ラグビー日本代表の勝利で開幕したラグビーワールドカップも大会2日目を迎えた9月21日(土)は、北海道・札幌ドームで「ワラビーズ」ことオーストラリア対「フライング・フィジアンズ」ことフィジー代表のプールDの開幕戦が行われた。 両者の対戦は過去…

ラグビー日本代表の勝利で開幕したラグビーワールドカップも大会2日目を迎えた9月21日(土)は、北海道・札幌ドームで「ワラビーズ」ことオーストラリア対「フライング・フィジアンズ」ことフィジー代表のプールDの開幕戦が行われた。

両者の対戦は過去21回行われ、オーストラリアの18勝2敗1分。最後にフィジーが勝ったのは1954年と、数字だけ見ると圧倒的にオーストラリアが有利だ。前回の2015年大会でもプールステージで激突し、ワラビーズが28-13で制している。

オーストラリア代表は、昨年はテストマッチ4勝9敗と大きく負け越し調子を落としているが、今年はニュージーランド代表に勝つなど3勝2敗と調子は上向きだ。

一方のフィジー代表は史上最強のメンバーとの呼び声高く、日本代表には敗れたもののマオリ・オールブラックスに勝利し、大会直前は3連勝で日本に乗り込んで来た。

いずれにせよプールDには今年の欧州王者ウェールズ代表がおり、決勝トーナメントに進出するにはどちらも初戦を白星で飾っておきたいところだった。

ワラビーズはキャプテンのFL(フランカー)マイケル・フーパーを筆頭に、FLデービッド・ポーコック、PR(プロップ)スコット・シオら前回のワールドカップでもフィジー代用と戦ったメンバーに加え、SO(スタンドオフ)には白血病を克服したクリスチャン・リアリーファノ、CTB(センター)には2011年以来の出場となるジェームズ・オコナー、バイスキャプテンのサム・ケレヴィ、FB(フルバック)はカートリー・ビールが入った。

またリザーブにはPRジェームズ・スリッパー、SH(スクラムハーフ)ウィル・ゲニア、SO/CTBマット・トゥームアが途中からチャンスを伺う。

一方のフィジー代表はキャプテンのFLドミニク・ワンガニブロトゥ、LO(ロック)レオネ・ナカラワ、SO(スタンドオフ)ベン・ヴォラヴォラ、WTB(ウィング)ジョシュア・ツイソバと決定力の高い選手が揃った。

前半はこの試合に賭けるフィジー代表のペースで進む。4分、SOヴォラヴォラのPGでフィジーが3ー0と先制し、さらに8分、相手のキックからフィジー代表がカウンターをしかけて、オフロードパスをつないで最後はFLぺセリ・ヤトがトライを挙げて8-0とリードを広げる。

オーストラリア代表も負けていない。17分、スクラムを押し込み、最後はキャプテンのFLフーパーが中央にトライ、SOリアリーファノがゴールを決めて8-7と1点差に追い上げる。

その後はフィジー代表のペースで試合が運び、30分までにSOヴォラヴォラがPGを2本決めて14-7とリードを広げる。

しかし、ワラビーズはこの試合好調だったモールを押し込み、そこから右に展開し、CTBオコナー、FBビール、最後はWTBリース・ホッジが右隅に飛びこんで12-14と2点差として前半を折り返す。

後半3分、オーストラリア代表は素早くボールを回していくが、パスが乱れ、こぼれたボールを拾い上げたフィジーのCTBワイセア・ナヤサレブがそのまま走り込んで中央にダイビングトライ。SOヴォラヴォラのゴールも決まり、21-12とフィジーがワラビーズに対してリードを広げる。

点差を詰めておきたいオーストラリアは、10分敵陣でペナルティを獲得し、WTBホッジがPGを決め3点を返し、15-21とまずは1トライ1ゴールで逆転可能な点差とする。

さらにワラビーズはベテランのSHウィル・ゲニアを投入。ここから試合のテンポが上がり、ワラビーズのチャンスが続く。

オーストラリア代表は16分、敵陣5メートルでのマイボールラインアウトからモールで押して最後はHOトール・ラトゥがトライ。しかし、WTBホッジのコンバージョンが外れて20ー21とスコアを逆転できない。

それでも、オーストラリアの勢いは止まらず、WTBマリカ・コロインベテの突破で一気に敵陣に入り込んで、左右に大きく展開しながらフェーズを重ねて攻め続けると、フィジーもたまらず反則を犯してしまう。

20分フィジー代表のCTBレヴァニ・ボティアがシンビンで1人少なくなったフィジーに対し、オーストラリア代表は再びラインアウトからモールで押して、最後はまたHOラトゥがグラウンディングしてついに逆転。SOマット・トゥームアのゴールは外れたが、25-21とする。

さらに、28分、今度はボールを回してフィジー出身のCTBケレヴィがトライし32ー21と突き放す。ワラビーズは31分にもラインアウトから左に展開し最後はWTBコロインベテが力強いランでダメ押しのトライ。SOトゥームアのゴールも成功し、39ー21と試合を決めた。

フィジー代表もなんとか勝ち点を取るべく最後まで諦めずに攻めるも、なかなか自陣から出ることができず、試合はそのまま39-21でノーサイドを迎えた。オーストラリア代表は前半苦しんだものの、終わってみれば6トライの快勝でボーナスポイント1を含めて勝ち点5を獲得した。

この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)は2トライを挙げたオーストラリア代表のHOラトゥが受賞した。

オーストラリア代表のマイケル・チェイカヘッドコーチ(HC)は、「このような危険なチームに勝てて良かった。ワールドカップなので、前半うまくいかない部分があったのはしかたがないことだ。スクラムも、モールも良かった。この札幌でたくさんのワラビーズのジャージーを着たファンの声援も選手たちに大きな後押しとなった」と笑顔で語った。

また、FLフーパーキャプテンも「後半出てきた選手たちが流れを作ってくれた」と安堵の表情を浮かべた。

一方、敗れたフィジー代表のFLワンガニブロトゥキャプテンは、「結果は残念だが、前半の戦い方は誇れるものであり、良かったところもたくさんあったので、次につなげたい」と前を向いた。

オーストラリア代表は9月29日(日)に、プールDの首位通過を争うと予想されるウェールズ代表と東京・東京スタジアムで戦う。フィジーは中3日の25日(水)に岩手・釜石鵜住居復興スタジアムでウルグアイ代表と対戦する。

◇CTBケレヴィ、WTBコロインベテのフィジー出身の2人がトライ

オーストラリア代表はこの試合で、CTBケレヴィがワールドカップ史上初めてフィジー出身の他国の代表が、フィジー代表からトライを奪った選手となった。その直後にやはりフィジー出身のWTBコロインベテもトライを挙げた。なおケレヴィはワールドカップ後、日本のトップリーグのサントリーサンゴリアスに加入予定だ。今後も2人の活躍に期待しよう! <野辺優子>