当初は「興味はなかった」野球にハマり、今では夢はスポーツカメラマン  ロッテは今季も、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。現在は、厳選メンバー5人が、ハイレベルな決勝ラウンドで白熱したを繰…

当初は「興味はなかった」野球にハマり、今では夢はスポーツカメラマン

 ロッテは今季も、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。現在は、厳選メンバー5人が、ハイレベルな決勝ラウンドで白熱したを繰り広げている。

 昨年はドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)の立ち売り販売をする売り子経験5年以内のメンバーが参加対象となったが、2年目の今年はハンデをつける形で売り子経験年数に関わらず参加が可能となった。勤続年数に応じて、日々の売上げ杯数にボーナスを加算。1年目は1日の売上杯数の150%、2年目は140%、3年目は130%、4年目は120%で、5年目以上はボーナスなしとなり、ソフトドリンク・日本酒の売上げは勤続年数に関わらず200%に設定された。

 さらに、月ごとの売上杯数1位の売り子が、9月からの決勝ラウンドに進出する新方式を採用。昨年の88名から一気に110名までアップした参加者の中から、各月の頂点に立った精鋭5人が9月1日から新たな戦いに臨んでいる。「Full-Count」では決勝ラウンドに進出した5人に直撃インタビューし、売り子という仕事に対する思いや情熱を語ってもらった。

 第2回は7月チャンピオンの、りかさん(サッポロビール)だ。

 売り子を始めて3年目。きっかけは、大学入学後にアルバイトを探していた時、ロッテファンの弟から「球場で売り子でもやれば?」と言われたことだった。当時は「野球に興味はなかった」と正直に打ち明けるが、あっという間に野球の魅力に取り憑かれ、「今はめちゃくちゃ野球好きです」。大学では写真を専攻し、休みの日にはカメラを持って、いろいろな球場に野球の写真を撮りに行く。弟の一言がきっかけで始めた売り子だったが、今では将来の夢について「野球を撮るスポーツカメラマンになりたいです」と話すまで、そこから世界が広がった。

 もちろん、売り子として働くことにも魅力を感じている。

「老若男女いろいろな方と毎日お会いし、ビールを注ぐ短い間ですけど、お話できる。普通のアルバイトでは考えられないほど、たくさんの方々と一日でお話しできるので、コミュニケーション能力も上がります。球場の雰囲気が好きなので、そこからも元気をもらっています」

売上げを伸ばすため、毎日ノートに成果と反省点を記入「次に生かせる」

 自分の性格を「負けず嫌い」と話すりかさん。「4、5、6月で負けた悔しさがヤバかったので、7月はめっちゃ頑張りました(笑)。負けるのは大っ嫌いなんですよ」と躍進の原動力に変えた。すると、7月に見事2330杯(ハンデつき3029杯)を売り上げて優勝。決勝ラウンド出場の切符を掴み取った。

 売り子を始めてから何度も悔しさを味わった。1年目の新人コンテストでは1位を逃し、「2位だったか3位だったかも覚えてないくらい悔しかった」と振り返る。昨年の売り子ペナントレースにも出場し、88人中7位。2年目として十分誇れる成績だったが、1年経験の長い先輩に100杯ほど差をつけられた。「お腹が痛くて1日休んじゃって。休んでいなければ勝てたかもって、めちゃくちゃ悔しい思いをしたんですよ。なので、今年はとりあえず休まないで頑張ろうと決めていました」と話すほど、負けず嫌いの度が違う。

 だが、りかさんが他人と少し違うのは、熱い思いと同時に冷静な思考を持っている点だろう。売り子という仕事と真摯に向かい合うため、仕事が終わった後に「日付、対戦チーム、観客数、天気、イベントの有無、その日売った銘柄、杯数、反省点」をノートに記入。「なんでダメだったのか、なんで良かったのか」を自分なりに分析し、「それを改めて書いて残しておくことで次に生かせると思います」と話す。こうした努力もあり、今では1日に最高で約330杯を売り上げるまでになった。

 昨年の売り子ペナントレースでは、同じくサッポロビールのまりなさんが優勝した。今年、サッポロビールから決勝ラウンドに進んだのは、りかさん一人。先輩からのバトンを繋ぎたい思いもある。

「絶対優勝したいですね。去年優勝したのは先輩だったので、プレッシャーじゃないですけど、ここで私がせっかく出られたのに負けてしまったら(連続優勝の)記録もなくなってしまう。普段応援してくれるお客様に、優勝という形で日々の恩返しをしたいなと思っているので、1位じゃないと意味はないと思います」

 決勝ラウンドには、24年目の近藤晃弘さん、12年目の今井さやかさんという2人の“レジェンド”に出場。目の前に立ちはだかる壁は高いが、物怖じはしない。

「新しい風を吹かせていこうと思っています。チャンスが何度も巡ってくるわけじゃないので。せっかくここまで登り詰めたんだったら、絶対に今年勝ちたいです」

 売上げにこだわるあまり「みんなみたいに楽しめないです」と話す表情は真剣そのもの。スタンドでも足早に歩き、広い視野でお客さんを逃さない。「必死です。顔に出ちゃってるよっ言われたこともあります」と苦笑いをするが、そのひたむきさに惹かれるお客さんも多いのだろう。「本当に感謝しかないですね」。負けん気の強さと冷静な思考を総動員し、必ず頂点を奪ってみせる。(Full-Count編集部)