9月21日(土)は、昨日の開幕戦が行われた東京スタジアムでフランス対アルゼンチンのプールCの初戦が行われた。 レ・ブルーことフランス代表はこれが3度目の出場となるキャプテンのHO(フッカー)ギエム・ギラドを筆頭に、ベテランのPR(プロップ)…

9月21日(土)は、昨日の開幕戦が行われた東京スタジアムでフランス対アルゼンチンのプールCの初戦が行われた。

レ・ブルーことフランス代表はこれが3度目の出場となるキャプテンのHO(フッカー)ギエム・ギラドを筆頭に、ベテランのPR(プロップ)ラバ・スリマニ、FB(フルバック)マクシム・メダールらと、SH(スクラムハーフ)アントワーヌ・デュポン、SO(スタンドオフ)ロマン・ヌタマックの若いハーフ団、セブンズでも活躍したフィジー出身のCTB(センター)ヴィリミ・ヴァカタワらが先発に名を連ねた。

一方のロス・プーマスことアルゼンチン代表は、キャプテンのFL(フランカー)パブロ・マテラ、前キャプテンのHOアガスティン・クレービ、SOニコラス・サンチェス、CTBヘロニモ・デ・ラ・フエンテ、FBエミリアーノ・ボフェリら、7月から8月にかけて行われた南半球4カ国対抗戦(ザ・ラグビーチャンピオンシップ)の主力メンバーを揃えた。

フランスとアルゼンチンは、2007年の大会の開幕戦で対戦し、アルゼンチンが開催国のフランスを破り大きな話題を呼び、また3位決定戦でアルゼンチンが再びフランスを下し、同国史上最高の3位となった因縁の対決でもある。これまで過去に50試合戦い、通算成績はフランスが35勝14敗1分と上回っているが、この10年間だけ見ると4勝4敗の五分の成績で、どちらが勝つがわからない。プールCには優勝候補のイングランドもおり、この初戦を制したほうが決勝トーナメントに大きく近く可能性が高くなるだろう。

アルゼンチンはサッカー界の英雄ディエゴ・マラドーナから、「そのジャージーに魂を込めろ。アンセムが響けば自然と涙がこぼれるはずだ。私は選手のみんなとともにある。自分の命ある限り応援し続ける。競技は違えどブエノスアイレスのハイパフォーマンスセンターで共に切磋琢磨した友人である。愛している。勝ちに行け!」と試合前に熱いメッセージが送られた。

試合は序盤、開幕戦の固さからか互いにミスもあり、またディフェンスのぶつかり合いでなかなか点を取ることができなかった。

均衡が破れたのは14分、アルゼンチンのLOグイド・ペティが相手のディフェンダーをかわして突破し、フランスの反則を誘う。

SOサンチェスが危なげなくPGを決めアルゼンチンが3ー0と先制する。

しかし、ここから流れは次第にフランスに傾いていく。

17分、フランスはWTBダミアン・プノーの突破から一気に敵陣へ切り込み、CTBヴィリミ・ヴァカタワからCTBガエル・フィクーへとつないで左隅にトライ。SOヌタマックのゴールも決まり、3ー7と逆転する。

勢いに乗ったフランスは21分、再びWTBプノーからサポートに入っていたSHアントワーヌ・デュポンが右隅にトライ。難しい角度のコンバージョンもSOヌタマックが決め、フランスは3ー14とリードを広げる。

さらに29分、SOヌタマックのPGでフランスが3点を追加し17ー3とアルゼンチンを突き放す。

前半も残り10分を切り、ようやくアルゼンチンも得意のFWで敵陣でアタックを仕掛けるが、ミスとフランスのFW陣の強固なディフェンスの前にゴールラインを割ることができない。

結局、前半終了間際にSOヌタマックがPGで3点をさらに追加し20ー3と大量リードで折り返した。

後半、先に点を取り反撃のきっかけを作りたいアルゼンチンは、2分、相手のペナルティからマイボールラインアウトをキープ、モールで押し込んで最後はLOのペティがトライ。SOサンチェスのゴールも決まり、アルゼンチンが10ー20とする。

