文=鈴木健一郎 写真=©ASIA LEAGUE『完全アウェー』で主導権を握れず、予想外の連敗琉球ゴールデンキングスは前年王者として『テリフィック12』に参戦したが、深圳アビエイターズ、サンミゲルビアメンに連敗を喫してグループステージ敗退とな…

文=鈴木健一郎 写真=©ASIA LEAGUE

『完全アウェー』で主導権を握れず、予想外の連敗

琉球ゴールデンキングスは前年王者として『テリフィック12』に参戦したが、深圳アビエイターズ、サンミゲルビアメンに連敗を喫してグループステージ敗退となった。選手のコンディションが整わず、リーグ開幕を控えて無理をさせられない中、「ディフェンディングチャンピオンとして期待に応えたかったのですが、正直難しい大会でした」と佐々宜央ヘッドコーチは語る。またエースの岸本隆一は「万全の状態ではなくても、チームとして良くなろうとする過程」にあると語り、10月5日に控える開幕を見据えている。

昨日行われたサンミゲルビアメン戦では長期欠場明けのジョシュ・スコットが欠場して苦戦を強いられたが、後半にデモン・ブルックスの連続得点、岸本のドライブが決まり自分たちの時間帯を作ることができた。

ただ、そこで琉球は『アウェーの厳しさ』に直面する。サンミゲルビアメンはフィリピンのチームだが、マカオにはフィリピンから出稼ぎに来ている人が多い。自国の強豪チームが出場するとあって、平日にもかかわらずファンが大挙して詰めかけ、1プレーごとに大歓声で盛り立てた。沖縄でのホームゲームで後押しを受けることに慣れている琉球の選手たちにとっては、初めて経験するレベルの応援の圧力があった。

大声援に後押しされる相手選手はビッグプレーを連発。そのたびに会場が沸き、サンミゲルビアメンは勢いを増すことになった。最終スコア92-101で琉球は悔しい負けを喫している。

「もっとファイトしなきゃダメだと感じた」

苦しい2試合を終えて、満原優樹は苦い顔。2試合ともに先発を任され、初戦は28分出場で10得点10リバウンド、2試合目は25分の出場で8得点7リバウンドと数字は残したものの、チーム事情で本来のポジションではないセンターでプレーすることになり、シーズンに向けた調整の意味では個人的にあまり収穫が得られなかったのが理由だ。

「みんな違うポジションでプレーせざるを得なくて、難しい大会でした。外国籍選手が出ていない状況はレギュラーシーズンでも可能性がないわけじゃないし、それなりに戦えたかと言えば足りなかったと思います。もっとファイトしなきゃダメだと2試合を通して感じました」

満原優樹は日立時代からサンロッカーズ渋谷の生え抜きとしてプレーしてきたが、この夏にキャリアで初めて移籍を経験。チームからは4番ポジションでのプレーを求められて加入したわけで、限られた実戦テストの機会に違うポジションをやらなければならないことにもどかしさを感じるのは無理もない。

「求められているのは4番ポジションをしっかりと任されること。その上でプレータイムを伸ばすには3番ポジションでアウトサイドでのスキルもどんどん増やしてほしいと言われています。今は難しいチーム状況なので僕がやらざるを得ないのですが、軸は4番だと考えています」

「自分の価値を上げるために良い数字を残したい」

今回の移籍を振り返ると、順序としてまずSR渋谷から新契約のオファーがない、つまり戦力外通告を受けたわけだが、アイラ・ブラウンの退団でインサイドの補強が必要だった琉球から声が掛かった。移籍を経験していない満原が、琉球からのオファーに発奮しないはずはない。「帰化選手が有利なルールですが、帰化だから必ずしも優れているわけではないと思っています。Bリーグになってからずっと外国籍選手とマッチアップしていて、僕にとってはそれが当たり前です」と、琉球の期待にプレーで応えるつもりでいる。

長くプレーしたSR渋谷を離れることになったが「ショックは一切ないです」と、そこはプロフェッショナルとして割り切っている。「SR渋谷の今の環境では、使われ方やプレータイムも含めて、自分はもう終わるだけだと思っていました。Bリーグになって、プレータイムを得て自分が結果を残すためには移籍も当たり前です」

心情的には応援してくれたファンのことは考えてしまう。「日立時代から7年間ずっと応援してくれるファンの方も多く、移籍についてもSNSでメッセージを多くいただいて、そういうのを見ると『もっとプレーしたかった』と思ってしまいます。でも、自分で選んで決めたことなので、応援してほしいです。移籍した以上は結果を残して、自分がここで成長していることを証明しなきゃいけないと思っています」

『琉球での満原』のプレーについて、自身はこんなイメージを持っている。「軸は4番ですが、コールってわけじゃないですけど展開したりアシストしたり、ガード的なことを求められていると自分では考えています。賢くなきゃできないですが、そこは自分の武器だと思っています」

「移籍したからにはスタッツが誰をも納得させられる材料だと思うので、自分の価値を上げるために良い数字を残したいです。レギュラーシーズン60試合のトータルで良い数字を残して、チームを勝たせます」。そう語る満原からは、今までにない貪欲さが感じられる。29歳は老け込む年齢でもない。環境が変われば人は変わる。ここからの『大化け』に期待したい。