中村剛也、山川穂高(ともに西武)、井上晴哉(ロッテ)に頓宮裕真(オリックス)。さかのぼれば、ドカベンこと香川伸行(元ダイエー)やデーブこと大久保博元(元巨人など)……。プロ野球界には、”ぽっちゃり”体型のスラッガーがしばしば登場し、愛嬌あるキャラクターもあいまって人気者になることが多い。

 そんな”ぽっちゃりスラッガー”がアマ球界にも存在する。まずは、シティライト岡山の小竹一樹。7月に行なわれた都市対抗では、初戦の宮崎梅田学園戦でホームラン。タイミングが合わずに泳ぎながらも、高い放物線を描きスタンドに放り込んだ。

「自分自身初めての全国大会だったので、緊張よりもワクワクしました。何本でも打ちたいですね」と、小竹は笑顔を浮かべていた。

 そんな小竹について、監督の桐山拓也はこんなエピソードを教えてくれた。

「練習では何本も場外に打つので、本人にボール探しを命じています」

 179センチ、115キロのパワーが生む飛距離はとてつもない。

 日本橋学館大(現・開智国際大)時代は千葉県リーグの3部とあって、まったくの無名だった。だが、2年生となった2012年、チームは春秋と3部リーグを連覇。小竹も秋はDH賞を獲得し、チームの2部昇格に大きく貢献した。4年春にも16試合で6本塁打と爆発し、またもDH賞を獲得。4年時だけで10本塁打と量産し、大学通算で26本塁打を記録した。当時を小竹が振り返る。

「アンドリュー・ジョーンズ(AJ)とよく言われていました。ユニフォームも楽天にそっくりだったので……」

 AJと言えば、2013~14年の2年間、楽天に在籍し、2013年の日本一に貢献した選手だ。決してぽっちゃりではないが、体重100キロ超えの巨漢である。確かに、大学時代の小竹のユニフォーム姿は、AJにそっくりだった。

 小竹はその飛距離が目に止まり、大学卒業後、シティライト岡山に入社。すると1年目から、都市対抗予選、日本選手権予選でそれぞれ一発。天性のアーチストぶりを見せて、中国地区の最優秀新人に輝くなど、頭角を現した。そして今年、小竹の活躍もあって、念願の都市対抗出場を果たし、初勝利も飾った。

 ただ、今年27歳になるためプロ入りには消極的だが、はたして……。



プロも注目する右の長距離砲、パナソニックの片山勢三

 そして、もうひとりがパナソニックの片山勢三。こちらは正真正銘のドラフト候補だ。

「(門司学園)高校時代は、ドカベン2世と言われていました。実際、高校の監督と香川(伸行)さんが知り合いで、練習を見に来てくれたこともありました」

 片山は甲子園出場経験こそないが、高校通算32本塁打を放ち、名門・九州共立大に進学。リーグ戦では2度の本塁打王を含め、通算14本塁打を記録。大学4年で出場した神宮大会でも2本塁打を放った。

 パナソニック入りした昨年は、春先から4番に定着したが、都市対抗の近畿予選で不振に陥った。だが、スタメンから外れた都市対抗本戦で代打本塁打。それがきっかけとなり持ち前の打棒が復活。昨シーズンの公式戦で6本塁打、打率.414をマークし、目標だったベストナイン(指名打者)を獲得した。

 社会人野球の門司鉄道局(現JR九州)でプレーした今村隆行氏を祖父に持ち、少年時代はよく打撃の手ほどきを受けた。そんな祖父の影響もあり、社会人野球の世界に飛び込んだが、1シーズンを過ごし、手応えを感じたことで欲が出た。

「目指すのはドラフト上位指名。ただそれには、守備が課題ですね」

 たしかに、いかに長距離砲であっても指名打者専門ではプロの需要は低い。今シーズンはサードの挑戦から始まったが、試行錯誤しながら今は一塁に落ち着いた。高校時代は捕手だったため、ショートバウンドの処理には自信があるが、「守備に神経を使ってしまい、シーズン当初は不振でした」と、都市対抗予選では指定席だった4番の座を譲った。

 やがて、守備にも慣れ自信を掴むと、打棒も復活。今年の都市対抗では4番に座り、ホームランこそ出なかったもののチームをベスト8へと導いた。

「山川さんや中村さんの存在は、プロを目指すうえで励みになります。参考にしているのは、ガーンといく山川さんより、中村さんの柔らかさですね。あの右手の使い方、力まないスイングが理想です」

 ちなみに、ホームランを確信した時のバットの投げ方が誰かに似ていると思って聞くと、片山は「ノリさんをマネました」と、同じ中村でも中村紀洋(元近鉄など)の方だった。

“ノリさん”もぽっちゃりとまではいかないが、やや小太りのホームラン打者だった。

 はたして、プロの”ぽっちゃりスラッガー”の系譜に、片山も連なっていくのだろうか……ドラフトが待ち遠しい。