ラグビーワールドカップ2019開幕2日目の9月21日(土)、好カード続きの1日の締めくくりは、プールBの第1戦にして大会屈指の大一番、ニュージーランド対南アフリカの優勝候補同士の一戦となった。決勝の会場ともなる横浜国際総合競技場には63,6…

ラグビーワールドカップ2019開幕2日目の9月21日(土)、好カード続きの1日の締めくくりは、プールBの第1戦にして大会屈指の大一番、ニュージーランド対南アフリカの優勝候補同士の一戦となった。決勝の会場ともなる横浜国際総合競技場には63,649人もの観客が世界中から詰めかけ、一気にスタンドを埋め尽くした。

前回大会の準決勝ではニュージーランドが20-18で大接戦を制し、それ以前も数々の激闘を繰り広げてきたライバル同士の対戦は、前回ワールドカップ以降ではニュージーランドが5勝1分け1敗と勝ち越しているものの、昨年からの直近3試合を切り取ればは1勝1分け1敗と拮抗している。

この一戦に勝てばプールBの1位通過が濃厚となるだけに、決勝トーナメントを有利に勝ち進むためにも互いに負けられない一戦となった。

今大会で3連覇を狙うニュージーランドは、キャプテンのNo.8キアラン・リードをはじめLOサム・ホワイトロック、SHアーロン・スミス、そして最近はSOよりもFBに定着しているボーデン・バレットら、実力、経験ともに申し分のない世界的スターたちが中軸を固めた。

一方、南アフリカはキャプテンのFLシヤ・コリシ、HOマルコム・マークス、LOエベン・エツベス、SOハンドレ・ポラードら、9月6日(金)の日本代表戦に出場した23人がそのまま並んだ。なお、クボタ在籍のNo.8ドウェイン・フェルミューレンはこの試合で50キャップ目を獲得、最初にピッチに登場し大観衆から祝福された。

試合前にはニュージーランドは、通常のハカである「カ・マテ」ではなく特別な相手や大一番で使用される「カパ・オ・パンゴ」を披露。第1戦からの「カパ・オ・パンゴ」は異例だが、それだけ大きな一戦であることを物語っていた。

前半序盤は双方の堅いディフェンスによりお互い決定機を作れず、1分に南アフリカSOポラードが、22分にはニュージーランドSOリッチー・モウンガがそれぞれPGを決めて3-3となる。

試合が動いたのはその直後だった。23分、ニュージーランドは敵陣でフェーズを重ねると、FBボーデン・バレットが縦に突き大きくゲインする。追走していたWTBジョージ・ブリッジがFBボーデン・バレットのオフロードパスを受け取りそのままトライを決めて(SOモウンガのゴール成功)、10-3とニュージーランドが勝ち越しに成功する。

さらに26分、またもニュージーランドが今度は自陣からボールをつなぐと、CTBアントン・レイナートブラウンが南アフリカのディフェンスを切り裂きビッグゲイン。最後はFBボーデンの弟、LOスコット・バレットがラストパスを受けてトライを決め、17-3とリードを広げたところで前半終了となる。

このまま差が開くかに思われた後半、南アフリカは反撃を開始する。後半7分、敵陣でフェーズを重ね前進すると、ラックからFLピーター=ステフ・デュトイが抜け出しインゴールへダイブ。チーム初トライを決めて(SOポラードのゴール成功)17-10と7点差に迫る。

さらに後半18分、南アフリカはさらに追加点を奪う。SOポラードが落ち着いてドロップゴールを決めて3点を追加。17-13とさらに点差を縮め、1トライで逆転という状況までニュージーランドを追い込む。

しかしニュージーランドは後半26分にSOモウンガが、また31分にはFBボーデン・バレットがPGを決めて23-13と再びリードを広げる。これが最終スコアとなり、ニュージーランドが手堅いゲーム運びで勝ち点4を獲得した。マン・オブ・ザ・マッチにはFBボーデン・バレットが選ばれた。

接戦を続けていた南アフリカは勝ち点0と手痛い結果に終わった。

試合後の記者会見で、ニュージーランドのスティーブ・ハンセンHC(ヘッドコーチ)は、

「相手にチャンスがあったときに戻ってしっかりディフェンスできました。今回、優勝するためには全部勝たないといけない。負けたら歴史が壊れてしまう。全部決勝だと思って戦う。それは相手も同じ。南アフリカも修正できれば優勝するチームです」

と宿敵を称えつつ勝利を喜ぶと、同席したキャプテンのNo.8リードは、

「相手には50mのキックを決められる選手がいるということを意識していたので、ペナルティーを与えないように念を押していて、それが上手くいきました」

と振り返った。

一方、敗れた南アフリカのラシー・エラスムスHCは「ニュージーランド相手にこういった形で負けたらファイトバックして決勝に向かっていきたい」と語り、2戦目以降の巻き返しを誓った。

優勝を争うことが予想される強豪国同士の対戦は、好カード続きだった大会2日目を締めくくるにふさわしい激闘だった。

◇オールブラックス、日本とそのファンへの謝意を示す「お辞儀」で試合を締めくくる

試合前の「カパ・オ・パンゴ」や世界トップの質を誇るプレーで観客を魅了したニュージーランド代表「オールブラックス」。試合後にはスタンドのファンに向かって全員でお辞儀をし、日本文化への敬意、ファンへの謝意を示した。

キャプテンのNo.8リードは「(お辞儀をしたのは)日本のファンにすごく良くしてもらっていて、オールブラックスのジャージーを来ている人もたくさんいるのでそれに恩返ししようと思った」と語った。ラグビーの強さだけでなく、開催国の文化に対する感謝の心や理解も世界トップクラスであることを証明した瞬間だった。