過去のロンドン、リオの大成功に続き、1年後に迫った2020年の東京開催に向けて、日本でも日に日にと注目が高まってきているパラリンピック。海外ではイギリスのヘンリー王子&メーガン妃や、ベッカムと息子のロメオなどが、車いすラグビーを観戦する姿な…

過去のロンドン、リオの大成功に続き、1年後に迫った2020年の東京開催に向けて、日本でも日に日にと注目が高まってきているパラリンピック。海外ではイギリスのヘンリー王子&メーガン妃や、ベッカムと息子のロメオなどが、車いすラグビーを観戦する姿なども見られ、パラスポーツに夢中になるセレブリティも増えてきている。基本的なルールは一般の競技とさほど変わらないが、オリンピックにはない見どころが多く、特有のゲーム性に「一度観戦するとハマってしまう」というパラスポーツ。今回は初見でも楽しめ、東京2020パラリンピックでの活躍も期待される5つの競技を紹介しよう。

注目競技 1 車いすテニス
(写真は2018 French Open )©︎Getty Images Sport
日本人トッププレーヤーの圧倒的な強さに、全世界が注目!ーココに注目!車いすテニスで注目すべきは、何と言ってもパラリンピックの金メダリストの国枝慎吾選手だ。5度のシングルス年間グランドスラム達成、2018年度世界ランキング1位など、圧倒的なポジションを確立しており、史上最高のテニスプレーヤーと呼ばれるロジャー・フェデラー選手からも「国枝を尊敬している」と言われている。近年、怪我で不調が続いたものの昨年完全復帰を果たし、東京パラリンピックでの活躍がもっとも期待される選手のひとりである。国枝慎吾選手以外にも、「女子車いすテニス最年少グランドスラム」のギネス記録に認定された上地結衣選手や、世界ランキング12位(2019年9月2日付け)の眞田卓選手なども見逃せない。ー車いすテニスの特徴とは?パラリンピックでは「男子」「女子」、比較的重い障がいがある選手が出場する「クアード」の3つのクラスに分けられ、それぞれにシングルス戦とダブルス戦が行われている。使用されるラケットやボールなどの用具、コート、ルールは一般的なテニスと変わりはない。ただし、2バウンド以内の返球が認められており、コート内で1バウンドさせれば2バウンド目はコートの外側でもOK。このルールにより、車いすでも激しい打ち合いや駆け引きといったテニスの魅力を存分に味わえるようになっている。ーココが見どころ!車いすテニスにおける勝敗のカギは、テニスの技術だけでなく、正確かつ敏捷な“チェアワーク”にもある。選手たちが使用する車いすは、素早くターンできるよう車輪をハの字型に開き、上半身を自由に動かせるよう背もたれや手すりを排除した競技用だ。その、車いすと体がまるで一体化したようなスムーズな動きにも、ぜひ注目してほしい。ちなみに「クアード」種目では、なんと“電動車いす”を巧みに操作してラリーを行う選手もいる。注目競技 2 車いすバスケットボール
(写真は三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2017)©︎Getty Images Sport
漫画『リアル』でファン急増! パラスポーツ屈指の人気競技ーココに注目!日本では、車いすバスケットボールを題材にした井上雄彦氏の漫画『リアル』によって認知度が高まり、現在は、熱心なチームサポーターや選手のファンが存在するほど、広く支持されるスポーツへと成長している人気競技。1960年のパラリンピック第一回大会から実施され、障がい者スポーツを長年リードしてきた歴史も誇りだ。昨年行われた国際大会「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2018」では日本チームが初優勝を果たすなど、東京大会でもメダルを目指す日本チームに是非注目したい。ー車いすバスケットボールの特徴とは?基本的には一般のバスケットボールと同じで、コートの広さやリングの高さもそのまま。ということは、ジャンプせず車いすに座った状態で、通常の約3メートル(!)の高さのゴールへシュートを投げ入れているということだ。これは一般のバスケットボール選手でも難しいと言われているほどで、かなりのテクニックと腕力が必要となることは想像に難くない。また、チーム編成は障がいの程度によってクラス分けの特殊ルールがあり、多くの選手が出場機会を得られるように工夫されているのも特徴だ。ーココが見どころ!ゲーム性も高く、迫力ある激しい攻防や、繊細で素早いパス回しなど、見どころが多いのも車いすバスケットボールの魅力。そしてこの度、カナダ代表を3度の金メダルに導きながらも2012年に引退した「車いすバスケットボールの生きる伝説」ことパトリック・アンダーソン選手が、2020年に向けて現役復帰しているというから見逃せない。世界的スーパースターの復活となれば、東京大会が盛り上がることは間違いなさそうだ。注目競技 3 陸上
(写真は世界パラ陸上選手権大会ロンドン2017)©︎Getty Images Sport
