「日本代表は3勝1敗でベスト8に進出し、決勝でアイルランドと再戦してほしい」

9月20日(金)に開幕するラグビーワールドカップまで、いよいよ、あと1週間あまり。ラグビー日本代表は、予選プールで3勝以上挙げて、史上初のベスト8に進出することができるのか。ワールドカップに2大会出場し、WTBとしてトライを量産してテストマッチの世界記録(69トライ)も持つ日本代表のレジェンド・大畑大介氏を直撃した。後編では、実際に日本代表がワールドカップの予選プールで対戦する4チームに対する戦い方や優勝予想などもしてもらった。

――ワールドカップを戦うにあたってラグビー日本代表のキーマンは誰になると思いますか?

大畑 キャプテンのFLリーチ マイケル、そしてSO田村優は攻撃で一番のキーになる選手です。そしてトライを取って、ポイントを取っていくことが大事なので、福岡堅樹、松島幸太朗という両WTBですね。といってもみんな重要です。誰一人欠けてもチームを形成できないし、ジェイミー・ジョセフHCが常に「ワンチーム」とうたっていますよね。それは一人が欠けてもチームは形成されない。今まで、いろんな選手がいましたが、そこから選ばれた選手たちなので、全員がチームのために、このワールドカップに対して本当に熱い思いを持って戦ってほしいですね。

――日本代表は、9月20日の開幕戦(@東京スタジアム)でロシア代表と対戦します。

大畑 (鍵となるのは)自分たちの準備したことをしっかりやることじゃないですかね。開幕戦、そして開催国と試合できるって言うのは本当に対戦相手としてもすごく幸せなことなのです。実は僕も1999年ワールドカップにウェールズ代表と対戦した時って大声援の中、本当にすごい空間の中でラグビーができた。完全なるアウェーでしたが、ものすごく楽しかった。そういった意味でもロシア代表はすごくテンションを上げて戦ってくることは間違いないので、そこの勢いに飲まれないというのが一番大事です。

ロシア代表は大きなFWがいて、キックを織り交ぜて攻めてくるとは思うんですけど、(ロシア代表が)大きくて強いと言われても南アフリカ代表の方が間違いなく強いストレスを感じていたと思いますので、それに比べれば絶対いけると思います。あの南アフリカ代表のアタックに対してもしっかりディフェンスできたという自信があると思います。だから、とにかく油断だけしない。心の隙を作らない。それだけですね。それがなければ問題なく勝ち切ると思います

――9月28日の予選プールの第2戦は、世界ランキング1位(9月9日現在)のアイルランド代表と対戦(@小笠山総合運動公園エコパスタジアム)します。

アイルランド代表は地力あるのは間違いない。この数ヶ月の中のゲームを見る限り、SOジョナサン・セクストンがいるのといないのとで大きく違うと感じました。そう考えた時に、やはりSOセクストンに対して、(日本代表が)どれだけプレッシャーかけることができるかが一番大事だと思います。また(9月6日に日本代表が対戦した)南アフリカ代表同様に、すごくプレッシャーかけてくるとは想定できます。特に前半、日代表本が南アフリカ代表に対してボールを前に運ぶ術がなかった。そういった時間帯に、いかにボールを運んでいくのか。また後半最後は、南アフリカ代表に対してでもチャンスは数多くありました。だからゲームの最後の最後まで、粘り強くスコアとして接戦にもっていくことは大事だと思うので、そういうことが出来れば世界ランキング1位といえどもチャンスがないってことは絶対ないと思います。

――10月5日、予選プール3戦目は前回大会で勝利したサモア代表と対戦(@豊田スタジアム)します。

大畑 サモアに関しては本当にわかんないです。でき幅が本当に半端なく多いチームなのです。でも一つ言えるのは、個対組織の戦いになると思います。日本代表としては、いかに組織として自分たちがやれることをしっかりやり切るかってことが大事です。サモア代表は勢いに乗せてしまうと非常に大きな力を出す。そう考えると、序盤、相手に(プレッシャーを与えて)どれだけの印象を与えのるのかが一番重要になってくると思います。あとは(サンウルブズやサントリーでのプレー経験もある)10番のトゥシ・ピシが日本代表に対して印象をしっかりともっている選手だし、非常にゲームコントロールするのがうまい選手なので、彼に対していかにプレッシャーかけるのか。あとはチームとして精神的なプレッシャーに決して強いチームじゃないので、そういったところにもしっかりプレッシャーかけ続けることができれば、今の日本代表にならしっかりと勝ち切ってくれると思います。

――10月13日の予選プールの最終戦で、スコットランド代表(@横浜国際総合競技場)と対戦します。

大畑 どちらかが3連勝というのもなきしもあらずですが、日本代表が3連勝でない限り、当然ベスト8をかける戦いになります。前回大会で日本代表がスコットランド代表に、すごくうまく戦われたと思います。でも、そのうまさがスコットランド代表の特徴だし、今はボールをどんどん動かしいく、すごく爆発力があるチームになった。形としては正直、日本代表と似ていると思います。スクラムも強く、運動量もあって、どこからでもボールを動かしながら得点を取りに行こうという形は日本代表と似通っているチームだと思います。そんなスコットランド代表に対して、日本代表も(日本で戦う)地の利というところをしっかり活かしながら主導権を握って戦っていくことがすごく重要です。

