欧州チャンピオンズリーグ(CL)の2019-20シーズンが開幕した。今季、日本人はCL常連の長友佑都(ガラタサライ)に加えて、ザルツブルクの南野拓実と奥川雅也、そしてゲンクの伊東純也が初参戦となる。 その初日、グループEではザルツブル…

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)の2019-20シーズンが開幕した。今季、日本人はCL常連の長友佑都(ガラタサライ)に加えて、ザルツブルクの南野拓実と奥川雅也、そしてゲンクの伊東純也が初参戦となる。

 その初日、グループEではザルツブルクがホームにゲンクを迎えた。



CLデビュー戦で2アシストを決め、ザルツブルクの大勝に貢献した南野拓実

 ザルツブルクはオーストリアリーグで6連覇中だが、CLでは過去13シーズンで11回予選に出場したにもかかわらず、すべて敗退。今季はカントリーランキングにより、本選からスタートすることができた。一方、ゲンクにとっては8シーズンぶりのベルギーリーグ優勝でつかんだ大舞台だ。グループEには、昨季の王者リバプールとセリエA2位のナポリがおり、ザルツブルクとゲンクにとってはなかなか厳しい組み合わせとなったが、両チームにとって、欧州のトップクラブと対戦するのはすばらしい経験になるはずだ。

 試合の決着は、早々についた。フル出場した南野拓実は胸を張る。

「自分たちの狙いどおりの試合運びができたと思います。前半、僕たちのチャンスをほぼ仕留めることができたのが、この結果につながったひとつの要因だと思います」

 試合開始から間もなく、ザルツブルクは、ゴール正面で後方からのパスを受けた南野がターンでディフェンダーをかわし、前方へパス。これをアーリング・ブラウト・ハーランドがダイレクトで決めた。鮮やかな先制点だった。

 初めてのCLの舞台で、ゲンクの選手たちはいきなり下を向くことになった。この試合に先発し、前半で退いた伊東がそれを認める。

「最初に1分で点を決められてしまって、ずっと相手の流れだったかなと思います。初めてのCLでしたが、ふだんと変わらず入れましたけど、やはり最初の一点で、みんな消極的なプレーになったと思います」

 その後もホームの声援を背に、ザルツブルクは小気味よく攻めた。前半34分、自陣の深い位置で奪ったボールを受けた南野が、前線にロングパスを送る。これをファン・ヒチャンがキープし、ゴール前に走り込むハーランドへラストパス、ハーランドはスピードに乗ったまま、GKの動きを冷静に見切ってネットを揺らした。シンプルなカウンターが成功した。

 3点目はその2分後。ゲンクのディフェンダーが前線に蹴った中途半端なボールをカットすると、そのままゴール前へロングパス。抜け出したヒチャンがGKとの1対1を制して3-0とした。

「自分としても、あんなに簡単に失点したり、こんな大差で負けたことはなかったですし、前半は難しかったと思います。カウンターで入れ替わって失点というのが続いて、(自分が攻撃的にプレーすることは)より難しくなったかなと思います」

 伊東は腑に落ちないというような表情で話した。ゲンクは前半さらに2失点し、後半も1失点。トータル6-2で試合は終了した。

 フル出場の南野は先制点に続き、前半アディショナルタイムにも、左からクロスをあげてドミニク・ソボスライの5点目のゴールをアシスト。大勝に貢献した。また、奥川雅也も後半17分、ソボスライに代わって途中出場を果たしている。

「チームの勝利に貢献できてよかったと思います。ふたつのアシストとも、自分の長所をうまく出せたのでよかったと思っています」

 2アシストと大勝を、南野は素直に喜んだ。

 この試合、誰よりも存在感を見せたのはザルツブルクのFW、ハーランドだった。ノルウェーのモルデでオーレ・グンナー・スールシャール(現マンチェスター・ユナイテッド監督)の指導を受け、今季からザルツブルクでプレーする19歳。すでにオーストリアリーグでは7試合で11得点を決め、大物ぶりを見せつけている。今年の夏に行なわれたU-20W杯では、ニュージーランドを相手に9得点したことでも話題になった。194㎝の高身長。身体を張って強いのはもちろん、足元の技術が高く、スピードもある。

 この日、ハーランドは3得点を挙げたが、これはウェイン・ルーニー、ラウル・ゴンザレスについで史上3番目の若さでのCLハットトリックだった。日本人3選手のCLデビューもかすんでしまうほどの存在感。そして、こうした選手を発見できるのもまたCLの醍醐味だろう。

 伊東は「(CLを)ベルギーリーグと比べる間もなかった。次にまた頑張ります」と、淡々と話した。ここで何を感じ、何を次につなげていくかが、何より大切になる。

 対照的に南野は、「スタジアムの雰囲気も最高でしたし、CLのアンセムを聞いた時はモチベーションが高まりました」と、その高揚感を語る。

 2人のテンションの差にも、CLの勝負の厳しさが現れていた。