2019年9月20日(金)、世界中のラグビーファンが、そして開催国である日本国民の多くが待ちに待ったラグビーワールドカップが開幕した。11月2日(土)の決勝戦まで、約1カ月半、44日にわたって開催される。 過去の8大会は「ティア1」(欧州…

2019年9月20日(金)、世界中のラグビーファンが、そして開催国である日本国民の多くが待ちに待ったラグビーワールドカップが開幕した。11月2日(土)の決勝戦まで、約1カ月半、44日にわたって開催される。


過去の8大会は「ティア1」(欧州6カ国+南半球4カ国の概ね世界の十傑)に属するラグビー伝統国でのみ開催されてきたが、今回は日本、ひいてはアジアで初めて開催される大会。ラグビーの世界的な普及に向けての歴史的な第一歩となった。

開幕戦はホスト国である日本代表(世界ランキング10位)と、2011年大会以来2度目の出場となるロシア代表(同20位)の対戦。過去の対戦成績は日本代表の5勝1敗だが、昨年11月にイングランドで行われた対戦は27-32と大接戦に。辛くも逆転勝利を収めた日本代表としては決して楽観することの許されない開幕戦となった。

日本代表ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は試合2日前のメンバー発表時、「エキサイトしている。全員で戦わなければならない。ここまで過去最高の準備ができた」と充実した表情で語った。メンバーはキャプテンのFLリーチ マイケルがもちろん先発。FW第1列はPR稲垣啓太、HO堀江翔太、PRヴァル アサエリ愛のパナソニック勢に。HO堀江は負傷離脱からの復帰戦となった。No.8にはアマナキ・レレィ・マフィ欠場の影響もあり姫野和樹が入った。BKはSH流大、SO田村優のハーフ団を司令塔に、CTB中村亮土&ラファエレ ティモシー、WTBレメキ ロマノ ラヴァ&松島幸太朗、FBウィリアム・トゥポウという布陣を敷いた。

また、リザーブにはワールドカップ4大会目の出場となるLOトンプソンルーク、3大会連続出場のSHらが田中史朗が並んだほか、FB山中亮平ら5選手がワールドカップ初出場の瞬間をベンチで待った。

キャプテンのFLリーチは、チームの状態について「ピークに近いと思う。ただ4試合必ずステップアップして上げていきたい」と順調な仕上がりとさらなる向上をアピール。ロシアに対しても「圧力を感じる」と警戒を強めた。

一方で昨秋、日本代表を慌てさせたロシアのリン・ジョーンズHCは「試合に勝つ可能性は20%あると思う。最後の5分まで全力を尽くす」と控えめに語りつつも、勝利を目指す姿勢を見せた。キャプテンのFBヴァシリー・アルテミエフも「カオス(混沌)にしていくこと、スピード感を持って試合をすることが重要」とアップセットを目指した。

メンバーはFBアルテミエフも含め、LOアンドレイ・ガルブゾフ、SOユーリ・クシュナレフ、CTBウラジミール・オストロウシュコら2011年大会を経験している中軸選手6人が入り、昨秋の日本代表戦に出場したメンバーのうち11人が先発という万全の編成で開幕戦に臨んだ。

なお、試合前には開会式が行われ、歌舞伎や富士山など日本のイメージを前面に押し出した演出が展開。秋篠宮殿下が開会を宣言し、19時45分にキックオフの瞬間を迎えた。

前半、動きの堅い日本代表は開始早々の4分、FBトゥポウがボールの処理に手こずり、ルーズボールをロシアWTBキリル・ゴロスニツキーに奪われトライ、SOクシュナレフのゴールを決まり0-7と先制を許す。

まずは1トライを返したい日本代表は前半11分、敵陣ゴール前まで攻め入るとラックからSH流、SO田村、CTBラファエレとパスをつなぎ、FBトゥポウにCTBラファエレがバックフリップでオフロードパス。FBトゥポウからWTB松島へとラストパスがつながり、WTB松島がトライ! SO田村のゴールは外れたものの、日本代表は5-7と2点差に迫る。

