9月7日・8日に大分県のオートポリスで開催されたスーパーGT第6戦は、不安定な天候によって大波乱のレースとなり、最後まで誰が勝つかわからない展開となった。 その混戦を制したのは、GT500クラスはレクサス。ヘイキ・コバライネン/中山雄…

 9月7日・8日に大分県のオートポリスで開催されたスーパーGT第6戦は、不安定な天候によって大波乱のレースとなり、最後まで誰が勝つかわからない展開となった。

 その混戦を制したのは、GT500クラスはレクサス。ヘイキ・コバライネン/中山雄一のDENSO KOBELCO SARD LC500(ナンバー39)が今季初優勝を遂げた。一方、GT300クラスは吉本大樹/宮田莉朋のSYNTIUM LMcorsa RC F GT3(ナンバー60)が優勝し、こちらもレクサスが制した。



GT500クラスを制した中山雄一(左)とヘイキ・コバライネン(右)

 まず、GT500クラスで優勝した39号車は、1年2カ月ぶりの美酒を味わったコバライネンもさることながら、今季からGT500にステップアップした28歳の中山雄一に注目したい。

 中山は2013年に全日本F3選手権でチャンピオンに輝くと、2014年にはスーパーフォーミュラに参戦。そして2015年からは、スーパーGTのGT300クラスでフル参戦するチャンスを掴んだ。

 だが、GT300クラスでは、2015年=3位、2016年=2位、2017年=3位と、毎年チャンピオン争いに絡むも、最後は一歩及ばず。GT500クラスにステップアップするチャンスもなかなか得られなかった。

 しかし今年、ついにGT500クラスのシートを掴むと、参戦1年目とは思えない安定したパフォーマンスを披露。シーズン前半戦から常にトップ争いに加わる活躍を見せた。

 そして今回、このオートポリスで主役となる時が来た。

 土曜日は急激に気温が上昇し、予選Q1は各チームとも対応に追われて大苦戦。昨年王者のジェンソン・バトン(ナンバー1/RAYBRIG NSX-GT)などが予選Q1で脱落する結果となった。そんななか、中山は5番手タイムをマークしてQ2に進出。最終的には5番グリッドを手にした。

 さらに決勝でも、中山の走りが冴えわたる。雨が降ったり止んだりする難しいコンディションのなか、中山はウェットタイヤを装着して後半スティントを担当。ところが、レース終盤になるにつれて急速に天候が回復し、路面は完全にドライコンディションとなる。しかし、中山は最後までウェットタイヤで耐えしのぎ、スリックタイヤで追い上げてくるライバルを振り切ってGT500初優勝を飾った。

「ダンプ(湿っている)コンディションでのウェットタイヤ走行は難しかったです。でも、GT300でもブリヂストンタイヤで戦ってきたので、そこでの経験をうまく生かすことができました。下積みがすごく長かったですけど、それがすごく生きたな……と感じたレースでした」

 レース後半の中山の激走を、チームメイトのコバライネンも絶賛した。

「彼のことを、もっと評価してあげてほしい。本当にプロフェッショナル。GT500初参戦のシーズンだが、いつもすばらしい走りを見せてくれる」

 中山のGT500クラス初優勝によって、39号車はドライバーズランキングでも3位に浮上。残り2戦、逆転チャンピオンの可能性も見えてきた。

 そして、もうひとりの「初優勝」は、GT300クラスで60号車を駆った20歳の宮田莉朋だ。

 宮田はスーパーGTと併催されているジュニアカテゴリー「FIA F4」で2016年と2017年に2年連続で王座に輝くと、2018年にはGT300クラスのシートをゲット。さらに全日本F3選手権でも活躍を始めた。

 トヨタの若手育成プログラム「トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム」の一員でもある宮田は、将来を期待されるドライバーのひとりだった。しかし、そんな彼にも高い壁が訪れる。

 2018年、スーパーGT初年度で表彰台に立ったのは、第4戦・タイの3位のみ。同世代が活躍してGT500クラスのシートを掴む一方、宮田は今年もGT300クラスに残ることとなった。

 さらに、参戦している全日本F3選手権でも不運に見舞われる。2戦連続で車両規定違反による失格となり、2レースを残してライバルのサッシャ・フェネストラズにチャンピオンの座を奪われてしまった。

 そんななかで迎えたオートポリス。スタートを担当した宮田は難しいコンディションのなか、抜群のテクニックで激走する。途中から雨が降り始めても、チームの指示でコース上にとどまり続けたのだ。

 この宮田の貢献によって、チームはレース後半でのタイヤ選びを見極めることができ、天候の状況を見てスリックタイヤへの交換を選択する。宮田はレースの6割以上にあたる40周を走破してピットイン。結果、この作戦が功を奏して、残り3周でトップに浮上して優勝を飾った。

「FIA F4で2年連続チャンピオンとなって周囲に期待されていたと思いますが、勝つまでに少し時間がかかってしまいました。今回はクルマもタイヤも自信があったので、それを信頼して走りました」

 波乱に満ちたオートポリスだったが、両クラスで新たなヒーローが誕生した。今シーズンは残り2戦。彼らが今後どんな活躍を見せてくれるのか、目が離せない。