールドカップでもわずか1イニングしか投げないなど、そうした事実にプロ側も評価が微妙に変わっていると聞く。
「見えない部分が多すぎて、ウチは怖くて獲れないよ」
あるスカウトはそうボヤいていたが、これが佐々木の評価に対する本音だろう。だが見方を変えれば、これだけの逸材がドラフト前に評価を落とすというのはチャンスでもある。
仮に順調にこの夏を過ごしていれば、少なくとも半数以上の球団が「佐々木を1位指名」していたかもしれない。それがたとえば、3球団になれば御の字だろう。なんとかホークスの”夢牧場”で、佐々木が育てられる姿を見てみたい。
もし佐々木をクジで外した場合は一転、石川昂弥(たかや/東邦)に方向転換。一本釣りされている可能性もあるが、残っていれば競合必至でも指名すべきだ。
36歳の松田宣浩は今年30本塁打(9月22日現在)をマークするなど、いまだ衰えは見えないものの、37歳の内川聖一の後釜探しは急務だ。ミートセンス、ツボにくれば一発もある長打力……石川は、内川の後継者にぴったりの選手だろう。
そして、今回のドラフトでソフトバンクが補強しておきたいのが、捕手だ。甲斐拓也が球界を代表する捕手に成長し、38歳のベテラン・高谷裕亮の頑張りで見過ごされがちだが、次世代の捕手を育成するなら今だ。
“打てる捕手”に目がいきがちだが、やはりディフェンスを最優先したいポジションである。
それなら、今年は”地元”にすばらしい逸材がいる。進藤勇也(筑陽学園)のディフェンスは、好捕手が揃う今年の高校球界のなかでも、頭ひとつ半ほど抜けていると見る。
ヒジでミットをコントロールするキャッチングは、球審が思わず手を上げたくなるほど高い技術を持っている。さらに、ランナーがスライディングしてくるところにドンピシャで投げられる高精度のスローイングに、屈強で均整の取れた体躯。どれも魅力が詰まっている。
ここ10年間の成績を見ても、ソフトバンクがBクラスになったのはたった一度。大型補強だけに頼っていないからこそ、これだけの成績を残せているのだと思う。
現状を見ても、投打とも大きな欠点は見当たらないが、それでも中心選手の高齢化は進んでおり、徐々に世代交代の時期にさしかかっている。だからこそ、ソフトバンクらしく、今は粗削りでも、スケールのある選手を育ててほしいと思う。今や”スケール感”は、間違いなくソフトバンクの大きな武器である。