ここ2年間レギュラーだった司令塔が不在。代役にとってはチャンスだろうか。いや。NTTコム加入2年目の小倉順平は「レギュラー争いが…と考えられると思うんですけど」と、周囲の見方を紳士的に否定した。 日本最高峰のラグビートップリーグが8月26…

 ここ2年間レギュラーだった司令塔が不在。代役にとってはチャンスだろうか。いや。NTTコム加入2年目の小倉順平は「レギュラー争いが…と考えられると思うんですけど」と、周囲の見方を紳士的に否定した。

 日本最高峰のラグビートップリーグが8月26日、始まる。昨季は16チーム中8位だったNTTコムは27日、兵庫・神戸ユニバー記念公園陸上競技場で同4位の神戸製鋼と第1節をおこなう。

 19日は東京・キヤノンスポーツパークで前年度6位のキヤノンとの練習試合に、小倉がSOとしてスタメン出場を果たす。ビジョンの整えられた攻めで終盤に得点し、40-13で勝った。それでも「前半は特に、シンプルなミスが多かった。ボールをキープすれば自分たちのやりたいことができるのに…」と、口をつくのは反省点ばかりだった。

 グラウンドの左右幅を大きく使うチームにあって、長らく主軸のSOだったのはエルトン・ヤンチースだ。もっとも現在は、長らくお呼びのかからなかった南アフリカ代表へ復帰。正司令塔候補が不在のまま開幕節を迎えることが濃厚だ。

 渦中、同じポジションでプレーする小倉は「エルトンから学べるものがある。それが何よりも嬉しい」と捉えていた。

「キックの精度が高いのはもちろん、キックの使い方。(意表をついて)キックパスをしたりと、日本人にはない発想がある。観ていて、おもしろい」

 ヤンチースは、8月まで国際リーグのスーパーラグビーでプレー。母国のライオンズの背番号10を担い、準優勝に輝いた。どこからでも攻めまくるクラブのコンダクターとして、代表復帰への足掛かりを築いていた。

 ヤンチースを仲間であり師匠でありライバルと見る小倉は、スーパーラグビーでのパフォーマンスを受けこんな感想を抱いたようだ。

「ライオンズではコミュニケーションが取れているから、さらにいいプレーができているのかな、と。こっちではどうしても日本語がわからない。だから本当は僕らに『こう動いて欲しい』という意見があっても、胸にしまっているんじゃないか…。そう、感じます」

 身長172センチ、体重82キロの小倉は、神奈川・桐蔭学園高3年時は主将を務め、日本代表の松島幸太朗とともに全国高校ラグビー大会で福岡・東福岡高と同時優勝。早大でも下級生時から司令塔の座をつかみ、NTTコムでもルーキーイヤーから最後尾のFBとして3試合に先発した。SOとしてもスターターを3度、ベンチスタートを4度経験してきた。

 かねて強気で仕掛けるランに定評があったが、最近は栗原徹スキルコーチの指導でキックを安定させている。ヤンチース不在のシーズン序盤は、存在感を示すチャンスでもあるか。

「チームの層が厚いので、誰が出るかはわからない。そのなかで(ライバルに)抜かれないように自分のできることをする。それはチームのため、という意味なんですけど」

 自分なりの思考回路で世相を読み解かんとする小倉は、自分なりの決意表明をしていた。(文:向 風見也)