前半のうちに追加点を奪いたい日本代表は前半34分、WTB松島がインゴール右隅にグラウンディングを試みるも、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)の末にノックオンでノートライとなる。しかし38分、日本代表は再び敵陣ゴール前のラックからアタックを仕掛け、右大外に構えていたWTB松島が2トライ目を獲得。SO田村のゴールも成功し、12-7と逆転して前半終了を迎えた。

後半に入るとまずは3分、まずはSO田村がPGを決めて15-7とリードを広げる。ボーナスポイント獲得のためにはあと2トライ必要な日本代表は、直後の6分、ロシアボールを奪い取ったFLピーター・ラブスカフニが50m独走しトライ。20-7とリードを広げ、チーム3トライ目でボーナスポイント獲得まであと1トライとする。

後半14分にロシアSOクシュナレフ、23分に日本代表SO田村がそれぞれPGを決めて23-10となる。トライが欲しい日本代表は28分、ロシアの深い位置からのミスキックでマイボールを獲得すると一気に前進し、CTB中村亮土がゲインし、WTB松島にパス。相手ディフェンスの隙間を突いたWTB松島がハットトリックとなる3トライ目を決めて、30-10とした。これで4トライ以上で得られるボーナスポイント1を獲得した。

終盤はロシアの反撃を受けたもののこれが最終スコアとなり、日本代表は2大会連続で開幕戦勝利、しかも勝ち点5を獲得するという幸先のいいスタートを切った。

試合後、日本代表ジョセフHCは
「選手たちはちょっと固くなっていたかもしれませんね。試合前から大きな期待をかけられていて、大舞台で大勢の人に見守られています。実際に想像していた以上に大きなプレッシャーがかかっていたと思います。キッキングゲームになるだろうとは思ってましたが、ロシアはボールにプレッシャーをかけてきました。後半ロシアはディフェンスに疲れが出るだろうから、自分たちのゲームを遂行しようと思いました」
と選手の固さを指摘しつつもをゲームプラン通りであったことを強調。

キャプテンのFLリーチは、
「キックオフからちょっとタフな時間が続きました。結果的に勝ててほっとしていますが、バックスリーがプレッシャーを受けることが多くなってしまいました。フィジカルな戦いはゲームプラン通りで予想していましたが。前半の40分間は少しナーバスになってしまっていたことを認めざるを得ません。この辺りを反省して、次のアイルランド戦に向けて準備したいと思います。ワールドカップではポイントが大事です。後半点を取ろうとハーフタイムに話しましたが、その通りの良い結果が出て良かったです」
と一時はナーバスになっていたことを認めつつ、勝ち点5という結果に対しては一定の満足感を示した。

日本代表は8日後の9月28日(土)、小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡)に場所を移し、9月16日時点で世界ランキング1位のアイルランドと対戦する。連勝すれば決勝トーナメント進出に大きく前進するだけに、どのような戦いを見せてくれるか注目したい。

◆WTB松島マン・オブ・ザ・マッチ!ワールドカップでのハットトリックは日本代表史上初

本文でも触れたとおり、WTB松島幸太朗が前半11分、38分、後半28分と3トライを奪いハットトリックを決めた。ワールドカップでは日本代表史上初のハットトリックという出色の活躍で勝利に貢献し、見事 マン・オブ・ザ・マッチ (試合のMVP)に選出された。

試合後、WTB松島は、
「3つのトライはチームメイトたちのおかげで、感謝しています。バックスリーの我々はボールコントロールを少し失ってしまいました。次の試合までに修正したいと思います」と、あくまでもチームとしてのトライであることを強調した。

FBも兼ねていたがすっかりWTBとして定着し、結果を残し続けているWTB松島。アイルランド戦以降も大いに期待できそうだ。