――前回大会と違って、今度はスコットランド代表が中3日で戦います。また注目選手も教えてください。

大畑 スコットランド代表としては、日本のこの環境で、1ヶ月過ごすというのは大きなストレスになると思います。そういう意味で地の利は非常にあると思います。また予選プールの最後の試合が中3日はめちゃくちゃきついです。僕もワールドカップで、中5日、中4日、中3日という試合を経験しています。中3日の試合は本当に体が動かなかった。相手に関係なく、とにかく自分のコンディションがきつかったという思い出しかありません。地の利をうまく利用しながらも自分たちの強みってところ出していけばいいと思います。

得点力ということを考えると、15番のFBスチュアート・ホッグが一番のキープレーヤーになると思います。彼は何でもできますから、不用意にボールを渡し、スペースを与えてしまうと一気にトライを取る力があります。そういった意味では、南アフリカ代表戦が非常に勉強になったと思います。またどの時間帯に出てくるかによりますが、SHグレイグ・レイドローほど、ゲームコントロール能力が高いスクラムハーフはいません。プレースキックも上手いし、レイドローがどのタイミングから出てくるかもポイントになってきます。またSOフィン・ラッセルもやっかいな選手です。とにかく9、10、15番の縦ラインをしっかり警戒し、いかにプレッシャーかけるかが重要になってきます。

――あらためて、ワールドカップでの日本代表の戦績予想は?

大畑 ひとまずで日本代表は予選プールAで、3勝1敗で2位になってベスト8に進出すると予想します。そして予選プールBは、南アフリカ代表が1位だと思うので、準々決勝で日本代表と再戦するというイメージを持っています。僕は(日本代表がベスト8に)いけると思っています。リップサービスとかでもなく、本当に自分たちのやれることを出し切ればいける。相手の力を考えて自分たちの戦いはどうするかということよりも、自分たちがやろうとすることをしっかりとやり切ることができれば、間違いなくベスト8に行けるだけの力を持っていると思います。

本当にベスト8以上に進んだ時の日本代表、決勝トーナメントで戦う姿を見たいなと思っています。今の日本代表は本当に修正能力も高いですし、またしっかりと軸になる選手もいます。そして戦いながら成長していく姿を見られるチームだとも思います。だから、準々決勝で、成長した最高のチームが南アフリカ代表と戦っている姿を見てみたい。そして、決勝で日本代表がアイルランド代表ともう一度対戦してほしい。僕の想定では、予選プールで非常にいい試合をして負ける。そして決勝トーナメントで南アフリカ代表に勝ち、イングランド代表に勝ち、決勝でアイルランドと再戦するのが僕にとっての最高のストーリーです。

――もし日本代表が決勝まで進んでアイルランド代表にリベンジすれば……。

大畑 チャンピオンになりますね! 日本代表のそういう姿を観たいなと思います。それこそまさに〝一生に一度〟の思い出になる。そういったことを考えることができるのも、ワールドカップが始まるまでなので、今は日本代表が世界の頂点に立つという夢を自分の中で描いています。それを現実にしてもらえるだけの選手たちが集まっていると思うので、そういった僕たちの気持ちを日本代表に乗せていくと、選手にとっては非常に大きなエナジーになってきます。ただただ、本当に、最初から最後まで日本代表を応援してほしい。日本という国を代表して、ジャージーの胸に桜のエンブレムをつけて戦ってくれている。そういった選手に対して心の底から熱い声援と大きなエネルギーを送ってほしい。

――大畑さんは、日本代表対アイルランド代表が決勝で対戦するという予想でしたが、大会全体を通して楽しみしていることは?

大畑 大会全体で一番注目しているのは、やはり、初めて、伝統国・地域以外で行われるラグビーワールドカップということですね。ワールドカップでは、今までニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、イングランドの4チームしか優勝していない。今回、なぜこのワールドカップがこのアジアで初めて日本で行われたかってことで考えると、このワールドカップを機に、ラグビーがさらにグローバルなスポーツになってほしいという一つのメッセージだと思っています。だから新たなチームが優勝して歴史を塗り替えて、新しい風が吹けば、またラグビーの流れが一気に変わっていくと思います。そういった意味で、日本代表も含めて、今まで優勝したことながいチームに頑張ってほしいと思っています。

――ファンには日本で開催されるラグビーワールドカップのどこを楽しんでほしいと思いますか?

大畑 ラグビー選手だけが、ラグビーに関わる人間ではないのです。スタジアムに観戦に行くこと、街中でラグビー対して興味を持ってもらうことも含めて、全てにおいて、ラグビーに携わる人間のひとりなのです。ラグビーというのは本当にみんなが自分の役割を全うして、やれることをやることが大きな力を発揮するということにつながっていく。だから今回のワールドカップも、ひとつの大きな国際的なスポーツイベントを見るだけではなく、ラグビーに興味を持って、いろんな形で関わって、みなさんにも、ワールドカップという大会の一部になってほしいと思っています。