紀平梨花の今季初戦となった、9月12日からカナダ・オークビルで開催されたオータムクラシック。前の週に左足首をひねった紀平は、最後のジャンプを3回転ルッツから3回転ループに変えて、初日のショートプログラム(SP)に臨んだ。



オータムクラシックで優勝した紀平梨花

 最初のトリプルアクセルをきれいに決め、最後の3回転ループはGOE(出来栄え点)加点こそ伸びなかったが、スピンとステップもすべてレベル4にするノーミスの演技。同じくノーミスで滑ったエフゲニア・メドベデワ(ロシア)に3.04点差を付ける78.18点で1位発進をした。

「以前は、ショートの練習の時からフリーの分もやりすぎていたので、それでミスが出ていたのだと思います。去年のファイナルではショートのための練習に集中していたことを思い出して、今朝はショートだけの練習をしました。だから、アクセルは思いどおりのジャンプができて、ほかのジャンプでも感覚がすごく体にしみついていたので、よかったと思います」

 新プログラムの『ブレックファースト・イン・バグダッド』は、シェイ=リーン・ボーン振り付けのテンポが速い曲で、「最初はジャンプを入れなくても体力がもたない感じでしたが、今は呼吸の入れ方なども慣れてきて、ジャンプを入れても最後までもつようになりました」という。まだこなれていない部分もあり、演技構成点はすべて8点台前半から中盤だったが、今後滑り込んでいけば得点も伸びていくだろう。

「スイスでステファン・ランビエルさんに指導してもらった合宿では、自分でいろいろと考えていたことをやる時間もないくらい、いろんなトレーニングが組み込まれていて、すごくハードでした。そのときにやったピラティスなどの成果で体幹も使えるようになったし、脚を鍛えるトレーニングもありました」

 体力面でも自信をつけた紀平だが、翌日のフリーでは朝の公式練習が本番と違うリンクで、氷も変わったためにトリプルアクセルに苦戦をした。6分間練習でも積極的にジャンプを跳んでいたが、終盤には転倒してその後の2回はダブルにとどまった。

 演技直前にリンクに出てきた時も、名前をコールされる前に8本もジャンプを跳んだが、アクセルの6回はダブルとシングルだった。

「サブリンクとは氷が違っていて、アクセルの入りで少しスルッとなる感覚があったので、滑る直前の練習ではどうやったら左足を乗り込めるようにできるか、とすごく考えていました。少し後ろ寄りだった重心を前にして跳ぶことを意識しようと思ったので、本番では本当に集中していました」

 本番ではふたり前に滑ったメドベデワが、回転不足はありながらジャンプをすべて着氷し、142.29点を出す演技をしていた。そんな状況だったが、紀平にとってはトリプルアクセルに気を取られていたことが逆に幸いしたのかもしれない。自分のジャンプのみに集中して最初のトリプルアクセルを成功させると、2回転トーループを付けて連続ジャンプにした。

 次のトリプルアクセルは、軸が少し斜めになって回転不足を取られたがしっかりと着氷。そこからは複雑に変化する曲に乗ると、後半の3連続ジャンプの3回転ルッツで回転不足を取られてわずかに減点されたものの、しっかり滑り切って最後は右手を静かに挙げるガッツポーズを見せた。

 得点は145.98点。合計で224.16点となり、シーズン初戦を優勝で飾った。

 トリプルアクセルの加点は、成功した連続ジャンプがプラス0.80点と低かった。

「6分間練習と直前の練習でも、アクセルを思ったようには跳べなかったので焦ったんですけど、本番で跳べたのはすごくよかったです。これからグランプリシリーズが始まるので、もっと完璧にして、加点の付くトリプルアクセルを跳ばなければいけないし、リンクが変わった時でもきれいに跳べるようにしなければいけない、と思いました」

 そう言って気持ちを引き締める。

 今季のフリープログラムは、世界平和を願う『インターナショナル・エンジェル・オブ・ピース』という壮大な曲。「振り付けのトム・ディクソンさんに言われて、いろんな表情の練習をしてきた成果を少しは出せていると思いますが、もっと自分の考えを出せるようにしていかなければいけないと思います」

 4分間の滑りでは、優雅な動きも見せている。

「ショートがすごくしんどいプログラムなので、フリーは初めからラクに感じました。最近はショートをラクに感じるようになったことでフリーの体力も付いてきたし、ショートほどせわしくないので集中できるようになり、ジャンプも跳べるようになってきました」

 さらに、今季入れる予定にしている4回転サルコウについては、こんなふうに話す。

「4回転サルコウは、ショートが終わった時点で、翌朝に3回転サルコウを跳んでみて、感覚がよければ練習をしてみようかなと思ったけど、リンクの氷が違ってそれどころじゃなかったので、他のジャンプの練習をしました。まだ練習でもしっかりできていなくて、今回は間に合わせられなかったけど、次の試合には入れるつもりで本気で練習をします。

 そのためにはほかのジャンプを安定させて、今回のようにギリギリということがないようにしなければいけません。ほかのジャンプに不安がなくなれば、『4回転を入れよう』と確実に思うようになるだろうから、まずは、ほかのジャンプを完璧にしていきたいです」

 崩れかけたトリプルアクセルをしっかり立て直し、きっちりと優勝をできたこと。それは今季の紀平が、さらなる進化を続けている証でもある。