さらにアルゼンチンはフランスの攻撃をしぶとくディフェンスしながら徐々に相手陣内に入り、得意のセットプレーで仕掛けていく。

13分、アルゼンチンは敵陣5メートルでのラインアウトから再びモールで押し込み、代わったばかりのHOフリアン・モントージャがトライ。コンバージョンは外れたが、15ー20と1トライ差まで追い上げる。

フランスも前半と同じようにBKで展開するが、アルゼンチンのタックルでボールを前に運べない。逆に形成は一気にアルゼンチンに傾いていく。

今度は自陣からパスを回して敵陣に入り、ペナルティを獲得。20分、フランスでプレーするSOベンハミン・ウルダピジェタのPGで18ー20と迫る。

試合時間も残り20分を切り、お互いに選手を入れ替えてチャンスをうかがうが、少し膠着した時間が続く。

しかし、28分、SOウルダピジェタがPGを決め、ついにアルゼンチンが21ー20と逆転する。だが、プーマスのファンが喜んだのもつかの間、29分、リスタートから今度はフランスがSOヌタマックに替わって入ったベテランのカミーユ・ロペスのDGですぐに21ー23と再逆転する。

SOロペスが入ってから、キックをつかってエリアを取り戻し始めたフランス代表。しかしアルゼンチン代表も激しいディフェンスで食い止める。残り3分、両者の息もつけない攻防が繰り広げられる。

39分、アルゼンチンはロングキックを得意とするFBエミリアノ・ボフェッリが40メートルのPGが決まれば勝利を大きく引き寄せるはずだったが、ボールは無情にもポストを逸れる。それでもプーマスはラストプレーで最後まで諦めず前進するが、結局追加点を挙げられず、23ー21でフランスがアルゼンチンを振り切り初戦を白星で飾った。

勝ったフランス代表のジャック・ブリュネルヘッドコーチ(HC)は、「ミスもあって完璧に満足しているというわけではないが、課題も見つかったととらえ、もっと良くなっていくと思う」と落ち着いて語った。

キャプテンのHOギエム・ギラドは、「勝てて良かったが、次は4日間で2試合戦わなければいけないので、その準備をしたい」と気を引き締めた。

アルゼンチン代表のマリオ・レデズマHCは、「フランスのプレーは想定内だったが、自分たちがやってきたプレーが前半できなかった。どんなに良いディフェンスシステムがあってもタックルミスすれば意味はない」と肩を落とした。

FLパブロ・マテラキャプテンは、「前半あのような戦い方をしてしまうと、ワールドカップでは難しい。残り3試合、もう一つのミスも許されない」と厳しい表情で語った。

激闘となったプールCの開幕戦だが、敗れたアルゼンチンも7点差以内の敗戦で勝ち点1を獲得し、明日のイングランド対トンガの結果次第では、フランス、アルゼンチン、イングランドの三つ巴で、決勝トーナメント進出の2枠を争うことになるだろう。

フランス代表は10月2日に福岡・博多の森競技場でアメリカ代表と対戦する。アルゼンチン代表は9月28日に大阪・花園ラグビー場でトンガ代表と対戦する。

◇フランスのSOが大活躍!

父エミールが1995、1999年にワールドカップに出場したSOロマン・ヌタマックは、ラグビーフランス代表として史上初めて親子二代に渡ってワールドカップの出場を果たした。2つのコンバージョンと2つのPGを決め10得点と、チームに勝利をもたらす活躍だったが、後半アルゼンチンに支配される展開になり少し残念そうに途中交代した。かわって入ったカミーユ・ロペスは、アルゼンチンに逆転を許した直後、DGを決めて流れを引き戻した。「入ったばかりだったので、冷静に状況判断できた。」とベテランらしく振り返った。 <野辺優子>