9月8日に行なわれた欧州選手権予選のブルガリア戦を4-0で快勝し、イングランド代表は開幕3連勝を飾った。この結果、勝ち点を9に伸ばし、グループAで首位の座をキープしている。 今回の9月シリーズでは、成長著しい若手選手に注目が集まった。…

 9月8日に行なわれた欧州選手権予選のブルガリア戦を4-0で快勝し、イングランド代表は開幕3連勝を飾った。この結果、勝ち点を9に伸ばし、グループAで首位の座をキープしている。

 今回の9月シリーズでは、成長著しい若手選手に注目が集まった。とくに、今年6月にイタリアで行なわれたU-21欧州選手権に出場したMFジェームズ・マディソン(22歳/レスター・シティ)とMFメイソン・マウント(20歳/チェルシー)は、満を持してフル代表に初招集された。



ケインのハットトリックで大勝したイングランドだったが......

 U-21欧州選手権ではグループリーグ敗退という残念な結果に終わったものの、両選手は所属クラブでレギュラーとして好調を維持。英BBC放送は「フル代表にふさわしい活躍を見せている」と太鼓判を押した。

 また、夏の移籍期間にクリスタル・パレスからマンチェスター・ユナイテッドに4500万ポンド(約59億円)で移籍したDFアーロン・ワン=ビサカ(21歳)も初招集された。腰のケガで辞退したのは残念だったが、先にフル代表に定着しているFWジェイドン・サンチョ(19歳/ドルトムント)やMFデクラン・ライス(20歳/ウェストハム・ユナイテッド)、DFトレント・アレクサンダー=アーノルド(20歳/リバプール)、DFジョー・ゴメス(22歳/リバプール)、DFベン・チルウェル(22歳/レスター・シティ)ら成長著しい若手が、24名の代表メンバーに名を連ねた。

 そんな今回の代表チームの平均年齢は25.2歳──。ベスト4に進出した1年前のロシアW杯の時からフレッシュな選手を入れ、さらに若返りを図っているのが、イングランド代表の現在地である。

 グループAで最下位に沈むブルガリアが相手であるだけに、こうした若手の積極起用を推す声は少なくなかった。英BBC放送のフィル・マクナルティ記者は、「本大会出場に向けて、ブルガリアはまったく障壁にならない相手」とし、「中盤のクリエイティビティを注入できるマディソンを先発で起用すべき」と声をあげていた。

 しかし、「予選突破」を第一に考えるガレス・サウスゲート監督は、新旧バランスの取れたメンバー構成を選んだ。FWハリー・ケインとFWラヒーム・スターリング、DFハリー・マグワイアの主力選手を軸に、中盤はジョーダン・ヘンダーソン、ロス・バークリー、ライスの3人で編成。サイドバックは、アレクサンダー=アーノルドやチルウェルの若手選手でなく、キーラン・トリッピアー(右)とダニー・ローズ(左)の中堅を入れた。

 大方の予想どおり、試合はイングランドがボールを保持して攻め込む展開で進んだ。ブルガリアは5-4-1の守備的な戦術を選択。フィールドプレーヤー全員で守備を固め、攻撃はカウンターに狙いを定めた。

 イングランドがボールをキープして相手の隙をうかがうなか、24分に相手ゴールキックのパス回しを奪い、ケインが先制点を奪取。「後半立ち上がりに追加点を挙げて、試合を決めるように」と、ハーフタイムにサウスゲート監督から指示があったと明かすケインが49分にPKで加点すると、この時点で決着がついた。

 若手組では、67分からマウントが途中交代で出場し、代表初キャップを記録。71分からサンチョも交代でピッチに入った。その後、ケインがもう一度PKを成功させてハットトリックを達成し、イングランドが4-0で圧勝した。

 これでイングランドは、同予選で無傷の3連勝。チェコ戦(5-0)、モンテネグロ戦(5-1)、そしてブルガリア戦(4-0)といずれも大勝し、本戦出場に向けて順調に歩みを続けている。

 しかし、英メディアは手放しで喜んでいるわけではない。理由のひとつが、予選で同居した相手がいずれも力で劣っていることだ。

 FIFAランキング4位のイングランドに対し、43位のチェコ、55位のモンテネグロ、60位のブルガリア、120位のコソボと、力に大きな開きがある。2014年のW杯ブラジル大会(グループリーグ敗退)と、2016年の欧州選手権フランス大会(ベスト16敗退)がそうであったように、欧州予選をスムーズに突破しても、本大会での躍進が約束されているわけではない。

 しかも、ベスト4まで勝ち進んだ2018年のW杯ロシア大会も、対戦相手に恵まれた印象は拭えない。準決勝で対峙した強豪クロアチアとの一戦は、スコアは1-2ながらも内容的には完敗だった。

 加えて、今年6月に行なわれたネーションズリーグ準決勝でオランダに1-3と完敗したことも、こうした懸念に拍車をかけている。格下には力技でねじ伏せられるが、強豪相手になると途端に力を発揮できなくなるのが、イングランドの継続課題である。

 そのため、英BBC放送のマクナルティ記者は「予選で無敗を続けていることに感銘を覚える」と強調しながらも、「先発はいつも同じ顔ぶればかり。若手に先発の機会をもっと与えるべき。今回の予選でポテンシャルの大きい若手に経験を積ませ、チームとしての練度を高めたほうがよい」と訴える。ブルガリア戦についても、同記者は中盤とSBの人選に疑問を呈していた。

 9月10日に行なわれる次戦のコソボ戦をどのようなセレクションで臨むか。FIFAランク120位のコソボは好調で、グループAで2勝2分の2位につける。

 ブルガリア戦では、CFのケインと左FWのマーカス・ラッシュフォード、右FWのスターリングで3トップを編成した。この3トップは「速さ」と「破壊力」を兼備しており、今後に期待を抱かせた。しかし、彼らにパスを供給する中盤の構成力が課題だった。伸び悩みが目立つバークリーの代わりに、昨シーズンのプレミアでリーグ最多のチャンス創出数を叩き出したマディソンの起用は理にかなっていると思うが、果たして──。