オリンピックにはない見どころがたくさん!誰もが楽しめる花形競技ーココに注目!パラ陸上と言えば、「オリンピック超え」のドラマに期待が高まる競技の一つだ。2016年のリオパラリンピックでは、男子1500m(T13/視覚障がい)で上位4名の記録が、(戦略によるものの)オリンピック金メダルのタイムを超えたと話題に。そして、2014年のドイツ選手権では、走り幅跳び(T64/切断など)のマルクス・レーム選手が健常者を超える記録を叩き出し、話題になった。東京大会での記録更新にも期待が高まっている。また、日本人選手の活躍も目覚ましい。特に、夏季冬季のパラリンピックに4度出場し合計3つのメダルを獲得した、陸上競技で日本人初の義足メダリスト山本篤選手、そしてリオパラリンピック、世界パラ選手権で続けて銅メダルを獲得し、東京パラリンピックで悲願の金メダルを目指す重本(旧姓:辻)沙絵選手などは、メディアからの注目度も高いので要チェックだ。ーパラ陸上の特徴と見どころは?オリンピックの陸上の勝敗を決めるのは「どれだけ早く走るか」「どれだけ遠くに投げるか」「どれだけ跳ぶか」だが、パラ陸上も同様。予備知識が無くても十分に楽しめる、そのシンプルさが魅力と言えるだろう。オリンピックとの違いは、公平性を保つために障がいの種類や程度によってクラス分けが行われ、障がいによってはルールの工夫や用具を用いられること。それにより、競技の特性に合わせて進化した車いす、義手、義足など、用具を使って高いパフォーマンスを引き出す選手や、コーラーやガイドランナーと一心同体となり極限の力を発揮する選手などがおり、オリンピックにはない見どころがたくさんある。そのパラリンピックならではの「違い」を楽しむのも、より面白く観戦する秘訣だ。注目競技 4 車いすラグビー
(写真はロンドンパラリンピック)©︎Getty Images Sport
「マーダーボール(殺人球技)」と名付けられた歴史がある競技ーココに注目!車いすに乗って戦うラグビーとして、人気急上昇中の車いすラグビー。世界随一のスピードを持つ池崎大輔選手などの活躍により、2016年のリオパラリンピックで銅メダル、「GIO 2018 IWRF ウィルチェアーラグビー世界選手権」での優勝など、東京2020パラリンピックに向け、着実に力をつけてきている競技だ。そして、パラリンピックの中で唯一、車いす同士がぶつかり合うことを許されている競技であり、「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれた歴史があるほどの激しいプレーは、観る者を圧倒させる魅力がある。ー車いすラグビーの特徴と見どころは?大迫力の激しいプレーゆえ、選手たちが使用するのは装甲車のような頑丈な競技用車いす。相手をかわし素早く得点するために丸みのある形状の攻撃型車いすと、相手の動きを止めるための突出したバンパーを装備した守備型車いすがあり、ゲーム中は車いすが故障することも少なくないほど、激しいぶつかり合いの熱戦となる。そのスピード感あるボール運びや得点シーンはもちろん、その陰で相手チームの動きを封じ込めるローポインターの献身など、息のあったチームプレーにも注目してほしい。注目競技 5 ブラインドサッカー
 提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄
まるですべてが見えているかのような神業の連続!ーココに注目!ブラインドサッカーとは、ゴールキーパー以外の選手全員がアイマスクを装着して行う、視覚障がいのある選手のための5人制サッカー。年々、知名度・人気度共に上昇中の話題の競技だ。特に注目して欲しいのは、選手たちの信じられないほど繊細でスムーズなプレー。その、見えていないはずなのにまるで見えているかのようなスーパープレーは、ファンならずとも必見だ。ーブラインドサッカーの特徴とは?ブラインドサッカーのルールはフットサルをベースとしているが、健常者がゴールキーパーを務めるのも特徴で、全盲から光覚(光を感じる)までの視覚障がいのある選手がフィールドプレイヤー、弱視もしくは晴眼者の選手がキーパーを務める。また、ゴール裏でゴールの位置やシュートのタイミングを知らせるガイドがいるのもブラインドサッカーの特徴だ。ゲームは、転がると音が鳴る専用のボールを使い、選手たちは、ボールの音やガイドの声、さらには他の選手が出す様々な音、風や匂いなど、視覚以外の感覚から得られる様々な情報で状況を把握している。また、守備時はボールに向かって行く際に「ボイ!」と声を出し、衝突を避けるために相手選手に存在を伝えるルールがあり、声を出さないとファウルを取られる。ーココが見どころ!ピッチの両サイドには、専用のフェンスが並んでおり、フェンスを駆使したパスやトラップが繰り出されるのも面白い。時には相手チームに自分の動きを悟られないよう、ボールを高く蹴り上げたり、音を使ってフェイントをかけたりして駆け引きを行うことも。一方、観客は競技の妨げにならないよう、声だけでなく足音やため息さえもグッとこらえなければならず、観戦にもマナーが求められる。しかし、ボールがゴールに入った時には、それまでの静寂を打ち破るかのような大きな歓声を送る。見えない選手たちにとってこの歓声こそが、ゴールが決まった合図なのだ。「東京2020パラリンピック」を観戦しに行こう!

2020年の東京開催に向けて、注目度が急上昇中のパラリンピック。現在、東京2020パラリンピック観戦チケットが抽選販売中(9月9日(月)午前11:59まで)なので乗り遅れないよう、まずは上記5つの競技からチェックしてみよう。チケットの抽選応募ページはこちらhttps://ticket.tokyo2020.org/paralympic 

text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)photo by Getty Images Sports